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美容家・君島十和子さん「答えは自分の中にある」 コンプレックスをチャンスに変えて

  • 2023.6.19

ライフスタイル本『アラ還十和子』(講談社)を出版した、美容家の君島十和子さん。57歳を迎えた今だからこそわかる、パートナーシップの秘訣やコンプレックスとの向き合い方、年を重ねることについて聞きました。

24時間ほぼ一緒の夫。一番身近な人だからこそ

──パートナーの君島誉幸さんとの仲のよさも注目を集めています。夫婦円満の秘訣(ひけつ)はありますか?

君島十和子さん(以下、君島): お互いに「不完全人間である」という自覚があって、そこを補い合っている関係なのだと思います。完璧を求めないですし、自分がされたら嫌なことは相手にもしない、言わないというのがベースにありますね。

朝日新聞telling,(テリング)

夫とは、仕事もプライベートもほぼ24時間一緒。一番身近な人だからこそ、ありがとうやごめんね、助かるといった言葉はマメに伝えるようにしています。これ、0円ですから。面と向かって言えなかったらメッセージアプリで伝えるのもいいですよね。

日々一緒に生活していると、このくらいわかってよとか察してよと思うこともあるかもしれません。でも、家族はそれぞれ自分のことに一生懸命。だから相手に期待するのではなく、「私は今こういう状態なんです」と自分の情報を小まめに伝えていくのが、爆発しないためには大切なのかなと思っています。

──ストレスがたまったときの対処法は?

君島: お酒が飲めないのでアルコールで発散とはいかなくて。運動をする時間が取れなかった頃は、熱いお風呂に好きな入浴剤をたっぷり入れてつかるのがストレス解消になっていました。発汗することで、自分の中にあるマイナスの感情をすべて流すようなイメージです。

お風呂を出るときに頭皮とひざ下に冷水をかけると血行がよくなって、よく眠れるんです。ぐっすり眠れるとストレスが軽くなったり、角度を変えて物事を見られるようになったりと切り替えができるんです。

もしかしたら、できる方はこんなことを聞かなくても当たり前にやっているかもしれませんが、「こんなに簡単なことでラクになったのよね」と伝え続けることが私の存在理由ではないかと思っています。知ることでふっと気持ちが軽くなってもらえたら。

朝日新聞telling,(テリング)

目を背けなければ、おのずと答えが見えてくる

──美容情報の発信は、コンプレックスがあったからこそできたことだとお聞きしました。

君島: 私は、外見にも内面にもいろいろとコンプレックスを持っている人間なんです。でも、コンプレックスと向き合うことで、ひょうたんから駒じゃないですけど何かのヒントになると思っています。

私が美容業界の仕事を始めたのも、自分の肌がコンプレックスで、それと向き合ってきたからなんです。ずっとピカピカの肌で生きていたら、きっと真面目に取り組まなかったと思います。だから、コンプレックスこそチャンスなんですよ。

──今、57歳でいらっしゃいます。エイジングに前向きになれない時期はありましたか?

君島: 本当にたくさんありました。正直、年を重ねてがっかりしたこともあります。でも、向き合った分だけ自分の中に引き出しが増えていくんです。こういうときはこうしようとか、こっちがダメならあっちでカバーしようとか。年齢を重ねるっていうのは経験を積むことですから。

20代がある日突然、40代になるわけではなく、エイジングは日々の少しずつの変化なのでそこまで恐れることではありません。その変化の間で耐性や解決方法を身につけていくので。一発逆転はないけれど、諦めずに向き合っていると必ず答えが出てくると思います。

だから、ポイントは目を背けないこと。見なかったことにするのが一番よくないと思っています。

私たちの顔や体はメイクをするため、洋服を着るためだけにあるわけじゃないですよね。もうこれは、大事な大事な人生の“入れ物”なんですよ。長い付き合いになるものですから、大切にしてあげてほしいなと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

──40歳を迎える直前は怖くてたまらなかったと、著書に書いていたのが印象的でした。

君島: 20代から30代になるとき、30代から40代になるときは特に抵抗や恐怖感がありました。30代のときなんて、「37歳ですか?」と聞かれると「いいえ、36歳と4カ月です」みたいな、謎のしがみつき方をしていたくらいです(笑)。

40歳になったらどうなっちゃうんだろうと思っていましたけれど、なってみたら何てことはなかった。むしろ、30代ではそぐわないものや背伸びしていたことがしっくりきて、ちょっとだけ高みにのぼった気持ちになりました。

あとは40代で「抜け感」という言葉に出合ったんです。年齢を重ねると、例えばメイクで言えば、どのパーツにも全力投球していたらやりすぎに見えますよね。大人は手を抜いているくらいでちょうどいいんです。これはラッキーなことだと思っています。

本音と向き合うときに必要なのは「勇気」

──これから先、年齢を重ねることは楽しみですか?

君島: 楽しみです。50代になってまた視点が変わったと感じているんです。世の中の出来事や自分のことも含めて、より俯瞰(ふかん)で見られるようになりました。そうすると、今何を求められているのか、自分の立場はどこにあるのかといったことを捉えやすくなったように思います。生きやすくなりましたね。

今が一番楽しいですが、先輩方を見ていると、この先も年齢を重ねるともっと楽しくなるのではないかと感じます。できなくなることも諦めることも出てくるかもしれません。でも、その代わりに手に入れられることが増えてきましたから。

映画を観ても小説を読んでも、感じ方の深さが違うんです。同じことをしても新しい視点が得られるので、そういう意味では時間がいくらあっても足りないですね。

朝日新聞telling,(テリング)

──人生のさまざまな分岐点にいる20代後半から40代前半の方がtelling,の読者層です。結婚・出産・仕事などで悩む世代に向けて、アドバイスをいただけますか。

君島: きっと答えは自分の中にありますから、ここでもやっぱり本音と向き合うことでしょうか。親が喜ぶからとかまわりの反応がいいからではなく、ご自身はどう思うのか。

正直な自分と向き合うときに必要なのは勇気だけなんですよ。まわりのことを考えすぎたり、私が我慢すればいいと思ったりする気持ちを取り払う勇気です。すぐには答えがわからなくても、何回も問いかけるうちに自分の本音が見えてくるのではないでしょうか。

■Kaori Teradaのプロフィール
編集・ライター。ヘルスケア、ライフスタイル、キャリア系媒体などを経て、ウェブ編集者歴は10数年。現在は、ビューティや女性の健康にまつわるテーマを中心に取材・執筆。「心も体もすこやかに」をモットーに、日々アンテナを張っています。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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