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デザイナー・大島依提亜がもう一度見たい映画と、その理由。『イメージの本』

  • 2023.6.21
デザイナー・大島依提亜

何度観ても覚えられない=新鮮なシーンの連続だから

まず、ゴダール映画が難解だといわれる理由の一つがストーリーのなさ。過去作では、俳優によって物語らしきものが語られることもありましたが、この作品はほとんど物語の要素がありません。タイトル通り、とにかく膨大なイメージが怒濤のごとく押し寄せる。そんな感じです。

過去の映画や映像、文章や絵画からの引用が並ぶのだけど、名画のワンシーンだけではなく、画質が悪いビデオのような映像をさらに加工して、強烈なコントラストになっていたり、白飛びしていたり、ものすごく美しい映像が出てきたり。すべてのシーンに度肝を抜かれるし、セレクトも秀逸で、絵的に全然飽きない。

それはYouTubeやSNSをダラダラ見てるのに近い感覚のようにも思えて、ゴダールはインターネット時代の映像感覚を独自の手法で表現したのかと思えば、親近感が湧く。

ゴダール自身が語る言葉の内容や映画の意味を深めていく見方もあるけど、それがわからなくたっていい。何なら途中から観ても、寝てしまっても、倍速で観たって大丈夫。好きな本をたまにパッとめくるように、自分なりに再編集したゴダールの映画が楽しめる。何度観ても新鮮で、全部のシーンがハイライト、こんな映画はほかにないと思います。

Information

『イメージの本』

監督自らナレーションを務め、過去のさまざまな映画、絵画、文章、音楽をコラージュし、大胆に紡いだめくるめく音と映像の世界。2018年のカンヌ国際映画祭では、最高賞を上回る「スペシャル・パルムドール」を受賞。'18スイス=仏/監督:ジャン=リュック・ゴダール。
Blu-ray・DVD発売中/デジタル配信中(コムストック・グループ)

profile

デザイナー・大島依提亜

大島依提亜(デザイナー)

おおしま・いであ/1968年栃木県生まれ。映画のグラフィックを中心に展覧会や書籍のデザインを手がける。最近の仕事に映画『LAMB/ラム』『窓辺にて』など。

Twitter:@oshimaidea
Instagram:@ideaoshima

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