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【初夏の庭】緑豊かなシェードガーデンづくりにおすすめの植物

  • 2023.5.20

庭を素敵にしたいけれど、我が家は日当たりが悪くて……と庭づくりを諦めていませんか? 日当たりがよくない場所であっても、日陰や半日陰で育つ植物を上手に選べば、緑豊かな一角になります。神奈川県で小さな庭づくりを楽しむガーデン愛好家の前田満見さんの庭では、午前中しか日の当たらない半日陰の場所があります。北東にある庭の入り口は、狭いながらも日陰を好む植物たちの緑豊かなシェードガーデン。華やかさはありませんが、みずみずしい緑に囲まれた心安らぐ空間です。今回は、そんなシェードガーデンの葉物や草花を前田さんに教えていただきます。

豊かな葉物でみずみずしく

ギボウシ

日陰や半日陰は、何となく暗くてジメジメしたイメージですが、直射日光を好まない植物たちにとっては天国。なかでも、カラーリーフなどの葉物は生き生きと育ちます。

その代表格がホスタ。日本原産のギボウシが欧米で品種改良されたものです。斑入りや青灰系、黄緑系など、色彩や模様のバリエーションに富み、ホスタだけでもシェードガーデンができると言っても過言ではないほど数多くの品種があります。しかも、もともとは日本原産なので、日本の風土にもよく馴染みます。

ギボウシ
左/青灰系のホスタ‘エルニーニョ’。右/黄緑系のホスタ‘ゴールデンティアラ’。

もちろん、わが家の北東のシェードガーデンにも5種類のホスタを植えています。濃い緑系の‘フランシー’、青灰系の‘ハルション’と‘エルニーニョ’。黄緑系の小葉が愛らしい‘ゴールデンティアラ’。名前を忘れてしまいましたが、白い斑入りのホスタは鉢植えに。

ギボウシ

なるべく色味が重ならないようにセレクトしているので、緑のグラデーションだけでも十分見栄えします。放射状にふわっと開く葉の形状も優雅で、夏には、ユリ科らしい薄紫色の花を幾つも立ち上げ、花のない日陰の庭に涼しげな彩りを添えてくれます。まさに、シェードガーデンの主役です。

シェードガーデン
壺の左下付近に茂る丸い葉がツワブキ。その右、写真中央でふわふわと小さな葉を四方に伸ばすのがクジャクシダ。右のフェンス沿いに生える青灰色の葉がコンテリクラマゴケ。

そんなホスタの脇役が、ツワブキやシダ類、ヒューケラです。ツワブキは、白い斑入りの‘ウキグモニシキ’。清涼感のある丸葉が美しい品種です。常緑で一年中みずみずしい葉色を保ってくれるのも嬉しいところ。昔から日本人に親しまれてきたツワブキは、落ち着いた和の風情がありシェードガーデンに似合いますね。

ニシキシダ
ニシキシダ‘ゴースト’

シダ類は、枝分かれした葉の形状が孔雀の尾羽のように華やかなクジャクシダと、褐色の葉軸とシルバーリーフのコントラストが目を引く ニシキシダ‘ゴースト’。

そして、青灰色の葉が魅力的な コンテリクラマゴケの3品種。それぞれが個性的ですが、なかでもコンテリクラマゴケは、シダ類としては珍しい這性で、極日陰の方が青灰色が冴えて光沢感が増し、数少ない日陰のグラウンドカバーに最適です。

シェードガーデン

また、這性を生かして試しにハンギング仕立てにしてみたところ、青白い光を纏って枝垂れる様子があまりに神秘的で見惚れてしまいました。日陰のハンギングとしても活用できるなんて、何とも嬉しい限りです。

ヒューケラ‘トパーズ・ジャズ’
鉢植えにしたヒューケラ‘トパーズ・ジャズ’。

そして、ヒューケラ(ツボサンゴ)は、ハニーゴールドからオリーブグリーンに変化する‘トパーズ・ジャズ’。明るい葉色とレモンイエローの小花が、シェドーガーデンに華やかさを添えてくれる大好きな品種です。ヒューケラは、何故が地植えにすると消えてしまうので鉢植えで育てていますが、気軽にレイアウトを変えて楽しめるので意外と重宝しています。

