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プール寝パパは残るが…わが子を放ったらかして公園のベンチでガチ寝するパパが消えた喜ばしい理由

  • 2023.6.9
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ここ10年で、子育てにおける男女のスタンスはどう変化したのだろうか。漫画家の田房永子さんは「10年前、公園に子どもを連れてきたパパが、ベンチで横になって寝ている姿をよく見かけたが、最近はほとんど見なくなった。これは、もっとみんなでお祝いして褒めたたえてもいいくらいの変化なのではないか」という――。

公園のブランコで一人で遊ぶ子ども
※写真はイメージです
“ベンチ寝パパ”がいる公園の情景

今から10年前、娘を連れて近所の公園に行くと、ベンチで横になりしっかり睡眠をとっているパパたちをたくさん見ました。

毎週末、遠方からも含め、さまざまな地域から訪れる家族連れであふれるその公園。ベンチで座ったままウトウト……ではなく、頭も足も完全にベンチの上に預けた状態で寝ているパパが1人や2人ではありませんでした。

もしママがそんなふうにベンチでガッツリ横になっていたら、「具合が悪いのかな?」と心配になるし、「大丈夫ですか?」と声をかけてしまう気がします。

しかしパパだと「疲れているのに子どもを公園に連れてきてえらいね、がんばってるね」というお疲れさまオーラが公園内に漂うのです。

小さい子たちを世話する親たちが座れなくても、限られたベンチを最大限に使用して寝ているパパを起こそうとする人は誰もいません。

分かりやすいジェンダーギャップ(男女の違いにより生じる差)だと感じていました。

“放ったらかしにされている子ども”を見守る

そんな“ベンチ寝パパ”がいると、無意識にそのパパの子が公園内のどこにいるのか把握し、安全を確認してしまう。そんな習性を、小さい子を持つ親の多くは持っています。

ベンチであおむけになって目を閉じて寝ているということは、今現在そのパパの子どもはどこかで1人で遊んでいる可能性があります。

公園内の多くのママたち(パパたちもかも)は、自分の子を世話しながら、見知らぬ“ベンチ寝パパ”を視界に入れながら、ベンチ寝パパの近くに来る子を把握し、その子がママやおじいちゃんおばあちゃんなど、別の付き添いの大人といるのか、を確認します。

ベンチ寝パパに放ったらかしにされている子は4~5歳くらいが主でした。

付き添いがおらずベンチ寝パパが1人で公園に連れてきている、と判明した場合、周りにいる親たちは、視界の隅でその子をマークして危険がないか確認しながら、自分の子どもを遊ばせるのです。

公園のベンチで寝るパパと、一人で遊ぶ子どもを注視するママたち
ママたちは無意識レベルでやっている

こうやって書くと、「そんなことしてるやつ本当にいるのか?」って思う人もいるかもしれないけど、ママたちはそれを自分でも気づかないレベルの無意識でやっています。

小さい子がいる母親(父親も)というのは、他人の子であろうが、子どもの安全に対してものすごい執着を発揮します。

ママ友と話しながら私が「あ、あの子ママといたね、よかった」とつぶやくと、ママ友も「そうそう、パパだけかと思ったよね」と返ってくる、そんな光景は毎度のことでした。

ベンチ寝パパに「今から寝るんで、うちの子見ていてもらえますか」と頼まれたわけでもない。自分でも、やらなきゃ! と思って努力しているわけじゃない。ただただ、そうやって“視界の隅で世話”をしてしまうのです。体が動いてしまう。

ベンチ寝パパよ、そこに、頼っていないかい……?

もしこの公園にママたちや他の子が誰もいなくて、サイコキラーピエロみたいな格好の人だけがいたら、そんなにしっかり目を閉じますか?

心のどこかで、「こんだけママたちパパたちがいるんだから、見ていてくれるだろう」って思ってますよねえ?

