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三流は情報収集に使い、二流は自分がラクをするために使う…一流の人の「スゴいChatGPTの使い方」

  • 2023.5.19
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AIチャットボット「ChatGPT」が注目を集めている。どのように仕事に活用すればよいのか。初期の頃からChatGPTを“使い倒している”という深津貴之さんは「ChatGPTは、結構知ったかぶりしてウソをついたりするので、検索エンジンのように使うのはお勧めしない。しかし、コツを押さえて使うと、アシスタントのように使えて仕事にとても役立つ」という――。

ChatGPTは「確率で話す」

ChatGPTの最大の特徴は「コンピューター言語(プログラミング言語)などではなく、人間の使う言葉で命令でき、回答してくれること」です。

うまく使えば、仕事の効率化や高度化が実現しますが、そのためにはChatGPTにできることとできないこと、またChatGPTの得意なことと不得意なことを理解する必要があります。

まず覚えておきたいのは、「ChatGPTは確率でしゃべるマシンである」ということです。基本的には、こちらが入力した文章に対して、確率的に高そうな続きの文字をつなげるようにして回答します。ですから、「自分が望む回答が出てくる確率を最大化するにはどうしたらいいか」、あるいは「望まない回答が出てくる確率を最小化するにはどうしたらいいか」を考えることが重要です。

昔話を例に説明してみましょう。

インタビューに答えるnote CXOの深津貴之さん
noteのCXOを務めるTHE GUILDの深津貴之さん
「むかしむかし、あるところに」の続きは何か

たとえば「むかしむかし、あるところに」と書けば、その後には昔話が続くことが確率的に高そうです。ただ、これだけだと、どんな登場人物の昔話になるかはわかりません。

しかし、「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが」と入れると、続く文章の登場人物は、おじいさんとおばあさんが出てくる昔話に絞り込めます。さらに「むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日おじいさんが山に行って」と書くと、「桃太郎」か「竹取物語」か、「おむすびころりん」などに可能性が絞れます。さらに「光る竹を見つけて」まで書くと、「竹取物語」である確率が高まります。

つまり、与える文章が具体的なほど、求めている回答を出せる確率が高まるのです。

ビジネスシーンで考えてみましょう。

「企画書を書いてください」だけの指示だとあいまいです。こちらが思うような、いい企画が出てくる可能性は低いでしょう。ですが、「新しく発売されるドリンクの企画書を書いてください」なら、ドリンクの企画書が展開されます。さらに「ターゲットは女性で」「日本で販売される」と、どんどん具体的にして範囲を狭めていくと、女性向けの日本の商品企画の文章が出てくる確率は上がってきます。

つまりChatGPTがやっているのは、連想クイズのようなものなのです。こちらが途中まで書いたものをChatGPTに渡して「この続きは、なーんだ?」とクイズを出したら、ChatGPTが続きを回答してくれる。ですから、自分の求めているものが出てきそうな、AI向けのクイズ問題を考えるといいのです。

「深津式プロンプト・システム」で回答の精度を上げる

ChatGPTは、こちらが与えた前提に合致しそうな回答を返してくるので、与えた指示が漠然としていると、求めているような精度の高い回答は出てきません。つまり、ChatGPTの性能を決めるのは「人間の質問力・指示力」です。

そう考えると、欲しい答えを得るためにどんな指示をすればいいかがわかってきます。そこで、初心者向けのテンプレートとして作ったのが、「深津式プロンプト・システム」です。「プロンプト」とは、コンピューターに指示を出す入力文のことです。

このシステムは、大きく「命令書」「制約条件」「入力文」という3つの要素で構成します。

まず「命令書」では、ChatGPTに役割を与え、「以下の制約条件と入力文を基に、どんなアウトプットが欲しいのか」を書きます。「プロのライター」「大手IT企業の○○事業部長」「メーカー企業人事部の採用担当者」などの役割を与えることで、その役割になりきって回答を作成してもらいます。

「制約条件」では、アウトプットの具体的な条件を定めます。文章量、文章のトーンや難易度、ほかにも必ず満たしてほしい条件をできるだけ具体的にたくさん挙げるといいでしょう。箇条書きがお勧めです。

「入力文」は、必要に応じて入れます。求めるアウトプットを出させるために必要な情報や素材があれば、入れておきます。

例えば、夏目漱石の『吾輩は猫である』の冒頭を要約したい場合、以下のように入力します【回答例1】。ただし、ChatGPTは、同じ指示を入れても、必ずしも毎回同じ回答が返ってくるわけではありません。

