母が健康志向の我が家では、お肉は食べていたけれど、ポテトチップスや炭酸飲料、砂糖入りのシリアルのようなジャンクフードを食べることは一切なかった。それが私にはイヤで仕方がなかった。
大学に入り実家を出てようやく、好き放題に食べることができた。
大学1年生の頃はストレスを食べもので発散していた。野菜を食べることはなくなり、ハンバーガーにピザ、フライドポテト、デザートを毎日好きなだけ食べていた。中高生時代はスポーツをしていたけれど、大学では運動すらしなかった。
その1年間で、体重は約54kgから65kgに増えた。激太りではないものの、ずっと痩せ体形だった私は体重の増加に気付いていた。頭がぼんやりしたり、集中できなくなることも増えていった。
いずれは減量をする必要があるとは思っていたけれど、それで落ち込むこともなく、とくにダイエットもしなかった。
2年生の春に、コメディアンで公民権運動家のディック・グレゴリーが私の大学を訪れた。公民権運動の最中にベジタリアンになったというグレゴリーは、アフリカ系アメリカ人がジャンクフードやファストフードのターゲット層に設定されやすい理由や、低所得層のコミュニティでは健康的な食品が入手しづらい現実など、食品の政治的な問題について講演会で話した。
工場で飼育された牛が屠殺場へ運ばれ、ファストフードとなり、それを常食とする人々が動脈血栓や心臓発作を発症するまでの経路を辿る話に私は呆気に取られた。食べものについてこんなふうに考えたことなんてなかった。まさに捕虜のように感じた。ほぼ毎日ハンバーガーを食べていた当時の私は、これが自分自身に対してしていることなんだと気づき始めた。
ケニアに留学し、ついに我慢の限界が来た。彼らはある夕食でガゼルのような動物を連れてくると、目の前で丸焼きにし、長いテーブルの上で頭から蹄まで肉を切り裂いてお皿に取り分けた。嫌悪感でいっぱいだった。ヴィーガンになることをずっと考えてはいたけれど、この瞬間私は、もう動物を食べないと決心した。
2学期にアメリカに戻り、私はベジタリアンになった。母と姉のマーヤと私はベジタリアンを実現するために、ヴィーガニズムと健康的な食生活に関する本を手に入る限り読み尽くした。
そしてその夏、母と私は完全にヴィーガンになり、チーズも他の乳製品も動物性食品も一切食べるのをやめた。私はチーズが好きだったから、それだけが難しかった。今でもピザ屋に居座ってチーズの匂いを嗅いでいられるくらい好き。でも降参した。私のチーズ好きはこの先もずっと変わらない。でも、より健康でいるために私が手放すべきものだとわかったからやめられた。
今の私のヴィーガンの1日の食事はこんな感じ。
朝起きたら、まずは搾りたてのレモンウォーターをコップ一杯飲んだ後に、タンポポの若葉かウィートグラスで作ったグリーンドリンクを一杯。
朝食は、ベリー類、バナナ、ヘンプシード、またはフラックスシード、冷凍ほうれん草で作ったスムージーを飲み、少し時間が経った後で、刻んだクルミとリンゴを加えたオートミールを食べる。
昼食にはスープ、またはブラックビーンズ、アボカド、キャベツ、芽キャベツ、オリーブ、玉ねぎ、ニンニク、チェリートマト、ホットソースを混ぜ込んだラップを食べることが多い。付け合わせのケールサラダと一緒に。
夕食は基本的にピーマン、マッシュルーム、トウモロコシ、ニンジン、ブロッコリー、インゲン豆など、色鮮やかな季節野菜の炒めものに主食は黒米かキヌア。もしくは、豆、テンペ、または豆腐と刻んだアーモンドやカシューナッツを全粒粉のパスタにのせて食べる。
甘いものは罪悪感なく楽しんでいる。私はチョコレートが好きなので、ココナッツシュガーやメープルシロップで甘くしたヴィーガンチョコレートバーを週に2回ほど食べたり、チョコレートムースやチーズケーキタルト、バナナブレッドを作ることもある。
意識がぼんやりすることはなくなり、いつも頭がはっきり冴えている。活力のレベルも格段に上がった。ヴィーガンになってからは肌もずっとキレイ。14歳から悩まされていたニキビもすっかり消えた。
ヴィーガニズムをきっかけに、ヨガや瞑想も始めた。51歳の今の私は、大学に入って間もない頃の私よりも健康で強くいられている。
お肉とチーズのない生活に慣れさえすれば、ヴィーガンになることはそれほど難しくなかった。今ではその「移行期」を、自転車に乗ることを覚えたり新しい言語を習得する期間のようなものだと考えている。学習には時間がかかるもの。でも、その先にあるヴィーガンという食生活は至って簡単で、楽で自然なものになる。
ヴィーガンになって30年。元の食生活には二度と戻らない。
筆者のプロフィール:『Ageless Vegan:The Secret To Living A Long And Healthy Plant-Based Life and By Any Green Necessary』を著書に持つ「エイジレス・ヴィーガン」として有名な公衆栄養士のトレイサイ・マクキルター(51)。 ※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。Text: TRACYE MCQUIRTER AS TOLD TO COLLEEN DE BELLEFONDS Translation : Yukie Kawabata