ほかの保護者に負担をかけているのに

どうしても眠くて、ベンチに座ったままつい船をこいでしまう、ならママもあります。でも後頭部もひざの裏も踵もベンチに乗せるのって、睡眠への意欲がすごい。

「あのう、ちゃんと起きてご自分の子を見てください」なんて知らない男性に言うつもりはない。それよりその人の子どもを視界に入れておくほうがまあ、ラクだから。

だけどぽかぽか陽気の空の下、気持ちよく寝ている時、他のママやパパたちが動体視力を駆使してあなたの子どもがけがしたりいなくなったりしないように見張っている。それだけは知っていてほしい。

というのはベンチ寝パパに対して、いつも思っていました。

他人の子を視界に入れておくくらい、いいじゃないの、って意見もあると思います。でも核家族、核社会が極まっている今、自分の子は自分で見る、が完全デフォルト。だからそうしない人が他の人に負担をかけることになってしまう。そういう土台の上でみんな子育てをしている時代です。

だから「無意識保育」の負担を他の保護者に発生させないよう、これまた意識的にも無意識にも保護者同士で気を配り合っている、というのが現実。

赤ちゃんを抱っこするパパたち

娘が5歳になった時、息子が生まれました。

その頃には、抱っこひもで赤ちゃんを抱き1人で歩いているパパをたくさん見かけるようになって、驚きました。

その前は、1人で赤ちゃんを抱っこひもで自分の体にくっつけて歩いている男性は珍しかったです。そして「イクメン」も、10年前は常に賛否両論を背負った状態でメディアで見る言葉でした。でもいま、さっぱり見ないですよね。

“ベンチ寝パパ”が消えていた

そして、あくまで私の個人的な印象ではありますが、ここ数年は、公園に連れてきた子どもを放ったらかして、自分はベンチでガッツリ寝始めるパパなんて見なくなりました。パパたちも全員、しっかり子どもの隣に寄り添って、安全を見張りながら遊びのサポートをしています。

本当に変わった……‼ とひそかに感動してしまう。

ちょっと前までは「イクメン」とわざわざ呼んでみたりしないと、パパが育児に“参加”することの違和感とのバランスがとれなかったのに、今はそんな言葉すら廃れている。私たち育児世代が子どもの頃は、「お父さんは家事育児をしなくて当たり前」な世の中だった。

そんな親世代を見てきたから仕方ないことだけど、男たちの間で「ママと同じくらい一生懸命に子どもの世話をするのはなんだか気恥ずかしい」という感覚があったんじゃないかと思います。

でも近年、徐々に「それって変じゃないか? それじゃやっていけないよね?」と思う心に従って、一人ひとりが変化した結果、社会全体が「男も母親と同じレベルで父親として子どもの世話にガッツリ向き合っていいんだ」という目覚めに到達した、そんな感じがすごくします。

女たちの訴えが山を動かした、とも言えるし、男たちが素直になったとも。

これはものすごい上達だと思うし、もっともっと、みんなでお祝いしてもいいくらいのことだと思います。褒めたたえたい。

そう考えると、あの「ベンチ寝パパ」がたくさんいた光景は「男の照れ隠し」の要素も大いにあったのかもしれない、と思ったりもするのでした。

“プール寝パパ”に知ってほしいこと

そして公園ベンチ寝パパはすっかり見なくなった令和時代ですが、遊園地などのプールに行くと、地面で水着姿で大の字で寝ているパパをたくさん見るのです。

炎天下、タオルを体にかけているとかでもなく、海パン一丁で地面にドーンと大の字になり、いびきをかいて寝ているパパたち。これまた1人や2人ではありません。

水着姿で大の字で寝ているママはいない。うーん、ジェンダーギャップ。

プールサイドで大の字で寝ているパパ

プールの場合は、付き添いがいない子どもは水に入ることが許されていないところが多く、子どもだけで遊んでいると監視員に注意されます。

だから私はプールでは、大の字パパがいても、その子がどこにいるかはあまり気になりません。監視員が見てくれてるし、さすがに1人でプールに連れてきて子ども放ったらかしで寝るパパはいないだろう、と思っているからです。

時代が変わっても、すかさず寝るパパたち、男という性。

寝パパ達よ、寝るな、という話ではない。

ただ「自分が平気であれば海パンから何かが見えそうな状態であっても人前で大の字になりしっかりした睡眠をとることが“許されやすい”性別であり、もう片方の性別はそれができない・することを許されていない。そういう空気がまだまだ令和にもある」という意識はできたら持っていてほしい。

そんな願望が私にはあります。

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家
1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。

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