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石田ひかりさん「お弁当づくりは私の意地だった」 母親歴20年とこれから

  • 2023.5.27

俳優の石田ひかりさんは、プライベートでは母親となって20年。2人の娘は成長し、子育てもひと区切りがついたところだそう。音声でコンテンツを配信するサービス「Amazonオーディブル(Audible)」で、小説『百年の子』の朗読を担当するなど新しい挑戦も続ける石田さんに、俳優業と子育ての両立や、年齢を重ねることへの思いなどを伺いました。

子育てと仕事の両立は「これが私の精いっぱい」

――石田さんは、2人の娘さんを持つ母親でもいらっしゃいます。仕事と子育ての両立はどのようにしてきたのですか。

石田ひかりさん(以下、石田): 春に下の子が高校を卒業し、大学に入学したので、これでようやく子育てもひと区切りついたところです。でも、子育てと仕事の両立は、結局できていないんです。

仕事で家を空けることも多かったので。せめて私が子どもたちにしてあげられることは何だろうと考えて、思い浮かんだのが「お弁当」でした。それで娘たちが幼稚園から高校を卒業するまでの16年間、平日の朝にお弁当をつくることだけは続けました。

撮影で朝4時に家を出なければいけない日でも、3時に起きてお弁当をつくりました。子どもたちが食べるのは数時間後。「お昼になっても、このお弁当はおいしく食べてもらえるのだろうか……」と自問自答しながら(笑)。もう私の意地といいますか、愛情の押し付けだったかもしれないですけどね。でも、お弁当づくりだけは継続できたことで、今は「できることをやった! これが私の精いっぱいだ!」と思えています。そういう子育ての達成感を教えてくれた娘たちには、感謝しています。

朝日新聞telling,(テリング)

多忙の20代、「玄関で寝ていたことも……」

――20代、独身だった頃の働き方と、今の働き方はどんなふうに違いますか。

石田: 時代が違うので単純には比較できないのですが、あの頃と今では、働き方はまったく違いますね。特に連続テレビ小説『ひらり』、『あすなろ白書』の主演を演じさせていただいた頃は、本当に忙しかったです。家には寝に帰るだけで、あまりに疲れて靴を履いたまま玄関で寝ていたこともありました。

夜中に家に帰ってテレビをつけたら映画が放送されていて、そのオープニングを見ながら寝入り、起きたらまだ映画の本編の途中だった、なんてこともありました。2時間も寝ていないのか、と思いながらまた仕事に出かける。そういう日々を共に過ごした仲間がいますから、当時の共演者と集まると「あの頃はすごかったよね」「今はもう、あんな働き方はできないね」と思い出話で盛り上がりますね。

最近は自分が年齢を重ねて働き方が変わっただけではなく、撮影現場のさまざまな場面で働き方が変わってきていることを実感します。今後も良いほうに変化していくといいなと思っています。

朝日新聞telling,(テリング)

人生100年ならあと50年。何をしようかと楽しみ

――telling,世代の読者の中には「年齢を重ねることが不安」「自分の人生の先が見えなくて怖い」という人もいます。

石田: これだけ激動の時代で、働き方も生き方もさまざまですから、先が見えない不安は誰しもが持っているものではないでしょうか。私も不安はありますよ。ちゃんと健康でいないとなぁーとか。

コロナ禍も大きかったと思うんです。この3年間、私たちの暮らしにはずっと不安の影がありましたよね。思い通りに暮らせない時間が長かった分、これからは、あの期間に学んだことを良い方向に生かしたり、失った時間を取り戻したりしていかなきゃ。最近、修学旅行の子どもたちが駅で列をつくって並んでいるのを見るだけで、なんだか涙が出てくるんですよ。ああ、ようやく修学旅行に行けるようになったんだな、と思って。みんな、それぞれの暮らしの中でこの3年間、つらい思いに耐えなければいけない時間があった。それでも失った分は、取り戻していけばいいんです、これからの時間で。不安があっても、先が見えなくてもきっと大丈夫ですよ。

――石田さんは今月51歳になられました。今、ご自身が年齢を重ねていくことについては、どのように考えていらっしゃいますか。

石田: 最近すごく考えるんですけど、人生100年だとすると、あと50年あるんですよ。私はたまたまこの節目で、ちょうど子育てにもひと区切りがついたところ。それでもまだ50年あるんだと思ったら、「さて、何をしよう」とこれからが楽しみになってきたんです。解放感と、未来にワクワクする気持ちを今は味わっています。

だから、私に年齢を重ねていくことの不安はあまりないんです。自分が変わっていくことも楽しみ。顔にシミがあったら、それは私が娘たちと公園で真っ黒になるまで遊んできた証しですし、シワが刻まれていたら、それはもう私の人生そのものだと誇らしく思えるんです。

朝日新聞telling,(テリング)

みなさんも年齢のことで悩んだり、変わっていくことに不安を感じたりするかもしれませんが、今のあなたは、世界にひとつしかない尊い作品です。あなたの人生がつくりあげてきた、あなたという作品。

私も欠点やコンプレックスはあります。でも、それも含めて「私」なんですよね。これから私がどんどん変わっていったとしても、それでいいと思える。だから歳を重ねるのは、すごく楽しいことですよ。

■塚田智恵美のプロフィール
ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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