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世界からお届け!SDGs通信 メキシコシティ編。誰もが働きやすい多様な社会を目指す民間非営利団体〈APAC〉

  • 2023.5.6
世界からお届け!SDGs通信 メキシコシティ編。 教育・健康・自立を柱に、誰もが働きやすい多様な社会を目指す民間非営利団体〈APAC〉

母親たちのグループ活動が、中南米随一の障がい者支援組織に

行政の障がい者支援や補助がほぼないメキシコで、1970年に脳性麻痺の子どもを持つ母親たちが、助け合うために始めたのが、民間非営利団体〈APAC, I.A.P. Asociación Pro Personas con Parálisis Cerebral(脳性麻痺所持者支援協会)〉(以下APAC)だ。当初はメンバーの自宅車庫を使い、子どもたちの教育やリハビリのために始動したが、現在は幅広く障がい者を受け入れ、乳児から60歳までの500名以上を毎日ケアする中南米最大級の組織となった。同所内のベーカリーは、商品を販売するだけでなく、職業訓練所としても機能する。また在所者の就職の斡旋や、雇用後の1年間は就職先に出向いてのケアも行う。

インクルーシブ労働部門のディレクター、マリア・マルガリータ・ガルシア・メディーナは、31年APACに勤務するが、この国の障がい者の労働環境は整っていないと感じているそうだ。国の人口の25.2%にあたる112万以上が障がい者だが、何らかの職についているのは30%に満たない。

「メキシコでは企業での障がい者の雇用枠(全体の5%)が義務付けられていますが、就職してもすぐに辞めてしまう人が多い。雇用側も、障がい者に対してのコミュニケーションのとり方がわからずに、両者の溝が深まるので、企業向けにインクルーシブについての講座も行っています」

障がい者たちが就職する困難さを鑑み、彼らが自営で仕事ができるよう、APACでは手工芸品やパソコンの講座も開講している。30年以上前にメンバーたちにより結成された、メキシコの伝統的なエストゥディアンティーナ音楽の楽団は、全国各地のコンサートホールで公演を行うまでにいたっている。

「障がい者たちは日々、社会システムの壁と向き合っています。彼らが自立し、より良い人生を送れるような公平な社会を目指すためにも、インクルーシブ労働は極めて重要なのです」

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施設内ベーカリーで働くミゲル(左)とオリベル(右)。スタッフは現在20名。クッキー詰め合わせ500グラムは120ペソ。注文も請け負う。
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市内の版画美術館〈Museo Nacional de la Estampa〉にて行った版画講座の様子。
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リハビリ施設のひとつが水治療法。同所内には神経科、口腔科、歯科、心理カウンセリングなどの医療設備もある。
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エストゥディアンティーナ楽団のメンバーは15名。年間10公演以上を行い、毎週リハーサルする。
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自立のための手工芸品クラスの授業風景。
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インクルーシブ労働部門のディレクター、マリア・マルガリータ・ガルシア・メディーナ。

Information

アパック

メキシコシティのドクトーレス地区を拠点にする、活動50年以上の障がい者支援組織のパイオニア。政府や民間企業へのコンサルタントも担う。国内7州に支部を構える。

HP:https://apac.mx/
Instagram:@apaciap

profile

長屋美保

ながや・みほ/静岡県浜松市生まれのライター。メキシコシティ在住16年目。同地のダウンタウンの一角で、小さなアジア食堂を営む。

Twitter:@mihonagaya

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