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メールなのに敬具で終わる…ChatGPTに書かせて大失敗する人、業務効率が向上する人のリテラシー格差

  • 2023.5.16

ChatGPTは、メール作成にも有効なのか。

日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗さんは「抽象度の高いオーダーを出してしまうと、ふわっとした答えが返ってくる可能性が高い。その間違いに気づくことができなければ、そのまま使ってしまう危険があります。つまり使い手がよい教育者にならなければ、ChatGPTでメールは書けないのです」という――。

チャットGPT人工知能アプリのアイコン
※写真はイメージです
ChatGPTでメールは書けるのか

メール作成にChatGPTが使えるかどうか。そう聞かれたら「使えます」と言えますが、これだけでメールが書けると思ったら大間違いです。

そもそもChatGPTとは、こちらの命令や質問に対して、大規模言語モデル(LLM)というデータベースから言葉をつなげて回答してくれる生成AI。プロンプトと呼ばれるChatGPTに入力する文に細かく命令するほど、目的に沿った文章が出力されます。

▽ChatGPTで初対面の人にアポイントをとるメールを作成すると…

たとえばChatGPTで、初対面の田中さん(仮名)にアポイントメントをとるメールを作成するとしたら「田中さんはB会社に勤めていて、何回かメールでやりとりしたことはありますが、今回初めて会います。アポイントメントの候補日時を3つぐらいあげて、もし候補日がない場合は別の日程を提示してもらえるようにお願いします」と細部まで命令する必要があります。そうすると、それなりの文章が返ってきます。

しかし「田中さんにアポイントを取るメールを書いてください。田中さんとは初対面です。」のような抽象的な質問をしたらどうでしょう。

文例1

目的に沿ったしかし、よくよく読んでみると、最後に「敬具」と入っていたり、田中様という宛名のあとに読点がついていたり。一つ一つの文字を見ると間違いないけれど、全体の統合やつながり、文脈がずれているところもあります。

そこで「ビジネスメールに敬具はいりません」「田中様のあとに読点がつくのはレアケースです」などと、さらに命令を返すと修正されて、だんだんよくなっていきます。

文例2

メールのことを手紙と書いてしまったり、まだまだ改善点がありますがずいぶんと良くなりました。

こんなふうにChatGPTは、より正しく具体的にオーダーすることが重要です。抽象度の高いオーダーを出してしまうと、ふわっとした答えが返ってくる可能性が高い。その間違いに気づくことができなければ、そのまま使ってしまう危険があります。

つまり使い手がよい教育者にならなければ、ChatGPTでメールは書けないのです。

だからこそChatGPTを使うには、メールの正しい書き方を知っておくことが大前提なのです。

型から外れると違和感がある

そもそもメールの書き方には、以下のような「型」があります。

①宛名
②挨拶
③名乗り
④要旨
⑤詳細
⑥結び
⑦署名

メールは中身や言い回し、敬語が大切と思われていますが、まず肝になるのは型です。型に則ったメールなら、スムーズに読めますが、このどれかが抜けていると違和感が生まれるのです。

たとえば「名乗り」がないと、近い間柄なら問題なくても、初めての相手だと失礼な感じになります。また「署名」には自分の名前が入るので、「結び」にわざわざ名前を入れる必要はありません。さらに「挨拶」は「お世話になっております」が一般的ですが、頻度が高ければ「いつも」、程度が高ければ「大変」をつけて、「いつも大変お世話になっております」とします。業態にもよりますが、それが「平素よりお世話になっております」となっていると、しっくりきません。

しかしChatGPTに書かせると、名乗りがなかったり、結びで名前を入れたり、ふさわしい挨拶でなかったり、型から外れて違和感のあるメールになることが少なくありません。ですからChatGPTを使う場合は、使い手がこの違和感を察知できるかどうかということが大事になってきます。