シェードガーデン

バリエーション豊かな葉物は、丈夫で手間いらず。その組み合わせ考える楽しさと、ほぼ一年を通して変わらない瑞々しさは、花にも劣らない魅力があります。

特に、強い陽射しが照りつける夏は、目にも涼しく癒やされます。

つる性植物で壁面に緑を

シェードガーデン

シェードガーデンをできるだけ明るく見せるために、カラーリーフのつる性植物も欠かせない一つ。わが家では、ブドウ科のヨーロッパブドウ‘プルプレア’と黄金ノブドウを庭の入り口付近に、ヘンリーヅタとアメリカヅタをガーデンシェッドの壁面に誘引しています。

シェードガーデン
壁面のアクセントとして、一年草のロフォスをハンギングに。暑さや水切れに強く、ハンギングに最適です。

ヨーロッパブドウ‘プルプレア’は、シルバーリーフがクールでお洒落。黄金ノブドウは、名前の通り輝くような黄金葉が魅力です。この2種類を庭の入り口付近の木製フェンスに誘引し、その足元にホスタとヒューケラの鉢植えを置いています。扉を開けると目に飛び込んでくるカラーリーフのハーモニーが、わが家のウェルカムリーフ。メインガーデンへと静かに誘います。

ヘンリーヅタ

そして、ヘンリーヅタとアメリカヅタは、どちらも端正な葉の造形が魅力です。ひと株でガーデンシェッドの壁面を覆ってしまうほど生育旺盛で、植えてから2年ほどで殺風景な壁面に緑の装飾を施してくれました。特にヘンリーヅタが絡まるガーデンシェッドの窓辺が一変。

ヘンリーヅタ

外見はもちろんのこと、内見の仄暗さに浮かぶヘンリーヅタは、まるで絵画のようです。春の褐色の葉から秋の紅葉まで様々な表情を見せてくれるので、季節ごとに窓辺を飾る楽しみもできました。

ヘンリーヅタ

そんな「絵になる景色」が、今ではシェードガーデンの見所の一つに。つる性植物のデザイン力、やっぱり素晴らしいですね!

白い花が誘う庭の入り口

夏のシェードガーデン
ジギタリスとシノグロッサムが咲く夏のシェードガーデン。

葉物の緑が中心のシェードガーデンですが、半日陰で育つ白い花を挿し色に植えています。何故なら、日向より白色が際立ちより一層緑が瑞々しく見えるから。

バイカオウレンとユキザサ
春咲くバイカオウレン(左)とユキザサ。

春はバイカオウレンとユキザサの山野草。初夏はジキタリスとシノグロッサム、秋はホトトギスが彩ります。緑に包まれて咲く白い花々は、とても静かな佇まい。目にするだけで心が安らぎます。

クレマチス

そして、庭の入り口の扉には、初夏になるとつるバラとスタージャスミン、クレマチスの白い花が咲き乱れ、シェドーガーデンが一気に華やぎます。つるバラは一重咲きの‘キフツゲート’、クレマチスはフロリダ系の‘白万重’です。

一重咲きのつるバラ‘キフツゲート’
一重咲きのつるバラ‘キフツゲート’。

‘キフツゲート’は、とても樹勢が強く暴れん坊。冬には強剪定して何とか樹勢を抑えていますが、毎年、可憐な花をたくさん咲かせてくれます。

白い星形の極小花が降り注ぐように咲くスタージャスミンは、心が洗われるような愛らしさ。満開時は、息を飲む美しさに圧倒されます。更に、艶のある常緑の葉も、一年中緑を保ってくれるありがたい存在です。

スタージャスミン、‘キフツゲート’、‘白万重’
上から、スタージャスミン、‘キフツゲート’、‘白万重’が混ざり咲く格子戸。

クレマチス ‘白万重’は、ライムグリーンとクリーム色の八重咲きが品良く、何処となく和の風情も。咲き始めから終わりまで様々な表情を見せてくれる大好きなクレマチスです。クレマチスもつるバラも、日当たりを好む植物ですが、幸いにもこの2種類は、半日陰のこの場所を気に入ってくれたようです。

ニワナナカマド
低木のチンシバイ(ニワナナカマド)。

さらに、スタージャスミンの側に、低木のチンシバイもふわりと寄り添います。数え切れないほどの白梅に似た小花、真珠のようなつぼみの何と清楚で可愛らしいこと。明るい黄緑色の切り込み葉と相まって、清々しい景色を醸し出しています。

シェードガーデン

シェードガーデンの白い花々の競演は、これからが見頃。甘い香りのつるバラ‘キフツゲート’と‘スタージャスミン’が、とっておきのブレンド香を振りまいて庭へと誘います。

Credit
写真&文 / 前田満見

まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。

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