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「旅行積立」2年で72万円→74万円はトクなのか…プロが考える"じわじわ上がる旅行費用"を賢く準備する方法

  • 2023.5.31
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宿泊費が上昇している。賢く旅行費用を準備する方法はないか。経済エコノミストの大江英樹さんは「お盆や年末などのシーズンを外すことが大きな節約になるが、どうしても休みをずらせない場合は旅行積立という選択肢がある」という――。

旅行資金の貯金
※写真はイメージです
じわじわ上がる旅行費用をどう準備するか

コロナ禍も落ち着いてきて、旅行に出かける人が増えました。今年のゴールデンウイークはおよそ30万人が海外に出たと言いますから昨年の7倍ぐらいになります。国内に目を向けると移動した人の数はさらに多くJR各社によればゴールデンウイークの期間の新幹線や在来線特急などの利用者は1100万人といいます。ほぼコロナ前の日常に戻りつつあると言っても良いでしょう。

一方で交通費はともかく宿泊費はかなり価格が上がってきています。私も仕事柄、年中地方出張していますが、もはやビジネスホテルでも1万円以下で泊まれるところはまれになってきました。人件費と物価の上昇は確実にこういうところに表れています。そんな旅行をするにあたって、その費用を計画的に準備する方法として「旅行積立」があります。これは場合によっては有利に使えることもありますので、考えてみたいと思います。

旅行積立の利回りは高い

そもそも「旅行積立」とはどういうものかというと、名前の示す通り、旅行資金を積み立てる制度です。旅行会社や航空会社が扱っていて、積立でお金を払い込むと(一時払いもありますが)満期になった時に「サービス額」という、言わば利息のようなものを上乗せして旅行券として渡すというのがその仕組みです。百貨店の「友の会」の積み立てと似たようなものと考えれば良いでしょう。

実はこのサービス額を利息として考えると、これは案外高い利回りになります。例えばある旅行会社の場合、2年間積み立てると3%のサービス額が上乗せされます。例えば毎月3万円ずつ2年間積み立てると累計額は72万円です。これに3%が付きますから2万1600円が上乗せされて合計金額は74万1600円となります。

2年間で3%付くのなら年利に直すと1.5%かと思いがちですが、実はそうではないのです。これは積立てた場合の利回り計算なので、ちょっと複雑ですがIRR(内部収益率)という考え方で計算する必要があります。細かい計算方法は説明しませんが、上記の条件で積み立てた場合、その利回りは年利2.87%となります。

これはかなり高い利回りと考えて良いでしょう。銀行の定期預金ではメガバンクの場合0.002%でさらにこの利息には税金がかかりますが、旅行積立は預金ではないため、サービス額に税金はかかりません。したがって、実際に旅行をするために積み立てるのであれば、預金で積み立てるよりも「旅行積立」を使った方が良いでしょう。

注意しておくべきこと

ただし、旅行積立をするにあたっては注意しておくべきことがあります。それは以下のような点です。

(1)受け取るのはお金ではなく旅行券

積み立てが終了した場合に受け取れるのは現金ではありません。あくまでも旅行券ですから旅行をしなければ何の意味もありません。資産運用の手段ではなく、あくまでも旅行の準備に目的は限定されます。さらに積み立てをやっていたけれど、旅行に行く計画が無くなったので途中で積み立てをやめて解約する場合も現金は戻ってきません。この場合も旅行券で戻されます。したがって、本当に旅行するつもりがあるかどうかを慎重に考えた方が良いでしょう。

スーツケースにかけた手には、パスポートに挟んだ航空券が見える
※写真はイメージです
(2)預金保険制度の対象外

さきほど、預金に比べて利回りがかなり高いということを言いました。ただ、前述したようにこれは預金ではありませんから、万が一旅行会社が破綻した場合は銀行の場合と違って公的な機関によって保証されることはありません。まあ、そういうケースはめったにないと思いますが一応、知っておいた方が良いと思います。

(3)自社商品しか使えない

旅行会社で積み立てるわけですから、受け取れるのはその旅行会社でしか使うことができない旅行券ということになります。したがって、自分が行きたい旅のプランが必ずしもあるかどうかはわかりません。仮にあったとしても積立終了後には無くなっているかもしれません。したがって、できるだけ選択肢の多い会社での利用を考えた方が良いでしょう。

「旅行積立」以上に有利な旅の作戦

このように注意点はあるものの、計画的に旅行を考えているのであれば、旅行積立は大いに利用価値があると思います。ただ、実際には旅行積立以上に有利に旅行できる方法はあります。最も有利な方法は、ごくシンプルな話で、時期の選択です。

航空券の価格を見ると連休や夏休みと普通の時とでは2倍くらい違うこともあります。旅行積立で増やせる数万円程度とは比較にならないくらいその差は大きいのです。さらに出発日によっても一日違うだけで10万円も違うケースがあります。これは格安航空券の場合も同じで、私は以前ニューヨークに遊びに行った時に格安航空券で12月の初めに行ったところ、往復5万円強で行けました。ところが11月だと倍ぐらいの値段だったのです。

混雑した空港、手荷物検査場には行列ができている
※写真はイメージです

価格の違う主な要因は需給だと思いますが、夏と冬といった季節でもまったく価格が違います。例えばヨーロッパなどではどうしても気候の良い夏に行きたいという人が多いため、夏はかなり高くなります。「冬は寒いから嫌だ」というのはその通りですが、実はそういう季節に行ってこそ、観光客が少なく、現地の人の生活や空気感が味わえるというメリットだってあります。

最近では夏休みといっても必ずしもお盆の時期だけではなく、会社によっては6月~9月までの時期でフレキシブルに取れるという場合もあるようですから、できるだけ繁忙期を避ける工夫をした方が良いでしょう。

「旅行積立」は利用前に各社の比較を

ただ自由業や定年退職した人であればともかく、会社員として働いている人であれば、どうしてもGWやお盆などでなければ休みが取れないということもあるでしょうから、そうした場合は「旅行積立」は大いに利用する価値があると思います。先ほど予定が変わって旅行に行けなくなる場合の話をしましたが、お盆や正月のような時期であれば、病気にでもならない限り、予定を動かすことはないでしょうから、日程も読めます。

また、そういう時期は旅行会社にとっても書き入れ時ですから、提供するプランの種類も普段よりは多くなっている可能性があります。そういった事情を考えた場合、計画的に旅行をする場合には「旅行積立」の利用価値は大いにあると思います。ただ、会社によって条件や利用方法は異なるようですから、利用する前には各社の内容を比較した方が良いでしょう。

この数年間、なかなか旅行に行けなかった人が多かったと思いますが、さまざまな工夫をして旅行を楽しみたいところです。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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