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第11回 KYOTOGRAPHIEが開催中。写真家たちと京都建築のセッションから、さまざまなボーダーを可視化する

  • 2023.5.10

第11回目を迎える「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」が2023年5月14日(日)まで開催中だ。にぎやかさを取り戻した京都をぐるりとめぐりながら、「BORDER(境界線)」をテーマにした国内外の写真表現を堪能できる。人々が日々、守り、壊し、狭め、壊しながら生きている境界線を可視化した作品に触れ、自らの境界線について問い、思考する旅が始まる。本記事では、15人の作家が参加するメインプログラムから、GINZA編集部がおすすめする見どころを紹介したい。

マベル・ポブレット「WHERE OCEANS MEET」
Presented by CHANEL NEXUS HALL京都文化博物館 別館

旧日本銀行京都支店として知られる、「京都文化博物館 別館」で展示されているのは、写真、ミクストメディア、ビデオアート、キネティックアート、パフォーマンスアートといったさまざまな手法で制作活動を行い、キューバの現代アートシーンで活躍する若手アーティスト、マベル・ポブレットによる「WHERE OCEANS MEET」(シャネル・ネクサス・ホールの巡回展)。ボーダーにもなれば、架け橋にもなるというゆらぎをを象徴する「海」と「水」を軸に、「移民」というテーマにも取り組む。伝統的なものではなく、新しいものを作り出すプロセスとして写真を使う彼女の表現は実に立体的だ。折り紙のようにピラミッド型に折られたプリントで構成された作品は、さまざまな粒子、瞬間、断片からできている私たちの身体や人生と共鳴する。

マベル・ポブレット「WHERE OCEANS MEET」Presented by CHANEL NEXUS HALL 京都文化博物館 別館©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

石内 都/頭山ゆう紀 A dialogue between Ishiuchi Miyako and Yuhki Touyama
「透視する窓辺」誉田屋源兵衛 竹院の間
With the support of KERING’S WOMEN IN MOTION

江戸時代中期に創業、280年を超える歴史を持つ帯匠「誉田屋源兵衛」の竹院の間では、日本を代表する写真家・石内都と、彼女が選んだ次世代の作家・頭山ゆう紀の二人展を開催中。

芸術や文化の分野において活躍する女性に光を当てることを目的にする、ケリングのプログラム「ウーマン・イン・モーション」がサポートする本展。母の身体や遺品を撮ることで、見知らぬ母と出会いなおした石内の代表作「Mother’s」と、頭山が友人の死を機に撮影を始めたシリーズ「境界線13」、祖母が亡くなるまで介護をしながら、祖母の視点から撮影したという新作を発表。頭山が窓越しに撮った庭の写真を見て、「Mother’s」の初期に、下着を庭ガラスに貼って撮っていたことを思い出したという石内。茄子紺と水色というそれぞれ異なるに空間に飾られながらも開かれた二人のまなざしは、庭に向かって死を見つめたときに重なり合い、そこからまた対話が生まれる。

石内 都/頭山ゆう紀「A dialogue between Ishiuchi Miyako and Yuhki Touyama「透視する窓辺」」©︎Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

誉田屋源兵衛 竹院の間©Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

Yuriko Takagi 高木由利子「PARALLEL WORLD」
二条城 二の丸御殿 台所・御清所Presented by DIOR

「二条城 二の丸御殿 台所・御清所」では、現在、東京都現代美術館の『クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ』展にも作品を提供している写真家の高木由利子の作品を展示。タイトルが意味する通り、共時的に存在する二つの世界二つのシリーズで見せていく。民族衣装を日常的に着る人たちを12カ国で撮影した「Threads of Beauty」と、ディオールのために撮り下ろした新作や、ポール・スミス、イッセイ・ミヤケ、ヨウジヤマモト、ジョン・ガリアーノなど80年代から現代まで、印象深いファッションを撮影したシリーズで構成されている。会場をまわる光と墨黒のフレームが写真をさらに引き立てる。特大サイズのデジタルプリントに圧倒され、オリジナルプリントの美しさに呆然としながら覗き込んで近寄り、和紙、コットン紙、漆喰といった異なる媒体に変化する写真表現の豊かさを目の当たりにする。空間建築家・田根剛のセノグラフィは、二の丸御殿 台所・御清所が本来持つ荘厳さを生かし、作品にさらなるダイナミズムを与えている。

