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バラ咲く庭でパーティー開催! 英国チャールズ3世の戴冠式を祝って

  • 2023.6.18

2023年5月6日は、英国の新国王チャールズ3世の戴冠式が行われ、日本でも式典の様子がニュースで報じられましたが、ロンドンではあちこちの街中でストリートパーティーが行われ、記念日を多くの国民が祝ったといいます。この記念の機会を日本でも祝いたい!と、バラ咲く庭で「チャールズ3世の戴冠式を祝うローズパーティー」を自宅で行なったローズライフコーディネーターの元木はるみさんに、その様子と特別なメニューについて教えていただきます。

バラ咲く季節を祝う2023年のパーティー

バラの庭のパーティー
パーティー当日は、コロネーション(戴冠式)グッズのガーランドを飾って、ゲストをお迎え。

今年は、今までで一番早く訪れたバラの開花シーズンとなり、私は大慌てで庭仕事をし、ローズパーティーの準備と、慌ただしい5月でしたが、皆様はどう過ごされたでしょうか?

ローズパーティー
フェンスに絡むバラは、ゲストの方々に我が家を知らせる目印となったようです。

バラが咲く季節は、我が家でローズパーティーを開くのが恒例となっていますが、2003年から数えて21年目だと気づき、あっという間の年月の経過に驚いています。

今年もおかげ様で、ささやかながら、5月に6日間のローズパーティーを開催させていただきました。

チャールズ国王戴冠式
2023年5月6日、式典終了後、バッキンガム宮殿までの道のりをパレードする「ゴールド・ステート・コーチ」と祝賀の様子。Watcharisma/Shutterstock.com

日替わりでテーマを変えて行いましたが、なかでも英国の新国王チャールズ3世の戴冠式が5月6日に行われたのを機会に、「チャールズ3世の戴冠式を祝うローズパーティー」をテーマに、ナショナル・トラストサポートセンター理事である徳野千鶴子先生に協力していただき、イギリスの戴冠式を祝うストリートパーティー公式メニューから、3つのメニューを再現したパーティーを開催しました。その様子と3つのメニューについて詳しくご紹介したいと思います。

ゲストを迎えるパーティーの準備とおもてなし演出

バラの庭

例年よりだいぶ咲き進むのが早くてハラハラしましたが、なんとかバラが咲き、安堵したパーティー当日の朝。到着したゲストの方々には、全員が集まるまで自由に庭を散策していただきました。

イングリッシュローズ‘エヴリン’

門の近くでは香り高いイングリッシュローズ‘エヴリン‘がちょうど咲いて、バラもゲストをお出迎えしていました。

ローズパーティー
庭にも、ロイヤルに関するグッズ(ロイヤルアスコットのハンバーと、コロネーションの記念のティータオル)を飾って雰囲気作り。テーブル中央には、朝摘んだバラをアレンジ。
ローズパーティー

今回は、2つのテーブルで色調を変えて用意しました。半戸外で庭に近いコンサパトリーは、英国菓子やガーデンティーに合う、イギリスのスポード社の「ブルー・イタリアン」の食器を(上写真)、室内は、ローズ色のファブリックに合わせて、イギリスのロイヤル・アルバート社の「レディ・カーライル」をセットしました。

ローズパーティー
「チャールズ3世の戴冠式を祝うローズパーティー」のテーブルコーディネート。
ローズパーティー

テーブルには、コロネーションマークが表紙になったメニューを用意しました。このマークは、一般の方にも自由に使えるようにと、戴冠式を祝うストリートパーティーに関する公式HPでダウンロードができたとのことで、徳野千鶴子先生がメニューを用意してくださいました。

戴冠式
戴冠式を記念してロンドンのリージェント通りに掲げられた旗の中にもコロネーションのマークが。chrisdorney/Shutterstock.com

イギリス(英国)は、正式には、「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)」であり、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、イングランドの4つの「国」から構成される立憲君主制国家です。

マークには、スコットランドの「アザミ」、ウェールズの「ラッパ水仙」、北アイルランドの「シャムロック(クローバー)」、イングランドの「バラ」、そして「チューダーローズ」が描かれています。

コロネーションマーク
chrisdorney/Shutterstock.com

「チューダーローズ」は、「バラ戦争」と呼ばれた15世紀の王位継承権を巡って起こったランカスター家とヨーク家の争いにランカスター家が勝利し、ヘンリー7世によってチューダー朝が開かれた際に、両家のバラの紋章(ランカスター家は赤薔薇、ヨーク家は白薔薇)を組み合わせてできた紋章です。「チューダーローズ」は、現代の王家にも伝統的な紋章として引き継がれています。

ローズパーティー

さて、そんなマークがついたメニューを広げると、左側に、「ロイヤルファミリーと会ったことはありますか?」や、「休日何をしますか?」などの文字が記載されていますが、これらは、イギリスでのストリートパーティーにおける、会話のきっかけのヒントが記載されているのです。

ロンドンのストリートパーティー
ロンドンのストリートパーティーの様子。Graham King/Shutterstock.com

ストリートパーティーは、文字通りストリートで行われるもので、その目的は、人と人とのコミュニケーションです。ちなみに、公園や学校などの広場で行う場合は「ビッグランチ」と呼ぶそうです。じつはイギリスでは、こうした「ストリートパーティー」や「ビッグランチ」をとても重視する動きがあります。それは、「人を孤独にしない」という取り組みです。孤独によってアルコールや薬物に依存したり、孤独死に繋がることもあります。しかし、こうしてコミュニティーを作ることで、誰もが少しでもよりよい人生を送ることができるよう、そのきっかけとして、「ストリートパーティー」や「ビッグランチ」が推奨されているのです。

