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【SDGs A to Z: J (Japan) 】。日本人になじみのある伝統的工芸品、実は、SDGsなんです。

  • 2023.6.17

日本の工芸品に宿る、SDGsの精神。いま新たな活用をされていたり、進化を遂げていたりする工芸品とともに、日本の伝統文化、そして工芸品の魅力について考えてみよう。

〝持続可能性〞を秘めた未来に受け継ぎたい伝統。

長いものだと1000年以上は続いているという日本の伝統的工芸品。「実はSDGsと深いつながりがある」と、〈日本工芸〉の松澤斉之さんは言います。
「伝統的工芸品とは、古くから受け継がれた方法で、主に手作業で一定の地域の職人さんが製造する品。地元の素材を使う、ものを大切に長く使うといった考え方は日本に古くからあり、SDGsの多くの目標を体現しています。例えば大部分の工程が手作業であること。電気などのエネルギー消費はわずかで、手間ひまのかかる作業ゆえに余分な生産はできません。高品質で長期間使えるのは魅力ですし、壊れた場合は直して使い続けることが良しとされているため、とてもサステナブルなんです」

現在、経済産業大臣が指定する伝統的工芸品は全国に240品目。SDGsの目標達成のためにも、工芸品は残していきたい。
「安くて便利なものが消費者に重要視されている時代ですが、大量生産・消費の仕組みには限界があります。現代にも活きる大切な価値観を含んでいる伝統工芸品を、まずは手に取ってみてほしい。おすすめは、現地に出向き、工房を見学したり職人さんの話を聞いたりすること。そうすれば、より愛着がわきますよ」

Navigator 松澤斉之 日本工芸代表取締役社長

まつざわ・なりゆき/〈アマゾンジャパン〉Home部門のバイヤーに従事したのち、〈日本工芸〉を設立。日本の工芸品に特化したEC事業を手がける。

繊細な文様が美しい東京発の工芸品。江戸切子

ガラスの表面に文様を施した工芸品。江戸時代に始まり、明治時代にヨーロッパのカットグラス(切子)の技法を取り入れ、独自の工芸技法が確立した。凛とした輝きと細かい文様は、光の当たり方で印象がチェンジ。文様は日本古来の自然がモチーフで20種類ほど。東京都江東区、墨田区を中心に、現代の職人が技術を継承している。

いまはこんなものに活用!
文様を現代風にアレンジしたグラスは、飲料メーカーやアパレル企業とコラボレーション。

華やかさはNo.1!日本で最初に作られた磁器。有田焼

佐賀県有田町とその周辺地域で製造。多くは熊本県天草市から採掘される天然の陶石を原料とし、透明感のある白地に、美しい絵付けが施されていることが特徴。絵付けや発色、焼成など表現技法は様々で、伝統的な日本の美を器で表現した美術品として江戸時代から愛されている。幅広い価格帯なので、ちょっとした贈り物にぴったり。

いまはこんなものに活用!
有田焼の商品開発をする〈KIHARA〉では、破損した素焼きを再利用した加飾法で酒器に。

ある工房によって現代に蘇った“幻の工芸品”。萩ガラス

1859年に山口県萩市で始まり、一度は姿を消したものの、1992年設立の〈萩ガラス工房〉によって復刻。15年かけて、萩市内の笠山でのみ採掘される石英玄武岩(安山岩)を原石から精製し、最先端の技術と感性で再現した。国産ガラスといえば、ほとんどはオーストラリアの石を使用しているため、国内の石はめずらしいとか。

いまはこんなものに活用!
1,520℃の超高温度域で製作した丈夫な硬質ガラスは話題となり、県外の生活雑貨店でも販売。

見た目も実用性も抜群。別府のお土産の代名詞。別府竹細工

大分県別府市周辺に伝わり、『日本書紀』にも登場する工芸技術。別府市を中心に点在する良質なマダケを主原料とし、加工したものを高度な技術で細かく組み合わせて編み込む。使いやすいだけでなく、実用性の高い道具が多いため、長く使えるのはポイント。温泉街にある店には、籠やざる、箸、しゃもじなどの生活雑貨がある。

いまはこんなものに活用!
竹を編む技術をアレンジし、ランプシェードなど日用品の枠を超えた美術品も続々登場。

現代までに進化を遂げた人々の暮らしに寄り添う器。越前漆器

メガネの産地で有名な福井県鯖江の職人技。越前は漆を採集する職人「漆かき」が多く、自らが使用する器に良質な漆を塗り重ね、暮らしの漆器を製作。高品質で丈夫なことから、旅館や飲食店などで使われる「業務用漆器」の生産量日本一に。近年では業務用の食器洗浄機に対応するなど、現代の生活スタイルに合う漆器が数多く登場している。

いまはこんなものに活用!
漆塗りのツヤのある上品なデザインを活かした、ステンレスボトルや名刺入れ。

10軒の窯元で受け継ぐ幻の工芸産地。小鹿田焼

大分県日田市にある小さな集落「小鹿田(おんた)焼の里」で約300年間受け継がれてきた焼き物。近くにある山の土を原料に、川の流れを利用して砕き、ろくろは足で蹴って回すなど、全工程を手作業で行う。ほかの工芸品にはない、素朴さと力強さを秘めた焼き物は数々のメディアでも紹介され、都内でも購入できる店が急増中。

いまはこんなものに活用!
唯一無二のデザインから、大分市内はもちろん、全国の外資系ホテルの受付や洗面所に使用。

text : Moe Tokai

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