高木由利子「PARALLEL WORLD」Presented by DIOR二条城 二の丸御殿 台所・御清所©︎ Kenryou Gu-KYOTOGRAPHIE 2023

ココ・カピタン「Ookini」
ASPHODEL、大西清右衞門美術館、東福寺塔頭 光明院

ココ・カピタン「Ookini」With the support of LOEWE FOUNDATION and HEARST FujingahoASPHODEL©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

「ASPHODEL」、「大西清右衞門美術館」、「東福寺塔頭 光明院」と3箇所で展示を行うのは、スペイン人の気鋭アーティストのココ・カピタン。2022年10月から12月まで同写真祭のアーティスト・イン・レジデンスとして京都で滞在制作を行っていた彼女は、京都のティーンエイジャーにフォーカス。世の中が急激に変化する中で、伝統を守り続けることを強く意識する環境で生きることが、京都の若者にどんな影響を与えているのかを探る試みだ。鴨川を散歩中に出会ったスケーターの若者たち、放課後、課外活動をする学生ら、舞妓、禅僧生、狂言師の子どもなどの人生におけるゴールデン・エイジを切り取る。ロエベ ファンデーションよる長期支援を受けたプロジェクト、茶道の釡職人、現16代目当主・大西清右衛門の長男、17代目となる13歳の大西少年の日常は、大西清右衞門美術館で見ることができる。

ココ・カピタン「Ookini」With the support of LOEWE FOUNDATION大西清右衞門美術館©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

ココ・カピタン「Ookini」With the support of LOEWE FOUNDATION東福寺塔頭 光明院©︎ Kenryou Gu-KYOTOGRAPHIE 2023

Dennis Morrisデニス・モリス「Colored Black」
世界倉庫With the support of agnès b.

町家と倉庫、離れを複合施設としてリノベーションした「世界倉庫」では、ボブ・マーリー、セックス・ピストルズといった偉大なミュージシャンから絶大な信頼を得て数々のポートレートを撮影してきた、ジャマイカ系イギリス人の写真家デニス・モリスの作品群と出合える。少年の頃から彼がレンズでとらえてきた1960-70年代のイーストロンドンのカリブ系移民たちの生活を追体験できる構成だ。野外ダンスパーティを提供してきた移動式の巨大なスピーカー、アンプ、ターンテーブル、レコードを保有するサウンドシステムクルー、野外パーティーの様子、アメリカの黒人解放運動から影響を受けた作品などを通して、生き残るために、逞しい精神をもって、前向きに、常にファッショナブルに生きようとしたブラックパワーの歴史を振り返る。

デニス・モリス「Colored Black」With the support of agnès b.世界倉庫©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

Gak Yamada 山田 学「生命 宇宙の華 」
Presented by RuinartRuinart Japan Award 2022 Winner

西陣織の老舗「細尾」が運営する、「HOSOO GALLERY」では、同写真祭のインターナショナルポートフォリオレビューから「Ruinart Japan Award 2022」を受賞した山田学の作品が並ぶ。昨年秋、世界最古のシャンパーニュメゾンであるルイナールの招聘によって渡仏し、シャンパーニュ地方のランスを訪れ、滞在制作を行う。シャンパーニュの熟成用セラーに触れ、宇宙誕生や生命の奇跡を感じたという山田が、ぶどう、土、木々、水といったあらゆるものの命と森羅万象を描いた作品が暗闇の中で発光する。現地で録音したシャンパンの音を交えた映像作品も同時発表。

山田学「生命 宇宙の華」Presented by RuinartHOSOO GALLERY©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

ここでは紹介しきれなかったさまざまな切り口のアーティストの展示も、トークイベントやアーティストツアーも多数開催中だ。会期は5月14日(日)まで。入場料、休館日は会場により異なるため、公式サイトでチェックして。

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