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辻 仁成の"パリ・サラダ"|第三十一回"ババガヌーシュのディップサラダ"

  • 2023.6.17

フランスで大人気のディップのレシピです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。

辻 仁成の"パリ・サラダ"|第三十一回"ババガヌーシュのディップサラダ"

■アペロに欠かせないディップ

フランスのスーパーには、いわゆる「ディップ」ばかりを集めたコーナーが必ずある。フランスはアペロ大国なので、夕食時ともなると、まずは、軽く食前酒とつまむものが必要になる。そのつまむものの代表格のひとつが、「ディップ」だ。

とはいえ、様々なディップがあるので、ディップと一言で申しても、実に奥が深い。

日本でディップと言えば、バーニャカウダなどの名前があがるが、そういうディップではなく、丸い透明の容器に入った冷たいディップたち、たとえば、ギリシャおよびトルコのタラモサラタ、ザジキとか、メキシコのワカモーレ、フランスだったらタプナードかなぁ。

ともかく、その中でもダントツ人気なのが、今日ご紹介する「ババガヌーシュ」なのだけど、日本人にはなじみがない。

ひよこ豆をディップにした「フムス」をご存じの人は多いだろう。このフムスとババガヌーシュは、レバノンとか中東のディップなのだが、フランスのスーパーで、まず間違いなく、一番売れているのがこの二つなのである。

個人的には、ひよこ豆のフムスが一番好きなのだけど、ファラフェル・サラダの時に、ひよこ豆は使わせて頂いたので今日は、人気を二分するババガヌーシュ、つまり茄子のディップの方を一緒に作ってみたい。

ここで、ちょっと専門的な話になるが、同じようなディップでも、フランスで作られる「茄子のキャビア」というのがある。これ、ババガヌーシュと実によく似ている。キャビアというけれど、チョウザメの卵のキャビアのことではない。茄子の中の種がチョウザメのキャビアっぽく見えることから、皮肉屋の多いフランスでは「貧乏人のキャビア」と呼ばれており、庶民に愛されている。これも作り方はババガヌーシュと似ているが、茄子のキャビアの方がやや茄子感が残っているかなぁ(個人差、あり)。ババガヌーシュはソース風ディップだから、それだけを見ると、原形がまったく想像できない。

さて、ババガヌーシュはピュレ状になっているので、より繊細な食感である。さらに茄子のキャビアとの相違点は、ババガヌーシュにはタヒニ・ペースト(炒ってない胡麻のペースト)が入っていることであろう。つまり、これが決め手なのだ。話題のタヒニ!

辻家の冷蔵庫、開けると、必ず、ババガヌーシュかフムスのどちらかが入っている。焼いたバゲットの先につけ、ガブッと齧る。冷えたワインで、胃に流し込む、くー、たまらないねー。のんべえのぼくにはなくてはならない一品なのであった。

はい、では、早速、今日も、一緒に作ってみましょう。

□ババガヌーシュのディップサラダのつくり方

◇材料 (2人分)

茄子:3本(フランスの茄子は大きいので1本)
タヒニ:大さじ1
レモン:1/2個
クミンパウダー:ひとふり
にんにく:1片
塩:小さじ1/2
オリーブオイル:適量
コリアンダー:お好みで(飾り用)
松の実:お好みで(飾り用)


材料
材料

(1)茄子の下ごしらえ
茄子は縦半分に切り、身側に格子状に切り目を入れ、皮面を上にして、190度に予熱したオーブンで30分焼く。

(2)ピュレ状にする
茄子が焼けたら皮をむいてボウルに身だけを取り出し、潰したにんにく、タヒニ、レモンの搾り汁を入れて、ハンドブレンダーでピュレ状にする。

ピュレ状にする
ピュレ状にする
ピュレ状にする
ピュレ状にする

(3)仕上げる
クミンを加え、塩で味を調える。お皿に盛り、刻んだコリアンダーや松の実などをお好みでちらし、オリーブオイルを垂らしたら完成。

完成
完成

野菜をバトン状に切り、ディップをつけていただきます。
おお、最高!ボナペティ!

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac

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