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新居購入前の確認不足が招く大後悔…一級建築士が教える「絶対に選んではいけない間取り」の代表格4つ

  • 2023.6.5
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念願の新居を手に入れたのに後悔する人は何がいけなかったのか。1級建築士のしかまのりこさんは「購入・賃貸を問わず住まいを選ぶ上での重要なポイントはいくつかあるが、その中でも快適な住まいに『間取り』選びは欠かせない。あとで後悔する人は間取り選びに失敗していることが多い」という――。

間取り図と、タブレット端末にはシミュレーション画像
※写真はイメージです
新居購入前の確認不足が招く大後悔

購入・賃貸を問わず住まいを選ぶ上での重要なポイントはいくつかありますが、その中でも快適な住まいに「間取り」選びは欠かせません。ご予算や家族構成に合わせて、ある程度選択肢を絞ることは可能ですが、お子さまの成長に伴うライフスタイルの変化や、将来理想とするライフプランなどまで考え始めると、どの「間取り」が良いのか、悩む方は多いのです。

そこで今回は、当事務所にご相談にこられたお客様の「後悔した間取り」をご紹介するとともに、物件を選ぶ・建てる際のポイントや考え方、失敗間取りの解決方法などをご紹介したいと思います。

収納が少ないと新居がたちまち汚部屋に

「圧倒的に収納が少なかった」(東京都 40代男性 会社員)

後悔をした間取りの中で、最も多いのが収納に関するものです。「部屋が片づかない」「モノが散らかりやすい」とご相談に来られる方の多くが、収納の少ない間取りにお住まいです。ではなぜ、収納の少ない間取りを選んでしまうのでしょうか。それは、間取りを選ぶ際には、お部屋の広さを優先してしまい、収納のことを後回しにしてしまいがちだからです。

たとえば図表1の間取りのように、LD(リビングダイニング)が10畳と表記された部屋は、広く魅力的に感じます。しかし図表2の間取りのように、収納はあってもLDが9.5畳だと、少し狭く感じませんか?

収納のない間取り・収納のある間取り

この2つの間取りの全体の広さは、実はまったく同じなのですが、図表2の間取りは収納があるせいで0.5畳ほどLDが狭くなってしまうのです。そのため、少しでも広いお部屋に住みたい場合は、「収納家具は後で置けばいいから」と広さを優先して、収納のない間取りを選んでしまいがちなのです。

あとから収納家具を置く場合は地震対策も必要に

しかし、収納スペースはどのような部屋にも必要ですので、広く感じる10畳の間取りを選んでも、収納家具を後から購入して置くことで、部屋の広さは9.5畳程度になってしまうということを認識することが大切です。

また、図表3のようにあとから収納家具を置く場合と、図表4のようにはじめから収納がある場合では、後者の方が圧倒的に収納量は多くなります。その他にも、あとから収納家具を置く場合は、壁に固定するなどの対策をしないと地震時に凶器になりやすく、安全性にも差が出てきます。

後から収納家具を置く場合と、初めから収納がある場合

このような理由から、住まいを選ぶ際は「収納がある間取り」を最優先にしたいものです。すでに収納の少ない間取りに住んでいる場合の解決方法としては、収納付きダイニングテーブルや収納付きベッド、収納付きソファなど、収納機能が付いた家具を選定して、収納を増やすことが大切です。

リビング階段や吹き抜けは光熱費が莫大

「モデルルームで一目ぼれしたリビング階段。しかし、光熱費が……」(茨城県 30代男性 会社員)

【画像1】モデルルームで一目ぼれしたリビング階段。
【画像1】モデルルームで一目ぼれしたリビング階段。

「光熱費が思っていた以上にかかる」と後悔する間取りで多いものが、吹き抜けやリビング階段のある間取りです。リビング階段とは、リビングの中に階段をつくった間取り(上画像)で、開放感があり2階への廊下スペースを省略できるなどのメリットもあります。吹き抜けやリビング階段は、天井が抜けているので開放感はあるのですが、それだけに大きな気積(室内の空気の総量)が生まれるので、余計に光熱費がかかります。

たとえば、こちらの戸建住宅(図表5)では、リビングダイニングの隅にリビング階段が配置されています。1階LDKは21畳、2階吹き抜け部分が2畳、それに隣接して2階フリールームが5.5畳、廊下2畳となっており、これらすべて空間は、壁のないリビング階段でつながっています。

リビング階段のある間取り
どうしても開放感を重視したい場合は…

つまり1階LDK21畳の冷暖房には、1階LDK21畳+2階吹き抜け・フリールーム・廊下の合計9.5畳=30.5畳の冷暖房を行わなければならないということになり、およそ1部屋分にあたる「9.5畳」もの光熱費が余計にかかることになるのです。とくに燃料費が高騰し、光熱費が倍になっている昨今では、切実な問題ですね。

どうしても開放感のあるリビング階段や吹き抜けを作りたい場合は、壁や床、基礎、天井または屋根に断熱材をたっぷり入れて、家全体の断熱性能を高めた高断熱住宅にすることがお勧めです。家を高断熱にすると、熱の出入りを減らしてくれるため、リビング階段や吹き抜けがある大空間でも、少しのエネルギーで冷暖房が効きやすくなり、光熱費の削減が可能になります。

梁や下がり天井が多くモデルルームより狭い

「梁はりがたくさんあり圧迫感があって、モデルルームと違った」(東京都 40代男性 自営業)

マンションのモデルルームに行くと、デザイン性にも機能性にも優れた素敵な住まいに、購入意欲をかき立てられてしまいますよね。しかし、ここで気を付けたいのが、購入した間取りがモデルルームのイメージと違った間取りになってしまうことです。モデルルームでは家具を置いても広々として見えたのに、購入した間取りは狭く感じるとご相談に来られる方も多くいらっしゃいます。

