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「LINEの友だちリスト、すべて消せますか?」│住谷杏奈

  • 2023.6.21

実業家・住谷杏奈さんの生き方から学ぶ、不確かな時代をサバイブするためのヒントを紹介する連載。

「人はいつでも死んで生まれ変われる」と常々語っている住谷さん。人生はRPGのようなもので、リセットボタンを押せばイチからやり直せるというお話もしてくれました。
>>>「人生はRPG。リセットボタンを押せばイチからやり直せる」

今回は、人生をリセットするためにまず着手してほしい「過去を捨てる」をテーマに語っていただきます。

過去を断ち切らなければ、生まれ変われない

正直言って、学生時代のことってほとんど思い出せないんです。だから、取材で昔のことをきかれても答えられなくて。ネガティブなことは忘れるようにしてきたし、特に、イヤだったことはすぐに記憶から消してしまう。昔付き合っていた人の名前も思い出せないくらいなので(笑)。一通り反省し終わったら過去は完全に消去するクセがついているんです。だから、もがいていた学生時代の記憶がありません。
前にも話したように、実家が転勤族だったこともあって、小学校・中学校それぞれ3回ずつ転校しています。転校するたびに違う環境でイチから始めることに慣れているので、ツラいことや納得のいかないことがあると、迷いなくリセットボタンを押してきました。

今考えると本当にちっぽけなことでも、その当時の自分にとってはこの世の終わりくらいに悩むことが多々あって、そのたびにトランクひとつ持って大阪など違う街へ行き、誰も知り合いがいない場所でバイトをしながらイチから生活しようといつも考えていましたね。いつでも逃げる場所はあるんだ!という気持ちが頭のどこかにあったことが、唯一の救いだったのかもしれません。

 「過去があるから今の自分がある」という言葉をよく耳にしますが、 これを言っていいのは成功者だけだと思うんです。今現在うまくいっていなく、くすぶっているなら、過去を断ち切らなければ、ずっとそのままの人生です。
生まれ変わって何者かになりたいのであれば、過去の自分を恥じ、過去の自分なんて捨ててしまえ!くらいに思わないと、リセットなんてできません。

真っ白なキャンバスになれ! 

私はよく経営者向けの講演会を頼まれるのですが、その講演会に来てくださった企業の社長から、 中途採用の社員研修を依頼されることがあります。 面談をしていつも鉄板で伝えているのが、「やりたいことのためにすべてを捨てることができるか?」「自分の過去の考え方を100%捨てることができるか?」というお話です。これは、実際にそうしろという話ではなく、どこまで任せられたことに対して誠意を持って人生を賭けられるか、という例え話として使います。
たいていの人は、仮に自分が持っているものが10個あったとして、「新しいことに挑戦して手に入れたいものがあるなら、そのすべてを捨てなさい」と言われても、すべてを捨てたフリをしてこっそり2個くらいは残してしまうものです。すぐに成功の敵”もったいないオバケ”が出てきてしまい、自分が築いてきた狭い世界での「すべて」を捨てきれないんです。でも、すべてを捨てないとキャンバスのように真っ白にはなれません。新しい環境で新しいものを吸収できるチャンスなのに、真っ白ではなく前に描いたものが残っているキャンバスだと、せっかくのきれいな新しい色が濁ってしまう。まずはすべてを捨てる勇気を持てるかどうかが、とても重要です。

特にアラサーくらいになると、新しいことに挑戦したい、もっとステージアップしたいと勇気を出して環境を変えたとしても、ふとした時に過去の小さな栄光や小さな実績にしがみつきがちです。
新しいスタートを切りたいと環境を変えたなら、過去のことは胸の中の思い出のアルバムにそっとしまい、まっさらな気持ちで臨んでほしいもの。だから、まずは自分の考えをリセットして、真っ白なキャンバスに戻す作業をするんです。その作業をすることで、どんなこともポジティブにスピーディーに吸収できるようになります。
素直な心がある人ほど成長が早いし、伸びしろもあります。いかに柔軟性があるかどうか。凝り固まった考えでは、今の時代、生き残れません。


