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【神崎恵×島田順子】「シミやシワも、ともに生きてきた証なんです!」

  • 2023.6.25
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ずっと会いたかった憧れの人

ファッションデザイナー

島田順子さん

【島田順子さんは、こんな人!】

  • 1941:千葉県館山市に生まれる
  • 1963:杉野学園ドレスメーカー女学院デザイナー科卒業
  • 1966:フランスへ
  • 1970:デザイナー集団「マフィア」入社 ★1
「マフィア」の社長と島田さん

★1 「マフィア」の社長と島田さん。素足に真っ白いスニーカースタイルが眩しい。

  • 1975:「キャシャレル」でコレクションを発表、チーフデザイナーに ★2
「キャシャレル」時代、仕事で香港を訪れたときの一枚。

★2「キャシャレル」時代、仕事で香港を訪れたときの一枚。革のパンツにトレンチコートをさらりと羽織って。

  • 1976:娘(今日子さん)誕生
  • 1981:パリに「JUNKO SHIMADA DESIGN STUDIO」設立/パリで初コレクション「JUNKO SHIMADA」発表 ★3/東京でも初コレクション「49AV.JUNKO SHIMADA」を発表
(左)秋に発表したパリでのファーストコレクション。(右)コレクションのバックステージの様子。

★3 秋に発表したパリでのファーストコレクションは、すべてのアイテムをシャツ生地で制作。モードなパリにおいて、日常的な服で勝負。その斬新な発想は話題に。今見ても素敵! 右は、コレクションのバックステージの様子。

愛娘の今日子さんと、アヴェニューニエールの自宅で。

1985年ごろ。愛娘の今日子さんと、アヴェニューニエールの自宅で。

  • 1986:東京に「JUNKO SHIMADA INTERNATIONAL」設立
1987年の夏休み。当時10歳の今日子さんと、島田さんが生まれ育った館山でヨットクルージング。

1987年の夏休み。当時10歳の今日子さんと、島田さんが生まれ育った館山でヨットクルージング。

  • 1988:山地三六郎氏と結婚 ★4
セーヌ川に停泊した船上でのウエディングパーティ。

★4 セーヌ川に停泊した船上でのウエディングパーティ。映画のようなひとコマ。

  • 1996:日本ファッションエディターズクラブデザイナー賞受賞
  • 2012:フランスの芸術文化勲章シュヴァリエ受章
  • 2019:館山市名誉市民賞受賞
  • 2021:パリコレクション80回・40周年を迎える
  • 2022:パリで83回目となる
  • 2023:2023年春夏コレクションを発表 ★5
2023年秋冬コレクションは、フレンチエレガンスをテーマに。

★5 2023年秋冬コレクションは、フレンチエレガンスをテーマに、パリ3区にあるシックな「ジャン・ガブリエル・ミッテラン美術館」の中で、大胆な女性像を表現。モダンで多彩なパリジャンとして描かれたシルエットが印象的。

『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密 Shimada Junko Style4』(マガジンハウス刊)

『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密 Shimada Junko Style4』(マガジンハウス刊)
島田順子さんのファッションからライフスタイルまでをまとめた「Shimada Junko Style」シリーズの集大成。ファッション哲学から愛用品、センスのいい暮らしぶりや料理、生き方まで、島田順子さんの魅力を丸ごと網羅した1冊。

ずっと会いたかった憧れの人、島田順子さん

神崎さん

今日はありがとうございます。ずっと、島田さんにお会いしたいと思っていました。インタビューで「憧れの女性は?」と聞かれますが、島田さんと答えてきました。


島田さん

あら、ちょっと困ったわ。なんだか恥ずかしい。


神崎さん

いつか絶対にお会いしたい、お仕事をご一緒できるように頑張ろうと、ある意味、この対談の実現がひとつの目標でもありました。聞きたいことがありすぎて、何からお話ししたらいいのか……。興奮してしまい、すみません。ちょっと私、気持ち悪いですよね(笑)。


島田さん

先日、春夏コレクションの展示会に、東京の会場まで来てくださったでしょう? ありがとうございました。あのとき初めてお会いして、なんて美人さんなのかしら、と思ったの。それで、今日は緊張しないようにと、気をつけているんだけれど、やっぱり緊張しちゃうわ。ごめんなさいね。


神崎さん

でも、実は6年前に一度、島田さんにお会いしているんです。


島田さん

えっ、本当?