【回答例1】

赤い枠がChatGPTの回答。ただし、同じ指示を入れても、毎回同じ回答が出てくるわけではない
赤い枠がChatGPTの回答。ただし、同じ指示を入れても、毎回同じ回答が出てくるわけではない

この例は、文章の要約なので比較的シンプルな指示ですが、企画を考えたりするなど、もっと複雑な指示の場合は、一発勝負ではなく、出てきた球に対してまた指示を出して……とキャッチボールをしたほうが、精度は上がります。

さらに、命令書の最後に「最高の結果を出すために追加の情報が必要な場合は質問してください」などと入れておけば、ChatGPTの方から質問してきます【回答例2】。

【回答例2】

命令書の最後に「最高の結果を出すために追加の情報が必要な場合は質問してください」などと入れておけば、ChatGPTの方から質問してくる
正しい情報を得るための「検索ツール」として使わない

ChatGPTについて、ネットではよく、「歴史上の有名人について聞いたら、明らかに間違った答えを返してきた」などの話が上がりますが、「○○について教えて」「○○って何?」など、正しい情報を得るための検索ツールだと思って使うのはやめた方がいい。結構知ったかぶりして間違った情報を返してきます。

ChatGPTを使って検索や情報収集をするのはかなり高度で難しいので、情報収集やファクトチェックは人間がやるのがいいでしょう。人間が集めた情報を「入力」のところでChatGPTに与えて、その後の作業を手伝ってもらうのが、賢い使い方だと思います。

ただ、ChatGPTは、利用者が入力した情報を“学習”していくので、現時点では原則的に、個人情報や機密情報は入れないほうがよいでしょう。

仕事にどう使うべきか

これまでお話しした通り、まだ使い方にはクセがあるので、やみくもに使ってうまくいくわけではありません。仕事で使うためには、3つのステップで考えるといいでしょう。

① 用途を決める

手間がかかるところを任せて作業の時間短縮を図りたいのか、出てくるアウトプットの質を上げたいのか、など、使う目的を決めます。

② どうすれば実現できるか考える

たとえば省力化が目的なら、自分の仕事を作業ごとに細分化し、その中でChatGPTに任せられそうなところを定めます。たとえば企画の構成が苦手なら、たたき台をChatGPTに作ってもらって、その後で自分がブラッシュアップする。自分が作った企画の質を上げたい場合は、たたき台を自分で作り、ChatGPTにブラッシュアップさせます。

③ とにかく使ってみる

とにかく使ってみることです。ChatGPTはメールアドレスを登録すれば無料で使えますし、相手はAIなので何度やっても文句は言いません。「深津式プロンプト・システム」を活用して、いろいろ使ってみましょう。使うと、あっという間に使い方が上達します。

無料版でも要約やアイデア出しなどで活用できますが、より有効に活用したい方は、有料版(月額20ドル[約2500円]の「ChatGPT Plus」)を使うこともお勧めです。

提案資料のブラッシュアップ、営業トークの練習も

営業を例にとって、どのようにChatGPTが活用できるか考えてみましょう。取引先に新商品を売り込みに行くとき、以下の作業でChatGPTが役立ちそうです。


(営業活動の準備作業)
・営業のベストプラクティスを教えてもらう【回答例3】
・提案資料を作成しブラッシュアップする
・営業先のアタックリストについて、優先順位やリソース配分を決める
・電話やメールの応対のマニュアルやテンプレートを作る
・疑似顧客になってもらい、対面会話の練習をする
・会話の練習をレビューしてもらい、自分の営業スタイルや話し方、資料を改善する

実際の営業は自分で頑張る!

(営業訪問の後)
・議事録をまとめてレビューしてもらい、次回の計画を立てる
・日報や経費申請の書類を書く
・訪問先へのお礼のメールを書く

こう考えると10個の作業のうち、「実際の営業訪問」以外の9個はChatGPTに手伝ってもらえます。使いこなせば、アシスタントを1人雇ったのと同じぐらい、仕事が効率化したり、質を上げたりできるでしょう。

【回答例3】

「実際の営業訪問」以外の9個はChatGPTに手伝ってもらえる
「のび太式」の丸投げでは成長しない

実際に試してみると「60%は使える」「80%は任せられる」と、タスクによって信頼度が変わることがわかってきます。指示の出し方のコツもわかってきますし、どこまでChatGPTにやらせて、どこから自分で考えるのが一番効率がよいかもわかってくるでしょう。自分が得意なところ、苦にならないところは自分でやり、苦になる作業や不得手な作業で手伝ってもらうことを考えます。

