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美容家・君島十和子さん、「順風満帆ではなかった」からこそ 『アラ還十和子』に込めた思い

  • 2023.6.18

美容から更年期、家族の話までをまとめたライフスタイル本『アラ還十和子』(講談社)を出版した、美容家の君島十和子さん。57歳を迎えた今、人生のターニングポイントや心構えについてうかがいました。

結婚が大きなターニングポイント

──著書では、美容や仕事、家族、友達付き合いといったテーマを通して、ご自身の人生を振り返っていらっしゃいます。改めて、人生のターニングポイントはいつだったと思いますか?

君島十和子さん(以下、君島): 結婚をしたことがすごく大きなターニングポイントだったと思います。それまでの芸能界の仕事を辞めて、一度は専業主婦の道を選びましたし、人生観や世界の見え方が変わったタイミングでした。

振り返ってみると、学校を卒業してから自然発生的に芸能界の仕事が始まって、ありがたいことに、私の意思より先んじて仕事をいただくことが多かったんですね。オーディションで選んでいただいたものにお応えする、というスタンスだったところから、芸能界を辞めて、夫の仕事を手伝うと自分で決心したことは大きな変化でした。

朝日新聞telling,(テリング)

結婚するまでは実家におりましたので、一人暮らしもしたことがない状況でした。しかも、最初の8カ月ほどは義理の両親と同居。おまけに婚約会見後からマスコミのバッシングに遭い、家の外は嵐のような日々。「ちゃんとしなくちゃ」という責任感や、強い思いが湧き上がってきましたね。

──結婚後、家庭も仕事も新しいコミュニティーに入って、心がけたことはありますか?

君島: 結婚してすぐは何もできませんでしたし、夫の会社では何も知らない一番の素人。とにかく勉強をしないといけないし、ここで居場所をつくるためには何ができるんだろうと。

家事も仕事もわからないことは教えていただき、勉強する。そのために、まわりの方と積極的にコミュニケーションを取るように心がけていました。義母に家事のやり方を聞いたり、会社の方に仕事について教えていただいたり……コミュニケーションを取らないと何も学べない状況でしたから。

朝日新聞telling,(テリング)

状況を嘆くより、できることに目を向ける

──著書には、「どうして私にこんなにつらいことが?」と思う人生の局面が何度もあったと書かれています。それでも諦めず、腐らず、日々を過ごせたのはなぜでしょう?

君島: 実は小さい頃の家庭環境も、芸能界に入ってからの仕事も、順風満帆ではなかったんですね。自分の力ではどうにもならない経験を何度かしていて。だから、人生ってうまくいくことが当たり前ではないし、ままならないときがあるものだよねというマインドを持っていると思います。

どうすることもできない状況を嘆くより、何かできることや動けることがないかに目を向ける。ひとつでも自分が変化を起こせるところがあるだけで幸せだなと思っていました。

「できることにフォーカスする」という考えは、今も変わっていません。例えば、やりたい仕事やつくりたいものがあるとき。人まかせにして、ただ待っていても物事は動いていかないですよね。自分からまわりに働きかける必要がありますし、まわりの方に協力していただくには、まずは自分が一番動かないといけないと思っています。

──今できることに全力で取り組む中で、迷いが生じることはありますか?

君島: 何かを決めるときに迷ったことがあまりなくて……。社員や家族など人を巻き込むことだと実行するかどうかはかなり迷いますが、自分のことなら答えを出すのは速いです。

振り返ってみると、思わずほとばしるような思いとか、気持ちで動いたことじゃないとなかなかうまくいかなかったなと思いますね。まわりと比べすぎたり、迷いが生じたりしたときって、描いたゴールにスパンとはたどり着かなかった。

直感で判断したことは割と合っていたと思います。心からの気持ちで動くから、たとえ失敗しても学びになるんです。だからあまり恐れず、自分を信じた方がいいと思っています。

朝日新聞telling,(テリング)

天職と出合うには、偽りのない本心を知ること

──今すごく好きな仕事をしていて、まだまだやりたいことやお伝えしたいことがあるとお聞きしました。天職を見つける秘訣(ひけつ)はありますか?

君島: 心の奥底にいる自分と向き合うことでしょうか。どんなことに真の喜びや楽しみを覚えるのかなど、飾りや偽りのない本心を知ることがとても大切だと思っています。

私の場合は、自分が得た情報を人にお伝えすることに喜びを感じるんです。ともすればおせっかいなんですけれど、世の中にその情報を必要としてくださる方がいるのであれば、わかりやすくお伝えして、みんなで共有していく──。そのことにすごく喜びを感じます。

こんなにいいものがあったよとか、私はここに困ったことがあるとか、◯◯がこんなふうにきれいで感動した、などをシェアすることで一緒に感じられたらと思っているんです。

──ためになる情報を伝えて喜びを感じる──。そのことにはいつ気付かれましたか?

君島: 私が女優の仕事をしていた20代の頃は、メディアで美容について声高に話す文化はなかったんですね。雑誌のインタビューページでは、女優さんが美しさの秘訣を聞かれて「何もしていません」「よく眠っています」と答えていた時代でした。

でも私は、その方たちが楽屋から2〜3時間出ていらっしゃらないのを知っていたんですよ。美しさを手に入れたり保ったりするには相応の努力と、いろんな技術が必要だと目の当たりにしていました。

自分が知りたかったことはメディアには載っていないわけですから、情報を得るのにとても苦労しました。だから、伝えたくなっちゃうんです。

朝日新聞telling,(テリング)

当時は、女優の仕事をしながら具体的な美容法について発信している人なんていませんでした。化粧ポーチの中身を紹介したり、使ってみてここがよかったとメディアで語ったり、お気に入りの使い方を公開したのは私が初めてだったのではないでしょうか。それがまた次の仕事につながっていって、今がありますね。

■Kaori Teradaのプロフィール
編集・ライター。ヘルスケア、ライフスタイル、キャリア系媒体などを経て、ウェブ編集者歴は10数年。現在は、ビューティや女性の健康にまつわるテーマを中心に取材・執筆。「心も体もすこやかに」をモットーに、日々アンテナを張っています。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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