神崎さん

パリから東京に向かう飛行機で、隣の席だったことがあるんです。「島田さんだ!」って、うれしすぎて心の中でガッツポーズをしたんですが、声をかけられなくて。新聞を読んでらっしゃいましたが、あまり見ちゃいけないと思いながら、ドキドキしていました。


島田さん

そうだったの? 声をかけてくださればよかったのに。私、飛行機では映画を観ないの。映画は、ストーリーよりも美しい映像を楽しみたいから、小さな画面でガッカリしたくなくて。だからたいてい新聞や本を読んで過ごします。ともかくね、あなたのような美人さんと一緒に写真に写るのは恥ずかしいわ(笑)。


島田順子さんと神崎恵さん

美容院は苦手。鏡の前でじっと座っていられない

神崎さん

今日は、ヘアもメイクも衣装も全部、ご自身でされているんですよね?


島田さん

いつもそうよ。だって、私の場合はメイクと言ったって、顔を洗ってクリームを塗ったら、ハイ終わり。さすがに口紅だけは塗るけれど、上唇と下唇の色が合ってればいいかなって。


神崎さん

ヘアもご自身でですか? その美しいシルバーヘアとアップスタイルは、島田さんの定番、というイメージです。


島田さん

美容師の友達はたくさんいるのに、美容院には行かないの(笑)。あの大きな鏡がどうにも苦手で、自分の姿を見ながら何時間も座っていることができなくて。だから昔から髪は自分で切っています。


神崎さん

髪の毛も、一度も染められたことがないとか?


島田さん

ありません。髪のお手入れといえば、月に1回くらい、アボカドにオイルを混ぜたディップでするアボカドパックだけ。アップスタイルも、頭頂部でまとめた髪の根元に毛先を巻き込んでから、U字ピンで留めて、くるりとひねってまたU字ピンで固定するだけ。なんでもきれいにまとめようとしないこと。それがコツかな。


島田順子さん
「なんでもきれいにまとめようとしないこと。それがコツよ」(島田順子さん)
島田さん

ヘアやメイクに時間をたくさん費やす人っているでしょ? 私はせっかちだし、その時間があればニュースを観たり食事をしたり、外で動いたり、違うことに使いたい。だからパパッとね(笑)。若い頃なんて、太陽にあたって日焼けすれば、お化粧をしなくていいと思ってたくらい。ガンガン焼いちゃったせいで、今ではそこらじゅうシミだらけ。


神崎さん

シミやシワは、つい隠しがちですが、その人自身まで隠してしまうようなメイクはちょっと違うな、と感じています。


島田さん

シミもシワもつくろうと思ってできるものじゃないし(笑)、ともに生きてきた証でしょ。気にすることなんて全然ないと思う。若いならなおさら。もっと自分に自信をもって、シミやシワでさえ美しく見えるような装いをすればいいと思う。


神崎さん

日本の女性はシミやシワを恐れがちな傾向にあります。


島田さん

鏡の見すぎなんじゃない? 私なんて、確認のため以外、ほとんど鏡を見ないの。不意に鏡に映る自分を見てギャッとなることもあるけれど(笑)。


島田順子さんと神崎恵さん
「シミもシワも気にすることないの。鏡の見すぎなんじゃない?」(島田順子さん)
「シミやシワは、つい隠しがち。でも、その人自身まで隠してしまうようなメイクはちょっと違うかな、って」(神崎 恵さん)
神崎さん

最近は美容医療の技術が発達しているので、若いうちからリフトアップなどを始める方も増えています。年齢を重ねることに、どこか恐怖心があるのかも。


島田さん

みんな、おばあさんになりたくないのね。


神崎さん

なぜでしょう?


