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【プロが解説】葉焼けの原因を解説! 誤解の多い植物の置き場所を正しく理解しよう

  • 2023.6.8

夏は直射日光に当てると葉焼けするから、日当たりを好む観葉植物でも必ず遮光しなければならないと考えていませんか? また、暗い場所に置いてある植物を日光不足解消のため、日なたで日光浴させていませんか? それはどちらも誤った認識や行動です! ネット情報などの影響からか、特に初心者に広まっているようです。植物を育てるのに大切な“葉焼けの知識”について、園芸のプロが解説します。

よい株姿を維持するには?

植物と日光
Fauzio/Shutterstock.com

暗い場所で育て続けていると、徒長気味に伸び、葉も小さく少なくなってしまった株を見かけます。例えば、サンセベリアも長期間日陰に置くと葉が細長くなり、自立できないほど軟弱になってしまいます。日当たりのよい屋外に出せない場合は仕方がありませんが、この原因の多くは、遮光を勧めるネット記事等を参考にしたケースも多くあるようです。筆者のまわりでも、そのような実例をよく見られるようになってきました。

観葉植物をよい状態に保つには、むやみに遮光したり、日陰に置いたりせず、葉焼けを起こさない範囲で可能な限り日光に当てて育てることが大切です。正しく日が当たっていれば、葉が大きく密についてコンパクトに引き締まった株姿になり、葉色なども鮮明になります。

葉焼けを起こさない範囲を把握するために、まずは、葉焼けが起きる原因について解説します。

葉焼けがおきる原因

葉焼け
Aryari/Shutterstock.com

葉焼けする直接の原因としては、葉面温度の上昇によります。人間に例えると「火傷(やけど)」のようなものです。

光の強さだけが葉焼けをおこす原因と考えることが多いようですが、それは誤った認識です。葉焼けは光の強さだけでなく、気温や風などの要因、水不足などのストレスによっても影響を受けて発生します。

<葉焼けを起こす5つの原因>
  1. 光の強さ
  2. 気温
  3. ストレス(水不足他)
  4. 急な移動

強い光と気温が葉面温度の上昇に関連するのはイメージしやすいと思います。

風に関しては、適度な風が当たれば葉面温度が気温以上に上昇するのが抑えられます。一方、無風状態で強い光が当たると、葉面温度は気温以上に激しく上昇を続け、結果的に葉焼けします。

他の原因として、水不足になると葉焼けを防ぐ植物内の働きが衰えるため、葉焼けする可能性が高くなります。また暗い場所から急に移動すると、葉焼けを防ぐ働きがないために葉焼けします。

葉焼けの実例

夏の屋外の日向では葉焼けしない植物も、閉め切った室内の日向では、すべて葉焼けします。このように建物の内外だけでも条件が全く変わります。

また屋外でも立地条件や地域によって風の当たり具合や気温も異なるので、同じ地域内で海沿いの日向では葉焼けしなくても、数キロ離れた内陸部では葉焼けすることがあります。

庭の中でも気温や風通しが大きく異なり、コンクリートの近くに置いた植物は葉焼けしても、周りが開けた高い場所に置いた植物は問題ないこともあります。

このように葉焼けはさまざまな要因に大きく左右されておこるので、同じ場所でも少しの条件等の差で結果が全く異なることが多いです。

コーヒー栽培の例
コーヒー栽培
Felipe Zerbini/Shutterstock.com

熱帯の山の平均気温20℃くらいの涼しい高原地帯では、日向でコーヒーの木が葉焼けせずに栽培できます。一方、山のふもとの平均気温30℃近くの地域では、遮光しないと葉焼けします。同じ光線の強さでも高原地帯が葉焼けしない理由は、標高が高いため気温が低く、山で風通しもよいため葉面温度が上昇しないからです。

ちなみに日本でも30℃近い気温は珍しくないため、日向では葉焼けします。コーヒーの名産地は夏でも涼しい高原地帯が多く、日光をいっぱい受けて育つことで質のよいコーヒー豆になります。