ローズパーティー
左/室内の一角には、バラのアレンジを飾って。右/見た目も涼しげなローズドリンク。

ウェルカムドリンクは、市販のローズシロップを炭酸で割ったローズドリンクを用意。日差しが強い日でしたので、クールダウンしていただきました。

コロネーション・ストリートパーティーの公式メニューを再現

徳野千鶴子先生

当日、英国チャールズ3世の戴冠式を祝うストリートパーティー公式メニュー5つの内から3つを徳野千鶴子先生が再現してくださいました。

徳野千鶴子先生には、メニューの再現だけでなく、そのメニューの背景に隠れたさまざまなエピソードもお聞きすることができました。

コロネーション オバジーン&エビのタコス

ローズパーティー
皿の上左は「ナディア・フセインさんのコロネーション オバジーン(ナス)」、右は「グレッグ・ウォレスさんのエビのタコス パイナップルサルサ添え」。

3つのメニューの中の一つ目が、「ナディア・フセインさんのコロネーション オバジーン(ナス)」です。

ナディアさんは、ご両親がバングラデシュ出身の1984年生まれのイギリス人女性で、2人のお子さんの母親。専業主婦でありながら、第6回ベイキングオフ大会に出場し、優勝を果たしました。その後、イギリスの勲章MBEも授賞されています。

そのナディアさんが考案されたのが「コロネーション オバジーン(ナス)」。ナスの上にかかっているドレッシングは、ギリシャヨーグルトにカレー粉などが入っています。

コロネーションチキン
英国王室ゆかりの伝統料理、コロネーションチキン。Liudmyla Chuhunova/Shutterstock.com

カレー粉といえば、1953年のエリザベス2世女王の戴冠式の昼食会に、ル・コルドン・ブルーのロンドン校の校長ローズマリー・ヒュームさんが考案した特別メニュー「コロネーションチキン」が出されたことを思い出される方もいらっしゃるでしょうか。

カレーは、インドのスパイス。エリザベス2世女王の戴冠式当時、インドはイギリスの植民地でしたが、現在のイギリスの新首相スナク氏は、インド系イギリス人です。長いインドとの絆を意味するかのようですね。また、カレー粉が入っているお料理は、金色に見えることからも、コロネーションにふさわしいと言われているそうです。

以前は、チキンでしたが、今回はベジタリアンでも食べることができるように、野菜のナスが使用されています。

エビのタコス

そして、同じお皿に乗ったもう一品は、「グレッグ・ウォレスさんのエビのタコス パイナップルサルサ添え」です。グレッグさんは、もともとはコヴェントガーデンの八百屋を営んでいたそうですが、TVに出演し、人気料理研究家の一人となられた方で、ダイエットメニューがお得意だそうです。

今回のサルサソースも、塩分が少なくて済むように、スパイスで味付けすることを考案されました。

コロネーション オバジーン」も、「エビのタコス パイナップルサルサ添え」も、大変美味しく、多様性を意識した新しい時代の王室の在り方が伝わってくるようなお料理でした。

いちごとジンジャーのトライフル

いちごとジンジャーのトライフル

さて、徳野千鶴子先生に再現して頂いた3つ目のメニューは、「アダム・ハンドリングさんのいちごとジンジャーのトライフル」です。

アダムさんは、ミシュラン1つ星レストランのオーナー兼シェフで、お店を5店舗ほどオープンしている実力者。季節の果物いちごと、新国王がお好きなジンジャーの入ったトライフルを考案しました。

いちごとジンジャーのトライフル
一皿に取り分けて、みなさんでシェア。テーブルごとに話も弾みます。

ジンジャーは、「ヨークシャーパーキン」という「ジンジャーブレッド」のような生地に入っていて、それを荒く刻んで、トライフル容器の底に入れます。

その上に、いちごを使ったイチゴゼリーを乗せ、ジンジャーカスタード、生クリーム、ナッツを順に重ねていきます。

一見、シンプルなようですが、とても手の込んだ一品で、いちごとジンジャーが予想以上に合い、ナッツがアクセントとなった、とても美味しいデザートでした。

チャールズ3世のお気に入りのフルーツケーキ

フルーツケーキ

そして、こちらの「チャールズ3世のお気に入りのフルーツケーキ」も、徳野千鶴子先生に作っていただきました。

フルーツケーキは、チャールズ3世も大好きな、イギリスでは最もポピュラーで伝統的なお菓子。ラム酒に漬けたドライフルーツやナッツ、スパイスを入れ、焼いた後にブランデーを染み込ませて熟成させるため、保存の効くお菓子で、誕生日から結婚式、シムネルケーキ(復活祭などに供されるケーキ)などに作られています。

今回のレシピは紅茶メーカーのウィッタード社が戴冠式を記念して発表したもので、チャールズ3世のお好みのダージリンの紅茶に浸したドライフルーツを使い、焼きあがったケーキには、ドライフルーツを浸した紅茶の残りを染み込ませました。パーティーではご紹介の料理のほかに、スコーンやキッシュも楽しんでいただきました。

料理とともに3つのブランド紅茶もサーブ

ローズパーティー

紅茶も、コロネーション記念の紅茶や、チャールズ国王と縁の深い紅茶を用意させていただきました。

右から、ハロッズの「チャールズ3世コロネーション記念イングリッシュ・ブレイクファーストティー」、フォートナム&メイソンの「チャールズ3世コロネーション・オーガニック・ダージリンティー」、ハイグローヴの「オーガニック・アールグレイティー」。

ローズパーティー

レストランでは味わえない、特別なメニューを楽しませていただき、徳野千鶴子先生、誠にありがとうございました。また、イギリスから遠く離れた日本で、バラ満開の時期に、ご参加の皆様とチャールズ3世の戴冠式のお祝いができたことも大変嬉しく、また一つ素敵な思い出ができました。

Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。

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