島田さん

男が悪いんじゃない(笑)? 日本の男性は特に、若さに重きを置きがちな気がします。フランスのマクロン大統領の奥様なんて、24歳年上。ヨーロッパの男性は、成熟した大人の女性にこそ魅力を感じる人が多いと思う。


神崎さん

成熟した女性……。


島田さん

日本は、女性も男性も年齢を意識しすぎよね。


神崎さん

本当にそう思います。ところで、島田さんの30代はどんな時代でしたか? VOCEの読者の多くは30代なんです。


島田さん

私は25歳でパリに渡って仕事を始めたから、30代はプロフェッショナルな先輩たちに囲まれて、無我夢中でした。40代、50代、60代の先輩たちは、強くてかっこよかった。年齢で何かを比べたことはなかったけれど、みんな、圧倒的な美しさがありました。


島田順子さん
「30代はやっとスタートラインに立ったばかり。これからもっと磨きをかけていける。とても素敵で、美しい時代よ」(島田順子さん)
神崎さん

島田さんは、出産も30代ですよね。


島田さん

そう、35歳のとき。私ね、娘を産んだあの頃がいちばんきれいだったかもしれない。夢中になれる仕事があって、守るべきものがあって、エネルギッシュで、うんと輝いてた。モンマルトルのアパルトマンを買ったのも30代よ。


神崎さん

私は30代の頃、やっと自分の進むべき道が見えてきた感覚がありました。


島田さん

いろいろなことがわかってきて、やっと自分で選べるようになるのが30代だと思わない? 親に連れていかれるレストランじゃなく、自分が食べたいものを自分のお金で楽しめる。長い人生においてはやっとスタートラインに立ったばかりかもしれない。けれど、今、この歳になって改めて思う。やっと30代になれたわね、これからもっと磨きをかけていけるわよって。そんな、とても素敵で、美しい時代が30代だと思う。


神崎さん

確かに、手探りの20代を経て、30代はよりパワフルに人生を突き進んでいたかもしれません。島田さんの言葉を聞くと、歳をとるのが怖くなくなる。むしろ楽しみだと思えるから不思議です。


初めてポルシェを見たときの衝撃は今も…

島田さん

年齢もそうだけれど、とにかく、人の目を気にしないことです。私は昔から、自分の好きなものに対して、ものすごく正直なの。好きなものは変えられない、とても深いところでね。


神崎さん

だれがなんと言おうと。


島田さん

そうよ。私の愛車はずっとポルシェなんだけど、それも、10歳くらいのときかな、初めてポルシェを見て、あまりの美しさに、いつか絶対これに乗るって決めたの。あの衝撃は今でも忘れない。


神崎さん

何に惹かれたんですか。


島田さん

美しい流線型のフォルム。子どもながら、「なんてきれいなの!」って、車の前に座り込んでずっと眺めていたら、母が「ポルシェっていうのよ」と教えてくれたの。それから、衝撃といえばもうひとつ、子どもの頃に見た、兵隊さんの姿。ビシッとセンタープレスされたズボンに、パリッと糊のきいた白いシャツを着たスタイルがスマートで、とても美しかった。あの頃から、好きなもの、素敵なものへの感覚は、はっきりしていたんだと思います。


島田順子さんと愛車のポルシェ

愛車のポルシェと。パリで運転中、追い抜きざまに『かっこいいね、マダム!』と声をかけられることも。「ちょっとうれしくなっちゃう」

神崎さん

初めてのパリコレクションも、シャツの生地だけですべてのアイテムをつくられたんですよね。


島田さん

ファッションは衝動。どうしようもなく惹かれるものってあるでしょう。それを信じればいい。自分が好きだって思えば、どんな服だって着られるんだから。


神崎さん

メイクも同じだと思います。他人のためでなく、自分のために装う、キレイになる気持ち。


島田さん

自分がどうしたいか。服でいえば、いかに楽しく、快適で気持ちよくいられるか。人の目を気にしておしゃれが楽しめないなんて、つまらないじゃない? 私は昔のインタビューで、「80歳になっても白シャツとスニーカーでポルシェに乗る、粋なばあさんでいたい」なんて言ったけれど、81歳の今、その通りに生きてるの(笑)。


神崎さん

私も、そんな風に自分らしくありたいです。


神崎恵さん
「私も、いくつになってもスニーカーで愛車を乗り回せる粋な女性になりたい! 歳を重ねるのがもっともっと楽しみになりました」(神崎 恵さん)
島田さん

私の話ばかりになっちゃった。あなたのことを聞かせて。お子さんはいらっしゃるの?