西日に注意
葉焼け
Lertwit Sasipreyajun/Shutterstock.com

夜に冷えた気温は、太陽光により徐々に温められて温度が上がります。そのため日の出から時間が経過した午後のほうが気温が高くなるため、葉焼けは午後のほうが発生しやすくなります。また特に午後に風がない日は、強い西日に当たると葉焼けする可能性が高くなるので注意してください。

室内の置き場所

家の中での置き場所の実例と注意点などを解説します。

不在時の閉め切った、日光がよく当たる室内
温度
SUNG YOON JO/Shutterstock.com

気温が上がった晴れの日は、無風状態の室内はさらに非常な高温になり、植物の置き場所として適しません。特に夏の不在時の閉め切った室内の日向は、植物の葉面温度が50~60℃、またはそれ以上の高温になることも多いです。夏の晴れた日の車のダッシュボードを連想してもよいかと思います。外気の流入がなく、無風で空気が停滞しているため、異常に温度が上がります。このような場所に植物を置けば、すぐにひどく葉焼けするどころか、枯れてしまいます。高温すぎて通常の生物が生存できない環境ともいえます。

閉め切った室内の日向を基準にすると、すべての植物は遮光下に置くことになりますが、これが多くの観葉植物を夏に遮光下に置く誤った認識の根拠になっているかもしれません。

晴れの日に温度が上昇しやすい5~10月くらいの間は、閉め切った室内の日の当たる場所に植物を置くのは避けてください。期間はあくまで目安で、建物の立地条件や材質、地域などによって1~2カ月前後します。

風通しのよい、またはエアコンの効いた日光がよく当たる場所

常に窓を全開にしてよく風が入っている室内の日当たりでは、日光を好む種類の観葉植物は夏でも葉焼けしません。外気が盛んに流入することにより、株の周辺も異常な温度上昇が起きないのが理由です。ただし、風がなく気温が35℃以上まで上昇する猛暑の天気では、葉焼けする可能性が高いです。

エアコンで冷房を強めに作動すれば、冷風の流れができて葉面温度が上がらず葉焼けしないでしょう。オフィスや店舗などの窓際なども該当します。ただし休日などでエアコンを作動させないと葉焼けするので、注意してください。また、エアコンの風が直接当たる送風口のそばなどは避けましょう。

サーキュレーターを使用するだけでも、空気が循環して葉焼けする可能性がさらに低くなります。

朝だけ日光が当たる場所、カーテン越しの明るい日陰
観葉植物
metamorworks/Shutterstock.com

昼に家を不在にする人が春から秋に日当たりを好む観葉植物を室内で育てる場合、東向きの窓辺などで朝だけ日光が当たる場所か、カーテン越しの日光が当たる場所が適します。カーテンは、春と秋はレースのカーテン、夏はやや薄いカーテンを使用するのがおおよその目安になります。

また直射日光を嫌う植物も、カーテン越しの光が当たる明るい場所で育てると株姿が引き締まります。

冬の日向

気温が低いため、最も葉焼けしにくい季節です。日光を好む種類は、窓越しの日光が当たる場所に置いてください。明るい日陰で育てる植物も、日向に置いて葉焼けしない可能性が高いです。生育が止まる冬でも日光に当てるようにすると丈夫に育ちます。また、アンスリウムやスパティフィラムなど花を楽しむ種類は、日光にできるだけ当てるようにすると花がよく咲きます。ただし暖房がよく効いた部屋では葉焼けしやすいので注意してください。また窓の近くは温度が下がりやすいので、アンスリウムなど寒さに弱い種類は、冷え込みが厳しい夜間は室内の中央付近に移動するなど保温に注意してください。

※他の保温方法として、夜間段ボールなどをかぶせる、厚手のカーテンを引く(効果弱)、暖房器具を夜間もつけるなどがあります。また雪が降るような日は昼も冷え込みが厳しいので、保温に注意したほうがよいでしょう。

