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なぜ大活躍中の大谷翔平が"トレード放出候補"に?メジャーの「トレード事情」 日本との違いを野球ライターが解説

  • 2023.8.9

 

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写真:AP/アフロ

メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスは現地時間の7月27日、大谷翔平選手をトレードに出さないことを正式に発表しました。これにより、大谷選手は今シーズン終了までエンゼルスでプレーすることが事実上確定し、ここ数週間、日米を騒がせた「トレード報道」もひと段落。

ただ、TRILL読者さんの中には「なんであれほど活躍している大谷選手がトレードに出されていたかもしれないの?」と疑問に思った人もいたのではないでしょうか?

トレードとは、「該当チーム同士が自チームに所属する選手同士を“交換”する制度のことで、今回も「エンゼルスは大谷選手を放出して、他球団から別の選手を獲得するのでは?」と噂されていたわけです。

ただ、今やメジャーリーグを代表する選手になった大谷選手の交換要員としてふさわしい選手など、リーグを見渡してもほとんど存在しません。

ではなぜ、「大谷選手のトレード」がこれほど話題になったのか。それには、日本とは少し違うメジャーリーグ流の“トレードの考え方”が関わっています。

日本のプロ野球とメジャーリーグのトレードの違い

日本球界の場合、トレードする選手同士は大抵「同じような実力を持った選手」になります。選手同士を交換するわけですから、どちらかが損するようであれば成立はしません。その上で、該当チーム同士の補強ポイントに合致したり、戦力としてダブついている選手がいれば、トレードが成立します。そのため、チームの主力選手がトレードに出されるケースは滅多にありません。

ただ、メジャーリーグの場合は少し違います。特にシーズン途中、トレード期限(今シーズンで言えば8月1日)直前に成立するトレードは「チームの主力選手」と「将来有望な若手選手」のトレードが頻繁に行われます。

エンゼルスの場合は大谷選手というスーパースターを放出する代わりに、他球団からまだメジャーで活躍していないけれど、将来性が高く評価される若手選手を獲得するのでは?と噂されていました。

普通に考えれば、まだ実績のない若手選手と大谷選手をトレードすることはエンゼルス側の“損”と感じるかもしれません。ただ、これには理由があります。

大谷選手は今シーズンが終わるとフリーエージェント(FA)になります。FAとは選手自身が所属するチームを決めることができる権利。つまり、今シーズンが終われば大谷選手は他チームへと移籍する可能性があるのです。その場合、エンゼルスにはなんの“見返り”もありません。

エンゼルスは今シーズン、本気でチャンピオンを狙っている

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画像はイメージ 出典:Adam Vilimek/Shutterstock.com

エンゼルスは今シーズン、勝率5割前後を行ったり来たりしており、ワールドチャンピオンを目指すために上位チームに与えられるプレーオフ(ポストシーズン)の出場権を獲得できるのかかなり際どいところです…。ここ最近で7連敗を喫してしまうなど、苦しい位置にいます。

もし、このままプレーオフにも進出できずにシーズンを終えた場合、他チームに“タダ”で大谷選手を放出するリスクがあるのです。であれば、もうすぐ契約が切れる大谷選手を放出する代わりに、来年以降を見据えて他チームから有望な若手選手を獲得する――。そんな選択肢が生まれるわけです。

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出典:PeopleImages.com - Yuri A/Shutterstock.com

メジャーリーグでは毎年、「今シーズンの優勝をあきらめたチーム=売り手」から主力選手が、逆に「今シーズン、優勝を目指しているチーム=買い手」から若手選手が交換要員となるトレードがいくつも成立します

メジャーリーグには日本球界の倍以上の30球団が所属しており、「ワールドチャンピオン」を目指せるチャンスはそう簡単に訪れません。過去には100年以上ワールドチャンピオンから遠ざかったチームもあるほど、「世界一」をつかむのは至難の業。そのため「今年はチャンス」と考えれば、たとえシーズンが終わったらFAになる選手であっても、戦力として欲しいというチームがいくらでもあるのです。

しかし、エンゼルスは大谷選手を放出しないという決断をしました。つまり、「今シーズンは買い手に回って、本気でワールドチャンピオンを目指す」決断を下したということです。

事実、大谷選手の残留が発表されてから、エンゼルスは他球団主力選手を相次いでトレードで獲得。代わりに自チームから若手選手を放出しています。

いよいよ終盤戦。大谷選手だけでなくエンゼルスからも目が離せない!

当然、大谷選手個人にとってもこれは朗報です。個人タイトルを狙う意味でも、やはり慣れた環境でプレーを続ける方が望ましいですし、なによりメジャー移籍後、一度も経験していないプレーオフにエンゼルスの一員として出場するチャンスが残されたわけです。

プレーオフ進出争いは熾烈を極め、エンゼルスの立場が微妙なことは変わりませんが、大谷選手の活躍でプレーオフ進出を果たすことができれば、メジャーリーグはさらに盛り上がりを見せるはずです。

TRILL読者のみなさんも、ここからシーズン終盤まで、大谷選手の活躍はもちろん、エンゼルスの“勝敗”にも注目してみてください。WBCでの世界一と、メジャーリーグの世界一……これを同じ年に達成する快挙を達成し、大谷選手がまた、歴史に名を刻むことになるかもしれません。


ライター:花田雪(Kiyomu Hanada)

1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

編集:TRILLニュース

※記事内の画像はイメージを含みます。

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