モデルルームは天井が高く、また広々と見える部屋を選び再現していますが、マンションの設計上、全ての部屋がそうではありません。下がり天井(天井の一部が他よりも低くなっている)や梁がたくさん出ている部屋もあります。この下がり天井や梁があると、部分的に天井が低くなるため、2段ベッドや本棚など、背丈のある家具を置く場合はとくに障害になってきます。

そういったトラブルを防ぐためにも、モデルルームのイメージとは別に、実際に購入する部屋がどのようなイメージなのか、間取り図面から情報を読み取り、あらかじめ想像することが大切になります。図表6のマンション間取り図は、点線がたくさん書かれていますね。この点線は下がり天井や梁を表現しています。

間取り図に描かれた点線

つまり、点線表記の部分の天井の高さは、周囲より低いということです。また「CH=2,200」との記載は、下がり天井や梁の部分の高さが「床から2.2m」ということを表現しています。さらに図面下の方、LDとベランダの間付近に点線が4本引かれている箇所がありますが、これは各階ごとの梁の位置を表しています。例えば1番上の点線は、2~7階はこの位置に梁が出ることを意味しているのです。

購入前に必ず図面の数字をチェック

では、もし2階の間取りをあなたが購入すると仮定すると、下がり天井や梁は、実際にどうなると思いますか? 図面からイメージしてみてください。正解は、図表7のようになります。青で記載した部分の天井高が2.2m、オレンジで記載した部分の天井高が2.35mとなり、2.6mである各部屋の天井高さよりも、25~40cmほど低いということです。

間取り図に描かれた点線を読む

正しくイメージできましたか? もし図面を読むことが難しい場合は、販売業者に下がり天井や梁の位置、他の天井と比較してどのくらい低くなるのか、詳しく教えてもらいましょう。このように間取り図には下がり天井や梁をはじめ、天井の照明や火災時の報知機など、重要な情報が書かれていますので、住まいを購入する際は図面をよく読んで、間取りをあらかじめイメージをすることが大切です。

また、すでに圧迫感のある間取りに住んでいる場合の解決策としては、なるべく家具の数を減らし部屋に余白部分をつくると同時に、部屋の対角に、高さのある細身の観葉植物などを置いてみましょう。観葉植物に視線が集まることで、下がり天井などの圧迫感から意識をそらす効果があります。

設計図からはわからない扉位置のミス

「リビングに入るとき、キッチンが丸見えになってしまう」(埼玉県 50代女性 会社員)

国民的マンガ『ドラえもん』に登場する「どこでもドア」のように、「扉」は部屋と部屋をつなぐ重要なツールです。しかし、「扉」をつける位置を間違ってしまうと、入居後に後悔することになります。例えば図表8の間取りですが、廊下からLDに入るときにキッチンが丸見えになってしまいます。ご相談者は、家の設計時にはこのような状態になっているとはわからず、入居して初めて「キッチン丸見え問題」に気づいたようです。同じ間取りでも、図表9のように扉の位置を少し変えるだけで、「キッチン丸見え問題」は解決されます。

扉の位置は結構重要

このように、扉の位置は思っている以上に住まいの設計の上で重要なポイントになります。とくに、あまり人に見られたくないキッチンやオープンクローゼット、パントリーなどは、直接視界に入らないように扉の位置に注意してください。間取り図からイメージできない場合は、設計者や施工者に直接疑問点や不安点を聞いてみるのもよいでしょう。

扉1つでリビングからトイレまでが5mも近くなる

また「扉」は位置も大切ですが、その数も重要です。たとえば図表10の間取りでは、キッチンからトイレに行くのに片道12mも歩かなくてはいけません。隣接するユーティリティー(洗濯室)を通った図表11の間取りの場合でも、片道8.6mも歩きます。

扉は位置も重要だが、その数も重要

しかしキッチンと廊下の間に扉をつければ、キッチンからトイレへの距離は片道2.5mと縮まります(図表12参照)。その他、階段や玄関へも近くなり、大変便利な間取りに変わります。もちろん扉の価格は8万~20万円程度と決してお安くはありませんが、この扉が1つあるかないかで、暮らしやすさが劇的に変わります。

扉1枚で暮らしやすさが劇的に変わる

「扉」は後からつけることは、構造的に困難な場合が多いものです。そのため、新築やリノベーションをする際は、計画段階から「扉」の位置や数にこだわってみてください。

人気の間取りにもデメリットあり

最後に、購入してから後悔した間取りの中で、賛否両論のある少数意見もご紹介いたします。

オープンキッチン

圧倒的な人気で、いまでは当たり前になった「オープンキッチン」。文字通り、キッチンとリビングダイニングが壁で隔てられない間取りを指します。しかし、壁がないため「収納が少ない」「換気扇を回しても、臭いがリビングダイニングまで漏れやすい」「キッチンからリビングダイニングまで、汚れが広がる」など、デメリットを感じる方も一定数いるようです。

和室
和室

不意の来客用、または仏間として「和室」をつくる方は多いです。しかし、和室を当初の計画通り来客用として使用しているご家庭は少なく、「子ども部屋にすればよかった」「メンテナンスのラクなフローリングにすればよかった」「隣接するリビングダイニングと統一感がなく、中途半端な空間」と後悔する方もいるようです。

暮らしを快適にしてくれる間取りですが、よくよく検討しないとあとで後悔することに。住み替えをお考えの方は、一度、家族のライフスタイルに合った間取りについて検討してみることをお勧めいたします。

しかま のりこ
「COLLINO一級建築士事務所」主宰、一級建築士
300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えを行い、模様替えのスペシャリストとしてTVや雑誌でも活躍。近著に『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)がある。

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