神崎さん

息子が3人います。シングルマザーになって、息子たちは戦友みたいな存在ですが、毎日必死です。学校の入学金を払い込んだ夜は、ひとり、シャンパンで乾杯したりしています(笑)。


島田さん

3人も育てられて、立派よ。ときには自分に「頑張ったね」って言ってあげることは大事です。


神崎さん

今は、仕事があって健康で、息子たちがいれば、それだけで幸せ。仕事に関しては、まだまだやりたいことがたくさんあります。


島田順子さん
「摑みたい、と思い描けることがあるって、幸せなことよ」(島田順子さん)
島田さん

最高ね。愛する子どもたちがいて、好きな仕事ができて、これほど幸せなことはないわよ。だから、あなたはこんなにシワがないキレイなお顔なのね(笑)? でも本当に、摑みたいものがあって、それを思い描けることは幸せなことです。仕事だけじゃなく、恋愛もね。


神崎さん

それがもう、恋愛は死ぬまでしたくないと思っていて(笑)。


島田さん

もったいないわ。5年後かも、来週かもしれない。またいつでも恋ができるように心を柔らかくしておくことよ。閉ざす必要も、決めつける必要もないんだから。


神崎さん

島田さんにそう言われると、心がふっとほぐれていきます。


島田さん

うふふ。またお会いできること、楽しみにしています。


【対談を終えて】どの言葉も、第一線で闘ってきた人ならではの凄みと重み、優しさであふれていました

Dear 島田順子さん

母がいつも「素敵ねぇ」と言っていた人。その言葉を聞きながら、いつしか私自身にとっても憧れとなっていた人。それが、島田順子さん。

25歳で単身パリに渡り、自身のブランドを立ち上げ、50年以上デザイナーとして第一線で活躍するパワフルウーマン。そんなとてつもない経歴に圧倒され、勝手にものすごく強い女性だと思っていました。でも、実際にお会いしてみると、驚くほどキュートで、最高にチャーミング!

対談中、「困ったわ」「恥ずかしいわ」と少女のようにはにかむ姿も、あまりに可愛くて、こちらがドギマギしてしまうほど。

かと思えば、澄んだ目で「鏡の見すぎなんじゃない?」「男が悪いんじゃない?」とバッサリ、「30代はいちばん素敵」「きれいにまとめようとしないで」「自分の好きなことに忠実に」とキッパリ。どの言葉にも、第一線で闘ってきた人だからこその凄みと重み、優しさがありました。

「仕事をやめたいと思ったことはありますか」という問いに、「何かを生み出す、クリエイティブな仕事はすごく辛くてストレスフル。でも、デッサンを描いているうちに、自分の感覚とピントがパッと合うようなときがあるの。その瞬間、ストレスが消える。でも、何年やっても自信はもてないわ。だから、やめたいことは?って聞かれると、仕事って答えちゃう。

それでもやめなかったのは、この仕事が好きだってことと、何より“パンの糧”だったから。だって、仕事をやめてしまったら、どうやって子どもを育てるの? どうやってパンを買うの? つらいときはいつもそう問いかけていたの」と笑う姿が印象的でした。

これほど世界的に活躍しながらも、躊躇なく「パンの糧」と言える潔さと率直さに脱帽。

今まで、誰かになりたい、と思ったことが一度もない私が、こんな女性になりたいと切望するほど、本当に素敵な人でした。次はぜひ、パリのご自宅にお邪魔させてください!

From 神崎恵

島田順子さんと神崎恵さん。島田さんのコレクションが並ぶ展示会場にて。

島田さんのコレクションが並ぶ展示会場にて。憧れの人にスタイリングをしていただき、大感激。

神崎恵さん

対談当日の装いもこの日に即決したお気に入り。
ニットトップス¥36300、スカート¥29700、ベルト¥19800/すべて49AV.JUNKO SHIMADA その他/本人私物

撮影/榊原祐一 ヘア/赤羽麻希(un-ami) 取材・文/田中美保

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