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カットライン【9オーバー】に、吉田優利プロは【7年ぶり】のオーバーパー優勝。その理由は…【数字でスゴさを読み解く国内女子ゴルフツアー】

  • 2023.5.9

国内女子ツアー第10戦、ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップは、吉田優利プロが1オーバーで優勝をはたしました。でもこれ、実に7年ぶりのオーバーパー優勝だったんです。実は今大会、予選カットラインは9オーバーで、これは大会史上最多予選カットラインスコアでした。では、一体、なぜそのような数字になったのでしょうか。

今回もゴルフにまつわる「数字」をヒントにその魅力を解説していきます! これさえ読めば、もっとゴルフがしたくなる! 観戦が楽しくなるはずです♪

画像/Getty Images

◆すべては世界で戦うため! ペブルビーチでの全米女子オープン対策だった

トーナメントには毎試合、コースセッティングを決めるディレクターが存在します。ラフの長さやフェアウェイの幅、グリーンの硬さ、ピン位置などの決定権を持つ人です。予選通過のスコアはこれぐらい、優勝スコアはこれぐらいになると予想して、セッティング内容を決めていくんですね。

今回、そのコースセッティングディレクターを務めたのは、茂木宏美プロ。ツアー通算6勝を飾り、04年から10年連続でシード権をキープした実力者です。14年に一度シード権を手放しますが、翌15年には賞金ランキング30位となるなど、ド根性の人でもあります。13年の今大会でも優勝した経験を持っていて、開催コースの茨城GCに関しては十分知り尽くしています。

その茂木プロはここ数年、今大会のコースセッティングディレクターを務めていますが、今年は予選カットラインを7オーバーにするつもりだったと言います。

「昨年のカットラインが6オーバーでしたので、今年は世界で戦うために昨年よりも難しいセッティングにし、7オーバーになる想定でした」

茂木プロが言う“世界で戦うため”とは、海外メジャーの話です。米女子ツアーに参戦している選手なら、普段から難しいコースセッティングにも慣れていますが、いきなり日本からスポット参戦した選手が全米女子オープンに出場すると、結構なショックを受けたりします。特に全米女子オープンではラフを相当伸ばし、グリーンも硬くして高速にするので、簡単には好スコアを出せません。ただでさえ、芝質が違うこともあって、米国のゴルフ場に慣れるまで時間がかかるのに、ピン位置などのセッティングまで気が回らないのは当たり前。気がついたら試合が終わっていたなんてことも珍しくないんです。

しかも、今年は世界でも指折りの難コースであるペブルビーチGLが開催コースです。「私は1度回ったことがあり、そのときに雨、風がすごくて、コースの難しさにものすごく衝撃を受けました」と、茂木プロ。そのペブルビーチGLが大会仕様に変わったらどこまで難しくなるのかちょっと想像できませんよね。

◆セッティングの難しさに強風、気温低下……。実力者が跳ね返す!

選手には少しでもコースセッティングに対する戸惑いを無くした状態で戦ってほしいと考えた茂木プロ。そのため、今大会のセッティングは、ちょっと(かなりでしょうか)厳しくしようと意図したわけです。

ところが、茂木プロが予期しなかったのが、風の強さ。2日目は最大瞬間風速が13・9m/sと、強風が吹き荒れました。その影響でグリーンが乾き、セッティングした数字以上に表面が硬くなり、スピードが増したのです。しかも、コースの距離を長くしたことで、選手がグリーンを狙う際に持つ番手が大きくなってしまいました。ショートアイアンなら硬いグリーンでも止められたのですが、ミドルアイアンやユーティリティではそれが難しく、風が強くなった午後スタートの選手は軒並みスコアを落としていきました。

その結果、予選カットラインが9オーバーという、今大会史上最多の予選カットラインスコアになったのです。それまでは8オーバーだったので、1打増えたわけですが、ある意味、全米女子オープンに近いセッティングになったのかもしれません。

しかも最終日は風に加えて雨が降り、気温も急激に下がりました。プレーする選手にしてみれば、全英女子オープンで感じる寒さのなか、全米女子オープン並みのコースセッティングでプレーしたようなものでしょう。にもかかわらず、山下美夢有プロは最終日に71をマーク。申ジエプロやイ ソミプロ、永峰咲希プロはパープレーで回りました。イ ソミプロを除いた3選手は国内メジャーの優勝経験者であり、やはり実力者はセッティングや気候に関係なく、好スコアを出すことを証明していました。

取材・文/山西英希

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