四季折々の味わいや視覚的な美しさで季節感を表現する和菓子。そんな魅力的な和菓子にスポットを当ててご紹介する連載「今月のお菓子」。6月は梅雨時期をさわやかに彩る、鶴屋吉信の「紫陽花(あじさい)」をご紹介します。
雨露(あめつゆ)にキラキラ光る紫陽花を表現した、透明感のある羊羹
1803年創業の鶴屋吉信は、200年を超える伝統ある老舗の和菓子店。京都の「京菓子文化」を広く伝えながら、新しい価値観を取り入れたお菓子作りをしています。そんな鶴屋吉信から、今年も紫陽花がモチーフとなった意匠羊羹・工藝菓「紫陽花」が期間限定で販売。あっさりした上品な甘さが特徴の羊羹は、雨露にキラキラと光る紫陽花を表現した、透明感がなんともステキなお菓子です。
透き通る琥珀羹にかわいい花をあしらい、風味豊かな小倉羹と組合せた二層羊羹
お菓子を横から見てみるとこのように、寒天でできた「琥珀羹」と「小倉羹」の二層構造になっているのがわかります。小倉羹には、丹波大納言と北海道十勝産の2種類の小豆を使用。薄緑の部分にはアクセントにもなっている美しいラインが入っていて、どうやって作られているのかとても気になります。
そこで鶴屋吉信さんに、こちらのお菓子について聞いてみました。
――商品開発時に工夫した点や試行錯誤した点などありますか?
「全体のデザインは手作業でのスケッチから始め、実際に色紙を切り抜いて並べるなどして、紫陽花のお花が美しく見えるよう、サイズ感や形状を試行錯誤し突き詰めていきました。梅雨時期の降りしきる雨をあらわすため、琥珀羹と小倉羹の間に筋をつけた羊羹シートを挟み込んでいます。」
――お花と雨が引き立つように、羊羹シートを引くという手法が使われているのですね。
「琥珀羹を流し込み、そこに手作業で紫陽花の花を並べます。この工程で、奥行き感の表現、またバランスが悪くならないように、お花を慎重に入れていきます。そこへ再度、琥珀羹を流し固めたら、羊羹シートを敷き、炊き上げた小倉羹を流し込み冷やし固めます。仕上がりは涼やかながら、熱々の材料を流して固めて、何度も繰り返す根気のいる作業が苦労するポイントです。」
そんな根気がいる作業を繰り返し、ひと棹ひと棹、職人さんの手仕事によって作り出される世界観は、眺めているだけでうっとりしてしまいますね。
ジメジメした梅雨も美味しく楽しめる、美しいお菓子
「紫陽花」は緑茶はもちろん、コーヒーや紅茶にもぴったり。口の中でしっかりとした小豆の風味と琥珀羹のさわやかさが、ほどよく広がります。蒸し暑い季節は、少し冷やして楽しむのもオススメなのだそう。
今回ご紹介したお菓子は、鶴屋吉信の本店、直営店、各百貨店売り場、公式オンラインショップで6月30日まで販売中。季節商品につき、商品が無くなり次第販売終了となる場合もありますので、気になった方はお早めにチェックしてみてくださいね。
ジメジメした梅雨を、ステキな季節の和菓子とともに過ごしてみてはいかがでしょうか。