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乳房切除術をして「これほど幸せだったことはない」ー20代ノンバイナリー俳優が語る

  • 2023.6.29
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ドラマ『イエロージャケッツ』のリヴ・ヒューソンが、Teen Vogueで乳房切除術をした経験について語った。性別適合手術を心配する声には、「心配してくれるタイミングを間違えています」と本音を告白。(フロントロウ編集部)

リヴ・ヒューソン、性別適合手術への嫌悪反応に触れる

リヴ・ヒューソンはオーストラリア出身の27歳で、エミー賞7部門にノミネートされたドラマ『イエロージャケッツ』のヴァン役でブレイクした俳優。シーズン1では準レギュラーだったが、役に対する人気の高さも手伝ったか、シーズン2からはメインキャストに昇格。ノンバイナリーであり英語では”they/them”のジェンダー代名詞を使うリヴは、メインキャストとなったシーズン2ではエミー賞の助演賞の選考に名前を申請することができたが、女性・男性にわけられた賞ではノンバイナリーである自分は「居場所がありません」として、参加辞退したことが今年話題になった。

Varietyによると、2023年に28歳になるリヴは、2022年に『イエロージャケッツ』シーズン2の撮影が始まる前に、英語では“top surgery”、日本では「胸オペ」とも呼ばれる乳房切除術を行なったという。そんなリヴが、乳房切除術についてTeen Vogueで語った。

画像: リヴ・ヒューソン、性別適合手術への嫌悪反応に触れる

アメリカにおける性別適合手術の会話に触れて、「性別適合手術について語るときに、“mutilation(※暴力的に体を切断するという意味)”という言葉を使うのは良いことではありません。他のことで手術を受けた人に対してもそう思いますか?それは嫌悪反応であり、私は嫌悪を正当な主張としては認めません」と語ったリヴは、その考えは「現実に即していない」と批判した。

アメリカでは保守派の政治家たちが、“未成年の子どもたちが体を暴力的に切断して取返しのつかない手術をしている”という主張で、性別適合ケアを禁止する法案を次々と提出・可決させている。しかしリヴの言うとおり、これは事実に沿った主張ではない。

まず、アメリカでは米国医師会、米国小児科学会、アメリカ心理学会、内分泌学会をはじめ多数の医療機関がジェンダー適合ケアを必要な医療行為だと認めており、適切な治療をするためのガイドラインを設けている。そのガイドラインのもと、アメリカで18歳以下が性別適合の手術を行なうケースは非常に稀だと、イェール大学医学部小児科助教授をはじめ多くの専門家や医療団体が認めている。思春期の前に提供される性別適合ケアはセラピーや社会的なジェンダー移行(※名前・服装・髪型を変えるなど)が主で、それ以降は、性差が現れる思春期の発生を止める思春期ブロッカー(第二次性徴遮断薬)の使用や、一部ではホルモン治療を行なう人が存在する。しかし政治家たちは、実際には非常に稀な手術が社会問題になっているかのような論調を展開し、未成年が必要とするセラピーをはじめとした性別適合ケアを奪っている。

ジェンダー適合ケアに反対する人は「医療介入について考えると気分が悪くなるのだと思います。そのような理由で法律や社会を決めるなんておかしくて仕方がない」としたリヴは、「私は自分の体に対する誰かの嫌悪感を受け入れるつもりはない。これは私の体。健康で、強く、美しく、何も問題ない」と付け加えた。

10年も検討した乳房切除術をして「これほど心が安定したことはない」

画像: 10年も検討した乳房切除術をして「これほど心が安定したことはない」

乳房切除術という手術を受けたいという考えが浮かんでから、実際に手術をするのに10年考え続けたというリヴ。うち5年間は、手術を受けようと思ったクリニックのウェブサイトがノートパソコンに開いたままだったという。

手術を受けてからの1年で、自分に「根本的な」レベルでの変化があったとしたリヴは、「立ち方も、歩き方も、身のこなし方も違う。体の感覚も今までとは違う。これほど幸せだったことはない。これほど心が安定したことはない。これほど安定し、現在に存在でき、生きていると感じたことはない。自分にとって最高の決断でした」と続けた。

そして、社会における性別適合手術に対する“怖い”や“痛い”という考えにはこうコメントした。

「それは誤解です。これは前から痛かったんです。あなたは心配してくれるタイミングを間違えています。私が心配してほしかったタイミングは、この(手術をする)前に感じていた痛みの方です。今の私は最高ですよ」。

※「胸オペ」は当事者が略称として使用しているものであり見出し等での使用は不適切であるという読者様からのご意見を考慮して、当該記事で見出し等に使用していた「胸オペ」という表現を「乳房切除術」へと変更しました。

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