今すぐ、LINEの友だちリストを消してください

古くからの友人や地元の仲間を大切にするのは悪いことではないけれど、居心地がいい場所に身を置いていると甘えが出てしまい、成長スピードは上がりません。ステージアップしたい!何者かになりたい!生まれ変わりたいのであれば、人付き合いもそのタイミングでリセットしなければダメだと思っています。

自分の会社の入社面談で「会社の方針だと言ったら、今、この場でLINEの友だちリストをすべて消せますか?」ときいています。これだけ聞くとヤバい会社のヤバい社長だと思われてしまうかもしれませんが、これをきくのには理由があります。

この質問に対する答えは、だいたい3パターンに分かれます。

「はい、わかりました。全部捨ててでもここで働きたいので、すべて消します!」という人、「家族や親友だけ残してもいいですか?」という人、「今までがんばって築いてきた人脈をすべて捨てるなんてできません……」と、惜しむ人。
もちろんその場で実際に消してもらうわけはなく、私はそのときの反応を見ているのです。
私のもとで働きたいと入社してきて、今後私を信用してついてこられるのか、これまでの考えを捨てて真っ白なキャンバスになれる柔軟性はあるのか、AかBを選択するときに、正しい方を選べる判断能力はあるのか。やはり、すんなり「消せます」と言えた人は、その後ステップアップしているし、すごいスピードで成長しています。”もったいないオバケ”にとりつかれている人は、人生の選択をことごとく間違え、目の前に来たチャンスを逃す傾向にあります。

友だちリストに100人、300人、500人……といたって、そのうち何人があなたのことを真剣に考えてくれていますか? あなたが危機のときに助けてくれる人は何人いますか? 何より量より質です。人に嫌われたくないと八方美人で人付き合いしても疲れるだけだし、気をつかいながら付き合う時間はムダです。ここでも「ドリーム時給」を思い出しましょう! それに友情とか絆とかって、もちろんプラスになることもあるけれど、モヤモヤしたり頭を悩ます材料になる場合もあります。

いつまでたっても”もったいないオバケ”にとりつかれて過去を捨てられないと、前に進めません。なんでも容量って決まっていると思うんです。 自分の容量も決まっているし、自分の脳の容量も決まっています。満杯だと新しいものは入れられない。何かを捨てた分だけ、新しい何かをその場所に入れられます。新しいいいものだけを入れるためにも、過去を潔く捨てて余白を作っておくことが大切です。新たな環境でのスタートラインに立つためのリセットができるかできないかを、「LINEの友だちリストを消すことができるか?」という質問で見極めているのです。

人生は1回きりじゃない。50回、100回と体験できる 

よく「人生は1回きりだから後悔しないように生きよう」と言うけれど、そんなことはありません。繰り返しになりますが、リセットボタンを押せばいつでも、どこででも、何回でも生まれ変われるし、違う世界を楽しめるんです。
少しでも違うなと思ったら、すぐにリセットボタンを押して何回でもやり直せばいい。「諦めずに続けることが美学」の時代は終わりました。ツラいことがあったらすぐに逃げ出していいんです。50回目くらいに自分に向いているものに出会えるかもしれません。そうしたら、そのときに続ければいいんです。私は、今まで様々な状況で何十回もリセットボタンを押してきました。何回生まれ変わったかわかりません。でもいろいろなことを経験し、その経験という「装備」のおかげで、生まれ変わるたびに成長できました。時には不安になりながらもたくさんのものを捨ててきました。そうしたら結果、大切なものだけが残りました。

過去の自分を思い出すときに、「あの頃はよかった」ではなく、「あの頃の自分は、何がいけなかったのか」と、自分の行いを省みて、次こそは正しい選択をするぞと心機一転また新しく生まれ変わることが成長につながっていくのです。


PROFILE
住谷杏奈(すみたに・あんな)
【写真】

1983年2月1日生まれ。2006年にお笑いタレント・レイザーラモンHGさんと結婚し、2008年に男児、2011年に女児を出産。夫のケガを機に商品開発をはじめ、実業家としての才能も開花。美容の知識を活かしたプロデュース商品で次々とヒットを生み出す。現在は、実業家、タレントとして活動。

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