屋外の置き場所

日向
観葉植物
Amovitania/Shutterstock.com

日光を好む観葉植物は、春から秋は屋外の風通しのよい日向で育てるのが理想的です。節間が詰まって葉が多くなり、株姿が引き締まって本来の魅力が引き立ちます。またクロトンやコルディリネなどのカラーリーフの植物は、日光によく当てることで色も鮮明になります。

照り返しに注意

コンクリートの上に鉢を直接置かないでください。コンクリートが熱を持ち、照り返しによる高温で小型の植物は深刻な葉焼けになりやすいです。台の上に置くなど、風通しのよい場所に置くとよいでしょう。

午前中だけ日光が当たる半日陰
薄葉系クロトン‘アケボノ’
薄葉系クロトン‘アケボノ’。Jazziel/Shutterstock.com

夏の猛暑時は日光を好む種類でも、風通しの悪い場所や暑さの厳しい地域では葉焼けすることが多くなります。温暖化が進行し夏の暑さが厳しくなっている日本では、内陸部や盆地のような地域、住宅や建物の密集した地域は特に注意してください。夏は建物の東側など、あらかじめ午前中だけ日光が当たる半日陰に置くと安心です。該当する置き場がない場合は、遮光率30~50%の遮光ネットを張ってください。

また斑入りの品種や、クロトン、コルディリネの葉の薄い品種は葉焼けしやすいので、同様に半日陰に置くとよいでしょう。

夏に乾燥が激しく日なたで水やりが大変な場合は、半日陰に移動すると水やりの手間や水切れによる失敗が少なくなります。

ベランダ環境の場合

観葉植物
Nataly Reinch/Shutterstock.com

日光を好む種類は、できるだけベランダに出して育てるとよいでしょう。ただし立地などによって風通しが悪かったり、暑さの厳しい地域や場所、壁や床からの照り返しが強い場合は、葉焼けすることがあるので注意してください。葉焼けする場合は、家庭用のサンシェードや遮光ネットを張るなどの対策をしてください。

近隣のベランダと比較して、一見環境が同じに感じても、葉焼けが発生する可能性が変わることがあります。

急な移動は葉焼けの原因に

日光を好む種類でも、暗い場所で適応した株を急に強い直射日光に当てると葉焼けします。また買ってきたばかりの植物も日陰に適応している場合が多いので、注意してください。

日向に移動する場合は、1カ月くらいかけて、葉焼けしにくい朝の直射日光から徐々に慣らすようにしてください。ただし暑さの厳しい時期は、直射日光に当てるのは午前中だけにしたほうが安心です。

よくある失敗 日光浴に注意

観葉植物
Beatriz Dominguez Gracia/Shutterstock.com

暗い場所に置いてある植物を、日光不足解消のために日光浴を勧める記事があるようなので注意してください。暗い日陰から明るい日陰への移動ならよいですが、直射日光が当たる場所への急な移動は厳禁です。

日当たりを好む観葉植物

以下の植物は、戸外の風通しのよい日向で育てるのが理想的です。ただし、斑が多く入った品種などは葉焼けしやすいので注意してください。

クロトン(厚葉系)/コルディリネ(厚葉系)/ストレリチア/ユッカ/サンセベリア/パキラ/シェフレラ/フィカスの仲間(ベンジャミン、ゴムの木、ガジュマル、アルテシマ、ウンベラータ他)/ドラセナ(コンシンネ、ソングオブインディア他)

植物に必要な「光」の正しい知識を身につけて丈夫に育てよう!

観葉植物
New Africa/Shutterstock.com

葉が密に付き、引き締まった株姿を保つには、可能な限り日光に当てて育てることが大切です。立地や地域などさまざまな条件で葉焼けのリスクが変わるので、近隣の様子を観察したり、情報交換するのもよいかもしれません。葉焼けについて正しく理解して、トラブルなく素敵な観葉植物を育ててください。

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