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時代はローメンテナンスガーデンへ! 環境に優しく手間いらずな庭づくり

  • 2023.6.2

青々とした芝生の庭は美しいですが、その反面、日々の芝刈りなど手のかかるガーデンスタイルでもあります。これからの時代に注目したいのは、ローメンテナンスガーデン! 管理の手間が少なく、節水や生物多様性の向上にもつながる今、注目されるガーデンスタイルです。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、ローメンテナンスガーデンと、手がかからないおすすめの植物をご紹介します。

人気で美しいけれど手のかかる芝生の庭

芝生の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Niemela, Brigitte

一年中、常にガーデンを観賞に耐えるきれいな姿に保つのは簡単なことではありません。ガーデニングで人気の芝生の庭は、中でも常に手入れを必要とするスタイル。夏は雑草対策や芝刈り、追肥など、毎週管理が必要ですし、冬は常緑性でなければ茶色くなってしまいます。

手のかかる芝生ですが、やはり魅力も大きく、芝生の庭を愛する人が多いドイツでは、金曜日の午後や土曜日に芝刈りをしている人の姿がとてもよく見られます。なぜ金曜日の午後かというと、多くの人が金曜日は午前中だけ働いて、そのあとはリラクゼーションとしてガーデニングを楽しんでいるため。というわけで、週末になると、どこからか芝刈り機の大きな音が聞こえてきます。もっとも、日曜日は大きな音を出すことが控えられているため、この日に芝刈りをする人はほとんどいません。じつはドイツでは、日曜日や祝日は、法律によって騒音を出すことが禁じられているのです。

芝刈り機
Alex_Traksel/Shutterstock.com

ちなみにドイツでは、芝刈りには自動のロボット芝刈り機がよく使われます。地面にワイヤーを張って芝刈りの範囲を認識させるというもので、全自動で芝を刈ってくれるので、芝生は常に短くよく管理された状態を保つことができます。エンジントラブルやワイヤーが抜けてしまうなどの問題が発生することもありますが、便利に使える庭道具の一つです。しかしながら、このロボット芝刈り機が動いているときは、庭景色に集中できないことも。以前、近所の方に午後のコーヒーブレイクに招かれたときに、唸り声をあげながら庭を動き回っているロボット芝刈り機が気になって仕方ありませんでした。せめて美しい芝生と美味しいケーキとコーヒーを楽しんでいる間は動かさないでほしいとお願いしたものです。

セキレイ
Chamois huntress/Shutterstock.com

さて、このロボット芝刈り機が動いているときは、その横にセキレイがくっついて歩き、芝刈り機に驚いて飛び出してきた虫を捕まえているというちょっと面白い光景が見られます。鳥にとってはごちそうの機会、賢いですね。私がこうした光景を見たことがあるのはセキレイのみ。セキレイは、ガーデンでよく見かける鳥で、さほど人間を怖がらないようです。

意外と時間のかかる芝刈り作業

私は芝刈りを、ガソリンを燃料に使う芝刈り機で行っています。夏の間、60㎡ほどのスペースを毎週芝刈りするのは、なかなか手のかかる作業。芝刈り自体はさほどでもないのですが、面倒なのは芝を刈った後の芝刈り機の手入れ。一日の終わりの仕事として、まだ明るい夕方6時か7時くらいに芝刈りをスタートすることが多いのですが、作業後は刈られた芝生まみれになるので、一刻も早く体を洗いたくなります。かなり時間も取られる作業です。

こうして刈った芝は、イボタノキの茂みの下にマルチングしています。ここにはカタツムリも潜んでいますよ。彼らにとっては天国のような環境で、夜は菜園のサラダ菜をかじろうと狙っていることでしょう。天気がいいときは、刈った芝を乾かして宿根草ボーダーガーデンのマルチとして利用することもあります。乾燥させることで、芝に潜んでいる病気の影響を少なくすることができます。

芝生のリニューアルのすすめ

ガーデン
芝生の一部にヘーベなどローメンテナンスな植物を植栽。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

綺麗だけれど手のかかる芝生の庭。ガーデンデザインを考え直すのは難しいことですが、芝生の庭を変えることで水が節約でき、管理の手間が減ることで余暇の時間も生まれることを考えると、芝生エリアを減らすことを考えてみてもいいかもしれませんね。他の草花を植えれば、生物多様性も向上して日々の庭にダイナミックな変化をもたらしてくれます。ガーデナーを雇っているような庭では、芝生の雑草取りなどの作業が減れば、数週間おきに同じ作業を何度も何度もしてもらう必要がなくなり、コスト削減にもつながります。

ドイツで私が暮らす地域でも、近隣の方々は少なくとも200㎡ほどの芝生の庭を持っています。手入れの行き届いた芝生の庭は彼らの自慢なので、もし私がローメンテナンスガーデンにしてしまえばいいのに、なんて言おうものなら喧々諤々の議論の果てに、もうあまりいいお隣さんとは見てくれなくなってしまうかもしれませんね!