受信トレイの電子メールメッセージ
※写真はイメージです
切り口や表現、アイデアのヒントに

正直ChatGPTに、より正しく具体的にオーダーできる人は、もう十分にメールが書ける人。40代、50代でメールのスキルのある人なら、オーダーを出す1分か2分で、メールが書けてしまいます。オーダーを出すこと自体、時間の無駄になるので、効率化につながるとは言い難いですね。

ただ40代、50代の人が、あえてChatGPTに頼るとすると、ChatGPTの作成した文章から、自分にない切り口やアイデアを見つけたり、ちょっとした表現のバリエーションを増やしたりできるといったことがあります。

たとえば、ChatGPTにアポイントメントをとるメールを書かせてみると、最後に「お返事をお待ちしております」とある。確かに、これなら返事がしやすいなと気づきが得られます。

お詫びのメールを書かせると「心からお詫び申し上げます」と出てきます。こういった表現も使えますね。

あくまでも、いろいろなことを知っているアシスタントが、それっぽい文章を教えてくれたから、ちょっと参考にしよう、そんな感覚でChatGPTを利用するとよいと思います。

ChatGPTが役立つ3つのメールパターン

ChatGPTが得意なのは、スピーチ原稿を書いたり、メルマガのタイトルをつけたり、抽象度の高い文章の作成やアイデア出し、要約などです。

もともとアポイントメントをとる、苦言を呈するなど、具体的な用件を書く必要のあるメールとは、それほど相性がよいわけではありません。ただしメールでも、そういったChatGPTの特性を生かして使えるケースがあります。そのケースは、次の3つです。

ナンバー3
※写真はイメージです

①お祝いやいたわりを伝えるとき

たとえば政治家に選挙で当選したお祝いを伝えたいとき、あるいはケガをした相手にいたわりを伝えたいときなど、特に論点がなく、抽象度が高いメールはChatGPT向き。お祝いやいたわりの気持ちが伝わればよいわけですから、ChatGPTの文章をアレンジすれば確かに使えます。たたき台レベルとしては、ちょうどよいでしょう。

②相談業務を行うとき

コンサル業の人がクライアントから「社員が遅刻して困るんです。どうしたらいいですか」という相談を受けたら、そのアイデア出しをChatGPTに求めます。そして出てきた答えをリライトしてメールで返しましょう。もちろん、それが相手の求めている回答かどうか吟味する必要はありますが、相談業務で大量にメールが届く人は、ChatGPTをうまく使うと、メール対応の数をこなせるようになるでしょう。

③読者のメッセージにコメントするとき

私にもよくありますが、メールマガジンの読者などからメッセージや感想が届いて、何か返事をしなくてはいけない場合。「以下のメッセージに対して、Facebookからいい感じで返事をしたい。無難な感じでお願いします」とChatGPTにオーダーすると、「!」や絵文字を駆使して、本当に無難で好感の持てる文章を返してきます。これもたたき台として使えます。

ChatGPTは特に目的のないもの、どう返したらいいかわからないものに対して、実にうまい返し方を教えてくれます。こういうことに日々悩まされている人は、すごく楽になるでしょう。

100点満点の答えは出てこない

結局、ChatGPTをメールで活用するときは、まず正しいメールの書き方を学び、間違えや違和感を見極める目を持つこと。そのうえで自分の持っていない切り口や表現、アイデアを見つけるためのアシスタントとして活用する。あくまでも100点満点の答えは出てこないから、出てきたものを微調整しながら使っていく。

このプロセスを踏めば、メール作成もメール対応もうまくいくはず。仕事の効率もアップするでしょう。

繰り返すようですが、ChatGPTは確率的に出現の可能性が高いものを予測して出力するため、出てくるものは“ザ・無難”な文章。メールは相手あってのことなので、ChatGPTで完結するものではないということは忘れないでほしいと思います。

平野 友朗(ひらの・ともあき)
アイ・コミュニケーション代表
ビジネスにおける時間管理やメールスキルの向上を中心に、コンサルティングや講演、執筆を行う。著書に『誰も教えてくれなかった ビジネスメールの書き方・送り方』ほか多数。

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