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「50歳をすぎたら"節約"をする必要はない」お金を貯めるためにストレスを溜めている人の残念な人生

  • 2023.5.28

世の中には節約情報があふれている。経済コラムニストの大江英樹さんは「50歳くらいになると節約をする必要はない。節約はストレスが溜まる上に、『こんなに頑張った』という自己満足が強くなり家計の無駄を見えなくしがちだからだ」という――。

※本稿は、大江英樹『50歳からやってはいけないお金のこと』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

貯金箱
※写真はイメージです
50代からは節約なんかする必要はない

収入のコントロールは難しいが、支出のコントロールは比較的容易にできます。本稿では、具体的な支出のコントロールの方法についてお話をしたいと思います。

支出のコントロールという話になるといつも出てくるのが「節約」とか「倹約」という話です。でも私は、ある程度の年齢、具体的に言えば50代ぐらいからは、節約なんかする必要はないと思っています。それよりももっと適切に支出のコントロールができる方法があるのです。その具体的な考え方について見ていきます。

なぜ世の中には「節約指南本」があふれかえっているのか

節約というのはいつの時代も、家計の見直しという話題になると必ず取り上げられます。また、雑誌などを見ても「節約術」というのは一定の周期で特集として取り上げられるようですし、書店にも多くの「節約指南本」が並べられていることからも、節約が多くの人に関心を持たれていることがわかります。これは一体どうしてなのでしょう。

最大の理由は、恐らく世の中で働く人の9割がサラリーマンだからでしょう。すなわち一定の給料で生活している人たちがほとんどだからです。

一般的に自営業やフリーランスの人に比べてサラリーマンの収入は安定しているものの、逆に言うと、自分で給料を増やすことができません。給料を決めるのは上司や人事部ですから、頑張れば昇給の可能性はあるものの、自分でコントロールできるものではないからです。

収入を増やすことができないのであれば、支出を減らすのは当然のなりゆきです。そこで、どうやって無駄をなくすか、あるいはどうやって節約するかという話になってくるのです。

ところが、後ほど詳しくお話ししますが、節約するのと無駄をなくすのとは全く意味が違います。そのあたりが深く考えられないままに、節約することだけが取り上げられているのは、正直言ってあまりいい傾向ではないと思っています。なぜなら、世の中で一般的に取り上げられている節約というのは実はあまり意味がないものが多いからです。

意味のない節約が多すぎる!

節約指南本にも出てくる誰もがよく知っている節約は、風呂の残り湯を再利用しようとか、家の電気をこまめに消そう、あるいは、使わない電気器具のコンセントを抜いておこうといったものです。たしかにそれでいくらかの節約にはなるでしょう。でも、家計全体から見れば本当に微々たるものです。

例えば大阪市水道局のデータによれば、風呂の残り湯を180リットルとして、半分の90リットルを洗濯・掃除・散水などに使った場合、月に489円の節約になるということです。2020年の一般勤労世帯における月間の支出総額は約36万円ですから、その金額の割合は0.13%にしかなりません。

電気代にしても、エアコンや蛍光灯の電源をこまめに入れたり消したりする方がむしろ電気代がかかるということも言われています。それに、その手間と労力というコストもかかっています。せいぜい月に500円程度なら、毎日会社帰りにコンビニへ寄るのをやめた方がよほど効果が大きいと思います。

エアコン
※写真はイメージです

ただ、水道代にしても電気代にしても、「こんなに頑張って節約しているんだ」という精神的な効果はあるでしょう。企業でもありがちです。不況で業績が悪化してくると「コピーは裏紙を使え」だの「トイレットペーパーはダブルではなくシングルにしろ」といったことが社内で言われます。これも実は支出の削減にはほとんど何の効果もありません。ただ、社員の意識を高めるというそれだけの効果でやっているのです。企業がちゃんとコストを下げようと思うのなら、本来であれば製造コストの引き下げや業務プロセスの合理化を進めることが不可欠です。ところがこれらは時間もかかりますし、すぐに成果が見えません。そこで「コピーは裏紙!」というわかりやすい指示になるのです。これではコスト削減を真剣に考えているとは言えません。家庭の電気代や水道代も同様です。

節約をするとストレスが溜まる

それに、私があまり節約を勧めないのは、それをすることでストレスが溜まるからです。

先ほど、節約と無駄をなくすことは違うと言いましたが、何が違うかと言うと、「ストレスが溜まるかどうか」です。節約というのは欲しいもの、やりたいことでも我慢することになりがちです。例えば週1回家族で行っていた外食を月1回にするというのは楽しみが減りますし、欲しい洋服があって買いたくてもそれを我慢するというのはとても残念な気持ちになります。

これが若い時代であればそれもいいでしょう。何かの目的を達成するためにお金を貯めるという目標を立て、そのためにいろいろなことを我慢するというのはやってもいいと思います。しかしながら、年齢も50代になってきてやりたいことを我慢するというのは、どことなく寂しい気持ちになってしまいます。

精神論は「家計の中の無駄」を見えなくさせる

それに、単に節約をすることには、寂しい気持ちになる以外にもっと大きな弊害があります。それは「無駄な支出」を冷静に見つめることができなくなることです。

大江英樹『50歳からやってはいけないお金のこと』(PHPビジネス新書)
大江英樹『50歳からやってはいけないお金のこと』(PHPビジネス新書)

前述したような「風呂の残り湯を使う」「電気をこまめに消す」作戦には、たしかに「こんなに頑張っているのだ!」という精神的な効果はあります。でもそれは単に気持ちの上だけで、ほとんど実効性はありません。にもかかわらず、そんな精神論のみで節約をしていたら、それだけで「こんなに頑張っている私」に満足してしまい、本当に大事な「無駄をなくす」ということに思いが至らなくなってしまいます。結果として、努力した割には支出が一向に減らないという結果になりがちです。数字は正直です。

「無駄をなくす」というのは、日頃気がついていないけど、あまり意味のない支出をなくすということです。それらの多くは「固定費」として日常生活の中に埋没してしまっています。具体的には、無駄な保険、使っていないサービス、意味もなく払い続けている会費といった項目がそれにあたります。

効果が高く、生活感に変化のない方法を

意識していない固定費は、節約と違って、なくしても全くストレスを感じることがありません。何しろそれまで意識していなかったわけですから、なくなっても寂しさも感じなければ、残念な気持ちにもならないからです。

例えば、携帯電話のオプションプランというものがあります。携帯電話を契約する時に「いつでも解約できますから」と言われてそのままつけてしまっているプランもたくさんあると思います。でも、実際にはほとんど使わないサービスであることが多いでしょう。

よく、大手キャリアではなく格安スマホに変えるべきだということも言われます。それは全くそのとおりでしょうし、自分で事業をしているのでなければ変えてもほとんど影響はないと思います。しかし、そもそも契約を変更すること自体を面倒に感じる人も多いでしょう。であるなら、現状のスマホのままでいいので、少なくとも不要なオプションプランを解約する(これはスマホ上で簡単にできます)だけでも月額1万円以上違ってくることがあります。私もガラケーからスマホに変えた時、契約時についていたオプションプランを翌日に全て解約しました。料金を合計してみると月額で1万3000円にもなりました。

スマートフォン
※写真はイメージです

このように、支出のコントロールというのは精神論ではなく、合理的な判断に基づいておこなわれるべきものだと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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