こうしてChatGPTを使っていると、自分の「質問力」や「お願い力」「指示力」も上がります。部下やアルバイトに指示したり、外注するのがうまくなるでしょう。

ただ、のび太が、困ったことがあると何でも「ドラえもーん! 何とかして!」と泣き付くような使い方は、あまりお勧めできません。例えば、「飲料会社の商品開発部門で働いています。いい企画を出してください」など、ざっくりした指示で「丸投げ」をして、楽をしようとするだけの使い方です。

こうした指示でもChatGPTは文句も言わず、なにかアイデアを出してくると思います。でも、せっかくならもっと、自分の能力を磨くための使い方をする方がいい。

「深津式プロンプト・システム」を実際使ってみるとわかると思いますが、いい企画を出すためには、適切な制約条件を練る必要があります。「こんな条件がいいだろうか」「それともこっちか」と試行錯誤すること、出てきた企画のどれが「いい企画か」を選択して決めること。そこで自分の力が試され、鍛えられるはずです。1回指示をして出てきたものをそのまま受け取って満足するのではなく、ChatGPTと何度もキャッチボールをして、アウトプットをブラッシュアップする過程を楽しんでください。

自分の成長につながるChatGPT活用法

ChatGPTを、コーチやメンター、パーソナルトレーナーのように使うのもお勧めです。文章が苦手な人は、「命令書」で、ChatGPTにプロのライターの役割を与えて、自分が書いた文章を評価させる。社長や事業部長の役割を与えて、自分が書いた企画をレビューさせ、あいまいなところや足りない要素はないか確認する。これを繰り返すと、「この内容だと上司からこんなツッコミを受けるだろうな」と予測できるようになり、自分の成長につながるはずです。

自分が上司なら、評価基準や判断基準をChatGPTに伝え、自分の代わりに部下から上がってきた書類のスクリーニングをさせるという使い方もできそうです。「自分はこんな基準で判断するから、自分が書いた書類はまず、ChatGPTを使ってレビューするように。そこをクリアしたものだけ提出するように」としてもいい。すると、チーム全体のクオリティーが上がるのではないかと思います。

使わないことがいちばんのリスク

ChatGPTは、突然話題になって一気に誰もが知るツールになりましたが、「活用イメージがわかないから使っていない」という人が多いように思います。なんとなく難しそう、不安、というイメージもあるようで、食わず嫌いの人も多い。

私も、「使わなくても大丈夫ですよね?」と聞かれることがありますが、その問いはまさに、2007年にiPhoneが発売された時に発せられた「iPhone/スマホを使わなくても大丈夫ですよね?」と同じです。

もちろん使わなくても恐ろしいことが起こるわけではありません。でも、これから何年か経って、2023年を振り返り、「あのときに触れておけばよかった」と後悔するようになるのではないかと思います。2007年の当時、10年後、15年後の社会がこれほどスマホ中心で回るようになるとは、誰も予想していなかったと思います。先に触れていたというだけで、とりかえしのつかないほどの差がつく可能性がある。既存企業の勢力図も構造もすべて変わるかもしれない。それほどAIの可能性は大きいと見ています。

今後、AIが具体的にどのように生活に入り込んでくるかはまだわかりません。でも、ドラえもんや鉄腕アトムが実現するためのスタート地点に立っているのは確かです。自動車に「車庫入れしといて」と話しかけたら、自動で車庫に入ってくれるような世界も遠くないでしょう。

今のChatGPTは、「すごく優秀だけど、うろ覚えで全部答えさせられている」といった状態です。でもこの天才に検索エンジンや高性能の計算機を渡せば、もっと優秀になり、情報の精度も上がるでしょう。いずれ画像や音声と統合されて、さらに便利になるはずです。

間違った使い方をすることよりも、使わないでいることが一番もったいない。今、触らないでいるのが一番のリスクなのは確かです。

構成=池田純子

深津 貴之(ふかつ・たかゆき)
note CXO、THE GUILD CEO、インタラクション・デザイナー
1979年生まれ。武蔵工業大学(現・東京都市大学)卒業後、2年間のイギリス留学でプロダクトデザインを学んだあと、株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、クリエイティブユニットTHE GUILDを設立。メディアプラットフォームnoteのCXOとしてnote.comのサービス設計を担当。著書に『先読み!IT×ビジネス講座 画像生成AI』(共著)、『Generative Design-Processingで切り拓く、デザインの新たな地平』(監修)、『UI GRAPHICS ―世界の成功事例から学ぶ、スマホ以降のインターフェイスデザイン』(共著)など。

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