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お客様は本当に神様か? 「カスハラ」を犯罪心理学者が斬る

  • 2023.6.11
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店側に落ち度がないのに文句をつける、「土下座しろ」といった行き過ぎた要求をするなど、客の悪質なクレーム・嫌がらせが、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれて社会問題になっている。2022年2月には厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が発表され、社会全体がカスハラへの対処に力を入れている。

10年にわたってカスハラを研究してきた犯罪心理学者の桐生正幸さんが、2023年6月7日に『カスハラの犯罪心理学』(集英社インターナショナル)を上梓した。

カスハラはストーカーと似ている

桐生さんが「悪質なクレーム」についての講演依頼を受けたのは、2013年のことだった。当初は「なぜ犯罪心理学者の私に?」と不思議に思ったが、調べているうちにカスハラの実態を知り、「これは間違いなく新たな犯罪心理学の研究テーマだ」と確信したという。

カスハラには、ストーカーと似た加害者心理があると桐生さんは指摘する。常習性がある点、自分の正当性を主張する点、細かいことに粘着できるだけの時間やお金の余裕がある点などが類似している。さらに、法律が制定されるまでは被害者が泣き寝入りするしかなかったという経緯も似ている。

講演の後、桐生さんのもとには各企業の名刺交換の行列ができたという。切実な問題であることを実感し、以後、カスハラの本格的な研究に乗り出した。研究の中で、カスハラ加害者は「普通の人」だということや、攻撃のパターンは4タイプに分類でき、それぞれ対応の方法が異なることなどがわかってきた。

本書は単なるクレーム対策マニュアルではなく、カスハラの背景にある社会的・心理的な要因を分析し、対処法を検討している。コロナ禍以降ますます増えているというカスハラ。従業員を守るにはどうすればよいか、頭を悩ませている人々に、解決の糸口をもたらす1冊ではないだろうか。

【目次】
・序章 衝撃の実態
・第一章 キレる"お客様"たち
・第二章 カスハラの心理構造
・第三章 "お客様"の正体
・第四章 カスハラ対策の最前線
・第五章 カスハラ防止法案という希望
・終章 カスハラのない国へ

■桐生正幸さんプロフィール
きりう・まさゆき/山形県生まれ。東洋大学社会学部長、社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。日本カスタマーハラスメント対応協会理事。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。山形県警察の科学捜査研究所(科捜研)で主任研究官として犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)などがある。

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