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「女らしさ」にモヤってない? ジェーン・スー×中野信子の「人生ゲームのバグ報告書」

  • 2023.6.18

「あれ? もしかして、これ私が悪いんじゃなくて、私が『女だから』なのでは?」

本書『女らしさは誰のため?』(小学館)は、コラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さんが対談し、私たちが知らず知らずのうちに組み込まれている「残酷なシステム」をつまびらかにする1冊。

女に生まれてモヤモヤした経験をざっくばらんに語り合い、それってそもそも~と、モヤモヤが生まれる原因を分析している。生き方が多様化した今、もはや誰にでもあてはまる生き方の正解などない。本書にあるのは1つの正解ではなく、心地よく生きるための数々のヒントだ。

スーさんと中野さんの対談ということで、これは面白そうだと思い、読み始めた。正直に言うと、お二人のウィットに富んだやりとりに、頭をフル回転させながらついていく感じだった。知識量、思考力、言語化力、どれも半端ないのだ。著書やメディアを通してよく知っているつもりだったが、改めてすごいなと思った。

これはバグ報告書

今感じているモヤモヤ、自分のせいだと思っていた。でも、じつはそれ、自分がどうこうではなく、「女だから」なのでは――。そんな疑問を投げかけるところから本書は始まる。

まず、「女らしさ」とは何か。外見的には、清楚でスカートスタイルでメイクは薄め、内面的には、気遣いができて誰かをサポートする能力に長けている......などを挙げている。

自分らしい=女らしいではないというお二人にとって、社会で設定された「女らしさ」をやること自体が「無理ゲー」だった。「女」という、自分を構成するたった1つの「タグ」に振り回され、窮屈な思いをしていた。しかしあるとき、それはゲーマー能力が低いからではなく、世の中の仕組みにバグがあるからでは、と思い始めたという。

「本書は、中野信子さんと私がプレイしてきた人生ゲームのバグ報告書です。このプログラムだと、どう頑張ってもうまくいかないようにできているよ、という例を思いつくままに挙げてみました。仕組みがわかれば、それにどう対峙するかはあなた次第です。」(スーさん)

加齢も悪くない

中野さんは学校の成績がよかったり、周りがぎょっとするようなことを言ったりして、「女らしくない」と否定的に見られたという。一方、スーさんは体の大きい子どもで、自分を「普通の女の子」として見られなかったという。

女らしくない自分は不完全→自信が持てない→「女らしさ」を手に入れて自信をつけようとする→自信満々な女は女らしくないとみなされる......という負のループ。「女らしさは女から自信を奪う非常に秀逸なシステム」と、スーさんは指摘している。

ちなみにお二人とも、年齢的に「女らしさ」を求められなくなった37歳くらいのとき、規定の「女らしさ」から降りたことで、ようやく自信を持てるようになったという。

「どうやって自信を手に入れたかという問いに戻ると、それに対する答えは、『加齢』なんです。だから40代、悪くないと思うなあ。」(中野さん)

「『女として何点です』という土俵から離れてからのほうが、好きなことができるようになったし、生きやすくはなったと思いますね。」(スーさん)

考えながら、変化していく

自分は女に生まれてモヤモヤした経験があるか、振り返ってみた。ランドセルは赤一択(ごくたまに黒やピンクを見かけた)。体育でブルマを履くのがしんどかった(太ももを人目にさらしたくなかった)。仲良しグループに所属しないと女子らしくない、という雰囲気になじめなかった(クラスでたぶん浮いていた)......。

「残酷なシステム」というのはざっくり言うと、女は(男は)こうあるべきという、社会にこびりついた考え方のことだと解釈した。どれもそういうものだから仕方がないと、当時の自分も思っていた。

あのころから時代の空気はずいぶん変わってきたように感じる。何かに違和感を持ったら、いや、ちょっと待てよ、と考える。するとそのうち、私たちの常識の枠は少しずつ形を変えていくのだろう。

今の自分にちょっとした革命を起こす。本書はそんなきっかけをくれる1冊だ。

「自分の欲望をなめるな。普段はひた隠しにしても、その炎が消えることはありません。隠せば隠すほど胸の奥でくすぶり、自由闊達に生きる人を恨めしく思い続ける燃料になってしまう。」(スーさん)

「私たちは、迷い、間違える。正しい答えを選べない。何が正しいのかすらわからない。私たちは不完全である。しかし、こうした私たちの不完全性が、何かの意味を持つのだとしたら、どうだろうか。」(中野さん)

■目次
はじめに ジェーン・スー
第1章 「女らしさ」は誰のため?
第2章 敵と味方とルールを再検証する
コラム 女同士だからって、何でもわかり合えるわけじゃない ジェーン・スー
第3章 恋愛と結婚、私たちの場合
コラム 「第二の性」 中野信子
第4章 なぜ女は自信を持ちづらいのか?
コラム 自分で自分にOKを出そう ジェーン・スー
第5章 いつか結婚も出産もレジャーになる
コラム 私たちはいつでも、どこへでも行ける 中野信子
第6章 ジャストフィットな生き方は自分で決める
コラム あなたはあなたが思ってるよりずっと大きいかもしれない ジェーン・スー
おわりに 中野信子

本書は、2019年に刊行された『女に生まれてモヤってる!』に最新状況を加筆、再編集のうえ新書化したもの。

■ジェーン・スーさんプロフィール
1973年東京都生まれ・日本人。コラムニスト、ラジオパーソナリティ、作詞家。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」、『となりの雑談』のパーソナリティとして活躍中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『おつかれ、今日の私。』(マガジンハウス)、『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)などがある。

■中野信子さんプロフィール
なかの・のぶこ/1975年東京都生まれ。脳科学者。東日本国際大学教授。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年までフランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『サイコパス』(文春新書)、『脳の闇』(新潮新書)などがある。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科(博士後期課程)にて科学とアートの関係について研究を進めている。2022年より脳波を使った展覧会のキュレーションも行っている。

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