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セリーヌのファンはパレ・ド・トーキョーへ。ニコラ・ジェスキエールのファンはポンピドゥー・センターへ。

  • 2015.12.16
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今秋から来年の初頭にかけて、パリ市内では面白そうな展覧会が多数開催されている。その中からモード展ではないが、ファッション好きが興味を持てそうな2つの現代アート展を紹介しよう。二人の興味深いアーティストの仕事は、たとえ実際に展覧会に来られないにしても知っておくのは悪くない。自分が好きなクリエーターやブランドが敬意を表するアーティストの仕事に接することで、彼らの世界をより深く解することの助けにもなるだろうし。

パレ・ド・トーキョーにて開催中の『UGO RONDINONE : I LOVE JOHN GIORNO』展。みんなが大好きなセリーヌがこれを特別サポートしている。スイス人アーティストのウーゴ・ロンディノーネによる、詩人でパフォーミングアーティストのジョン・ジョルノ(1936〜)の世界初の回顧展だ。ジョルノは60年代ニューヨークのアンダーグラウンド・アートシーンのスターである 。アンディ・ウォーホルと親しく、彼のフィルム『眠り(スリープ)』(1962)で延々と眠り続ける男が彼である。なお、ジョルノはビート・ジェネレーションの作家たちとも親交が深かったそうだ。会場の最初の大部屋では、4壁に設置された巨大なスクリーンで彼が70歳の誕生日記念に行った14分間のパフォーマンス『Thanx 4 nothing』(2006)に圧倒される。素足で踊るように詩を読み上げる彼の姿には、この分野で彼がいかにパイオニア的存在だったかを納得させるパワーが溢れている。詩人の回顧展ゆえ会場には言葉だらけ......といっても、ポップな展示なので、眺めているだけでもビジュアル的に楽しめるのがいい。電話機を設置したDial-A-Poemの部屋では、彼が1968年に始めた電話によるポエム・サービスで流された詩が壁を埋めている。"Heavier than Heaven" "Bad news is always true" "Life is a killer"......名句がいっぱい! ぜひとも活動し続けて欲しいアーティストである。

左:開催に先立ち、10月19日(月)から1週間限定でパリ市内約500か所のキオスクにCÉLINEがデザインしたポスターが掲出された。

右:パレ・ド・トーキョーの会場入り口。

「thanx 4 nothing」の部屋。youtubeでもこの詩を読み上げる彼の別バージョンを見ることができる。

ジョルノと親交のあるウーゴ・ロンディノーネによる会場構成。

Dial-A-Poemの部屋。なおフランス国内では期間中、0800 106 106 にダイヤルすると英語あるいはフランス語のチョイスで、ポエムを聞くことができる。

「Ugo Rondinone:I love John Giorno」展
会期:開催中〜2016年1月10日 12:00~24:00
会場:Palais de Tokyo
13, avenue du Président Wilson
75116 Paris
休館日:なし
料金:10ユーロ(Ragnar Kjartansson展、Mélanie Matranga展含む)

ポンピドゥー・センターで回顧展が開催されているアーティストのドミニク・ゴンザレス=フォースター(1965年〜)。バレンシアガがサントノーレ通りにオープンしたブティックの内装を当時のADのニコラ・ジェスキエールとコラボレートしたアーティストと聞けば、ああ、と思いあたるのではないだろうか。彼女の仕事の中に自身の想像物に非常に近いものを見出したというニコラならではの選択だった。ちなみに、この展覧会のカタログにも彼は文章を寄せている。

「1887-2058」というタイトル。これは自分の起源を19世紀に見出しているアーティストによる時代の旅である。文学、映画、建築、モードなどにインスパイアされて生まれたビデオやインスタレーションはビジュアル的に力強く、実際に会場で感じる必要がある作品ばかり。室内/屋外、不在/存在、事実/虚構、現在/時間の旅といったコントラストの感覚に身を任せて欲しいというのが、アーティストの願いである。迷路のように構成された会場。シンディ・シャーマンや森村泰昌のように自ら著名人に扮してのセルフ・ポートレート撮影は彼女の表現法のひとつとして知られ、ここでも彼女によるマリリン・モンロー、フィッツカラルド、ローラ・モンテスなどの写真、映像を見ることができる。都会の部屋、70年代の部屋、ファスビンダーの部屋など「ルーム」のインスタレーションも、もちろん。さまざまな展示の中でもモードファンが時間をかけて眺めることになりそうなのは、インスタレーションの「Euquinimod et Costumes」だろう。これは、アーティストの子ども時代から今にいたるワードローブから選ばれた服によるバイオグラフィーである。コムデギャルソンもあれば、ニコラによるバレンシアガも......。

左:M.2062 (Fitzcarraldo)2014年に開催された韓国のクアンジュ・ビエンナーレで発表された映像作品より。© Giasco Bertoli et DGF© ADAGP, PARIS 2015
右:Euqinimod & costumesは、2014年にニューヨークの303GALLERY で初めて発表された。photo:John Berens © ADAGP, PARIS 2015

「Dominique Gonzalez-Foerster 1887- 2058」展
会期:開催中〜2016年2月1日 11:00~21:00
会場:Centre George Pompidou
休館日:火
料金:14ユーロ
www.centrepompidou.fr

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