ドイツだけでなく、個人の庭はとてもセンシティブな話題です。日本でも、庭主さんにもっとエコで生物多様性に寄与するガーデンにすべき、と強制したら、トラブルのもとになりそうです。ですから、どんな庭を目指すかは庭主さんの自由。その選択肢の一つとして、ローメンテナンスガーデンについても検討すべき時代になってきたのかもしれません。

ローメンテナンスガーデンとは

ローメンテナンスガーデンとは、基本的に最小限の手入れで済むガーデンや花壇のこと。もちろん、まったくの放任という訳にはいきませんが、従来のガーデンと比べればぐっと作業を減らすことができます。

メンテナンスの手間を減らすには、宿根草花壇のほか、ペイビングしたスペース、ウッドデッキ、グラベルガーデンなどの植栽を減らせるエリアを取り入れることが、大きな助けになります。また、芝生をなくせば、芝刈り機の保管スペースも不要になります。

ローメンテナンスガーデンにおすすめの植物

ローメンテナンスガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

ローメンテナンスガーデンに向く植物は、まずはその庭の環境に合ったもの。日向、半日陰、日陰などにより変わってきます。環境に合った植物は、手をかけなくても丈夫に成長してくれます。そのうえで、植え替えの手間がなく何年も成長し、茂みを作ってくれる低木と、常緑の植物の組み合わせがおすすめ。グラウンドカバーのチョイスも大切です。季節の一年草は極力控えめにするか、ミックスシードを使うとよいでしょう。土壌は水はけのよい土づくりを心がけます。

ヘーベ
葉色が豊富なヘーベ。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

私がおすすめの低木は、チョウを呼んでガーデンシネマを上映してくれるブッドレアや、ニュージーランド原産のヘーベ。60cmほどに成長するヘーベは、多様で美しい葉色が魅力です。日当たりがよく、温度が下がらない場所で育てるとよいでしょう。

宿根草ならラベンダーや多様な種類があるサルビア、アキレア、ベンケイソウ、アリウムなど。クナウティアやシレネ、バーバスカムなどはこぼれ種でもよく増え、翌年もいろいろなところで顔を出してくれるタイプです。増えた分は間引いたり移植してもいいですし、そのまま育ててどんな形になるか試してみてもいいかもしれません。こうした植栽は思いもよらない変化を生んでくれます。エキナセア・シムラータやリアトリス、トウワタ、ペンステモン、コレオプシス、ヘメロカリスなどもローメンテナンスで育つ宿根草です。シルバーリーフと組み合わせるなら、春ならクロッカス・トマシニアヌス、チューリップ・プライスタンス、ムスカリなどがおすすめ。季節が進めば、ガウラやキキョウも使いやすい花です。

ラベンダー
グラベルガーデンにラベンダーを取り入れて。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

数年前からのブームは、オージープランツを使った玄関前のちょっとした植栽です。特に種類豊富でさまざまな葉色や形があるユーカリは大人気。ほかに、赤いブラシのような花が印象的なカリステモン・シトリヌス(ブラシノキ)もよく見かけます。鳥や虫にも嬉しい木です。一見するとローズマリーに似たウェストリンギア・フルティコサは、私のイチオシの植物の一つ。花は優しい紫色で、夏の間中咲き、丈夫でよく育ち、アレンジに少し切って使うなど切り花としても活用できます。エレモフィラ・ニベアは常緑のシルバーリーフが魅力。グレヴィリア・ジュニペリナも人気があります。

ガーデンのフェンスなどにアイビーやアメリカヅタ、つるアジサイといったつる植物を絡ませるのもいいですね。

管理の手間を減らすマルチング

マルチング
Lijuan Guo/Shutterstock.com

マルチングは、バークチップや砂利、枯れ草、わらなどを使って地面を覆うこと。マルチングには雑草の繁茂や土壌の乾燥を防ぐ効果があり、水やりや草取りの手間を減らすことができます。また、むき出しの地面が見えているよりもガーデンの雰囲気をアップすることができますよ。外壁の色に合わせたマルチング材を使ったり、反対にコントラストを演出したりもできます。ニュージーランドでガーデニングをしたときは、エンドウマメの枯れ草を使って宿根草ボーダーやローズガーデンをマルチングしました。その地域で育つ植物をマルチング材として利用するのもアイデアですね。ドイツでは、宿根草ボーダーではバークチップを庭の小道に使い、乾燥させた芝を花壇の中に使っていました。芝ではなく、メドウ風のワイルドフラワーガーデンを芝生のように利用した庭は、しばしば育ちすぎ、手で刈るしかなかったものです。

ローメンテナンスで地植えのテストもできる大鉢ガーデニング

ガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

大鉢にローメンテナンスな植物を組み合わせて植え、その栽培に慣れるのもいいですね。このデメリットは、鉢植えは定期的に水やりが必要なこと。ローメンテナンスの利点は少し薄れてしまいますが、こうした植物の扱いに慣れるにはいい方法です。

例えば大鉢でワイルドフラワーメドウを育ててみてはいかがでしょうか。園芸店で販売されているミックスシードには、自然や昆虫にとってプラスの効果がしっかり説明されたフラワーミックスもいくつかあります。特によく見るのが、ミツバチのためのワイルドフラワーミックスと、バタフライガーデン向きのフラワーミックス。ドイツではこうしたミックスシードのバリエーションが豊富で、多くの場合、含まれている種子の品種ごとの正確な割合やその利点がパッケージに記載されています。種苗会社によっては、特定の地域で栽培しやすい植物の種子を集めた地域密着型のミックスシードを販売していることも。こうしたバリエーションがあることで、土壌の状態や顧客の好みに対応することができるのです。

大鉢のほうが管理はラクですが、バルコニーに少しだけスペースがあるなら、小さめの鉢を取り入れてみましょう。基本的に鉢が小さくなるほど、こまめな手入れが必要です。

ローメンテナンスガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

ローメンテナンスガーデンに興味があるなら、まずはガーデンのちょっとしたスペースで、乾燥に強い植物を育ててみてはいかがでしょうか。もし扱いに慣れて気に入ったなら、そのエリアを拡大していくのもおすすめです。

なにも完璧に整ったガーデンをつくらなくてもいいのです。野生の生き物たちの棲み処になるようなスペースを残してあげるのもよいでしょう。こうしたエリアがあれば、いままでのガーデニングスタイルとは異なるガーデンを楽しむこともできますよ。

Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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