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考察『ペンディングトレイン』4話。弱さを見せる優斗(赤楚衛二)、髪を切る直哉(山田裕貴)そして「6号車」登場

  • 2023.5.19
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これまで極限状態でみんなを引っ張ってきた白浜優斗(赤楚衛二)が初めて吐く弱音。乗客たちの髪を切る萱島直哉(山田裕貴)。二人の変化はなにをもたらすのか。ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが、『ペンディングトレインー8時23分、明日 君と』(TBS金曜夜10時〜。山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌らが出演)4話を振り返ります(レビューはネタバレを含みます)。3話のレビューはコチラ

優斗が垣間見せる弱さ

4話は転換点となる回だった。

これまでリーダーとして40人あまりを導いてきたはずの白浜優斗(赤楚衛二)が、ここにきてはじめて心折れてしまう。

加藤(井之脇海)が山中で見知らぬ何者かに刺される。加藤を連れて車両に戻った優斗と萱島直哉(山田裕貴)は手当てをしようとするが、傷は深く、素人しかいない中で手術をする必要がある。

「どうするか決めてくれよ」
と直哉から決断を迫られた優斗は
「もし何かあったら責任が」と答えてしまう。
「責任? そんなもん知るか! やるしかねえだろ!」「死んだらごめん」と傷口を縫いはじめる直哉。その甲斐あって、加藤はひとまず窮地を脱する。

優斗はかつて、火災現場でのちょっとしたミスを挽回しようとして独断で行動をとり、それをかばった先輩に大きな怪我を負わせていた。その記憶から、命に関わる場面で決断をできずにいたのだ。

どんなときもまっすぐすぎるほどに正義をめざし、全員を救うと息巻いていた優斗が初めて見せた弱さだった。

本当の「共同生活」のはじまり

一方、言葉はややぶっきらぼうな直哉だが、その行動で周りの人たちの信頼を得てゆく。玲奈(古川琴音)や佳代子(松雪泰子)、加藤、そして畑野紗枝(上白石萌歌)が直哉に髪を委ねるのも、ある程度の信用がなければできないことだろう。
美容師という直哉の仕事が彼らに大きな喜びを与えるシーンは、これがドラマだとわかっていてもうれしく、心温まるものだった。極限の状態であっても身ぎれいでいることがどれだけその人の気持ちを助けるかが伝わってくるようだった。

紗枝になぐさめられても「俺はそんな立派じゃない」と落ち込んだままの優斗だったが、それでも紗枝は諦めず
「私だってぜんぜん立派じゃないです」
「生徒に無視されて、学校に行くのが憂鬱で。でももう過ぎたことです。今を大事にしましょう」
「過去を変えることはできないけれど、いまここで火をつけることはできる」
と言葉をかける。
紗枝は自分の弱さも見せることで、優斗を元気づけた。弱さを見せ合うことは勇気がいる。けれどそれによって、人間関係は一段深まるのかもしれない。

さらにそこにやってきた直哉は優斗に告げる。
「これ(火起こし)は俺はやらないよ。手が傷だらけになったら髪切れないからな」
「お前ができるようになって俺が他のことをやって、そうやって協力し合う。ひとりで背負うな」
直哉が話したこのセリフ、まさにこれこそが社会であり、共同生活だ。それぞれができることをやって集団の役に立つ。優斗は必死で気づかなかったかもしれないが、これは3話で直哉に発破をかけられた乗客たちがすでに実践していたことでもある。

ライターの燃料が残り少なくなって火起こしの必要に迫られたこのタイミングというのも意味深い。「みんなで」と言いながら自分はひとりで必死にやっていた優斗は、ようやく火という文明を手にして、社会をつくれるようになったのだ、と言うのは言い過ぎだろうか。

自分が求められる喜び

ひとり落ち込んでいた優斗に「どうしよう、自分はリーダーなのに案外腰抜けなのがバレちゃった」とアテレコする田中(杉本哲太)。
相変わらずやることは憎たらしい。でも憎たらしいのは、きっと優斗にとって図星だからだ。

けれども田中も、根っからの悪者ではなさそうだ。警備会社で働いていた経験と知識を優斗に買われ、車両に戻ってきて防犯・警備体制の強化をレクチャーする。職場や会社でのけものにされ、バカにされてきた田中は、こうして必要とされることをもっとも望んでいたのだろう。

そのおかげで、優斗たちはよそものの子どもと出会うことになる。導かれるままに向かった先は、優斗たちのいる場所よりも整備された村のような空間。なんとそこは「6号車」の人たちが住むエリア。優斗たちの「5号車」と同時に行方不明になっていた車両だ。5号車の結束が固まりつつあり、このまま平穏なくらしがしばらく続くかと思われた状況での「外の人たち」との出会い。未来に飛ばされた2つの車両の乗客たちは、ここからいったいどうなっていくのだろう。

金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS)

脚本:金子ありさ
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
出演:山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)他
プロデュース:宮﨑真佐子、丸山いづみ
主題歌:Official髭男dism『TATTOO』

『ペンディングトレインー8時23分、明日君と』1イメージイラスト/オカヤイヅミ
(イラストでも全話振り返ります)

『ペンディングトレインー8時23分、明日君と』2イメージイラスト/オカヤイヅミ

『ペンディングトレインー8時23分、明日君と』3イメージイラスト/オカヤイヅミ

『ペンディングトレインー8時23分、明日君と』4イメージイラスト/オカヤイヅミ

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