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「マッサージ」「裸レスリング」男性アイドルに対する性加害問題、海外のボーイズグループでも告発多数

  • 2023.5.5

日本で元ジャニーズJr.による性加害の告発が報じられているが、アメリカをはじめ海外のボーイズグループでは、マネージャーや業界関係者による性加害が多く告発されている。

バックスや’NSYNCのマネージャーによる不適切行為

ボーイズグループのマネージャーとして最も有名な人物は、バックストリート・ボーイズと’NSYNC(インシンク)を作ったルー・パールマンだろう。マネージャーとしてグループのお金を流用して両グループとドロ沼裁判をしたことで知られるパールマンだが、複数のメンバーたちから性的不適切行為を告発されている。

画像: ルー・パールマンによるオーディションで誕生したバックストリート・ボーイズ。最年少ニック・カーター(右)は加入時13歳だった。
ルー・パールマンによるオーディションで誕生したバックストリート・ボーイズ。最年少ニック・カーター(右)は加入時13歳だった。

パールマンに初めて性的加害疑惑があがったのは、1997頃。当時17歳だったバックストリート・ボーイズの最年少メンバーであるニック・カーターがパールマンの家に泊まるのを嫌がっていると、別のメンバーであるA.J.マクリーンの母が米Vanity Fairにコメント。A.J.の母は、「ニックはルーの家に行くのが大好きでしたが、ある日を境に、状況がひっくり返りました。そして、カーター家から、ある種の不適切な行動があったと聞いたのです」と付け加えた。当時、ニックの母ジェーンは詳細については話さなかったが、2020年以降にインスタグラムライブで「ニックは間違いなくルー・パールマンにいたずらされた」「ニックが『ルーにいたずらされた』と言ってきた」と認めた。一方で、ジェーンは別のインスタグラムライブでは、絶縁状態にあるニックを罵倒したうえで、いたずらされたという話はニックの作り話だとも発言している。

パールマンの不適切行為に対する言及は、ほかのグループからも出ている。パールマンの家は、ホームシアター、テレビゲーム、ビリヤード台、プール、ボウリング場などがあり、ボーイズグループのメンバーたちがよく集まっていたという。そんななか、パールマンはここでよく“マッサージ”と称して少年たちを触ることがあったそうで、インシンクのランス・バスは、パールマンを題材にしたドキュメンタリー『The Boy Band Con: The Lou Pearlman Story』のなかで、「すごく身体的タッチが多かった」と振り返った。

画像: バックストリート・ボーイズやインシンクを作ったルー・パールマン(中央)。
バックストリート・ボーイズやインシンクを作ったルー・パールマン(中央)。
画像: O-Townもルー・パールマンが作ったグループ。
O-Townもルー・パールマンが作ったグループ。

パールマンが2000年に誕生させたボーイズグループであるO-Townのアシュリー・パーカー・エンジェルは、パールマンには「気をつけろ」と周囲から警告されていたことを前述のドキュメンタリー番組で認め、「ルーと2人きりになったときのことは忘れられません。彼の部屋に行くと、彼はずっと、成功したいという僕の願望をくすぐるのです。『ジャスティン・ティンバーレイクやニック・カーターのような存在になるには、体型を維持する必要があるんだ』とか言ってね。そこからさらに一歩進んで、『僕は大学で理学療法を専攻していたから、君が運動しなくても、君の筋肉も盛り上がらせられる』というんです。そしてそれは奇妙なマッサージに変わり、自分の中ですべての危険信号が鳴りはじめる」と、自身の経験を明かした。この時、アシュリーはマネージャーからの電話に助けられ、その場から逃げ出したという。

4人組グループのLFOのリッチ・クローニンは、ヨーロッパの音楽業界の重鎮に紹介したいと言ったパールマンが、商談を成功させるために相手に性器を触らせるよう勧めてきたという話を、ハワード・スターンの番組で告白。また、フロリダ州で結成されたTake 5のティム・クリストフォーは、パールマンからマッサージをオファーされたほか、タオル1枚を身に着けたパールマンが自分たちのベッドに飛び込んできてレスリングが始まり、パールマンのタオルがほどけるという経験があったことを2007年にVanity Fairに明かした。

パールマンにはほかにも、少年たちにポルノを見せていた、夜遅くに寝室に少年を呼び出していたといった告発が出ているが、すべてを否定したまま、62歳だった2016年に刑務所で心臓発作を起こして死亡。パールマンは3億ドルの投資詐欺をした罪で服役していた。

リッキー・ガルシア、業界の男性権力者の「性的なおもちゃ」にされた

2013年に音楽オーディション番組『Xファクター』内で結成された米ボーイズグループのForever in Your Mindのメンバーで、ディズニー・チャンネルの番組に多数出演したことでも知られるリッキー・ガルシアは、12歳から10代の間ずっと、元マネージャーだったジョビー・ハートから性的暴行を受けるだけでなく、「業界の友人たちにまわせる性的なおもちゃ」になるようグルーミング(※性的虐待目的で未成年を教育すること)されたと告発。

画像: Forever in Your Mindのリッキー・ガルシア(左)は、複数の業界人から性加害を受けたと告発。
Forever in Your Mindのリッキー・ガルシア(左)は、複数の業界人から性加害を受けたと告発。

リッキーは、20歳だった2019年にロサンゼルスで起こした裁判で、「グルーミングして誘惑するという、小児性愛者の典型的な手口」が使われたとして、リッキーの弁護団は、「彼のキャリアを育てる責任を負っていた元マネージャーのジョビー・ハートを筆頭とする、エンターテイメント業界で権力を持つ男性幹部たちは、代わりに彼の経済的・精神的弱点を性的な食い物とし、性的暴行とレイプをした」と述べた。

リッキーは裁判を起こした際にインスタグラムで家族や友人たちに感謝し、「悲しいことに、私の経験は多数のなかのひとつに過ぎません。今日の私の行動が、虐待を経験した他の人たちに、自分は1人ではない、世界には自分のために闘ってくれる人たちがいるということを知ってもらうきっかけになればと思います」と綴った。

リッキー・マーティン所属のメヌードからはレイプ告発

“16歳になったら脱退して若いメンバーと入れ替わる”というルールで結成されたプエルトリコのボーイズグループであるメヌード。リッキー・マーティンを排出したことや、日本ではモーニング娘。の運営方針に影響を与えたことでも知られているメヌードでは、性的・身体的・精神的な虐待が常態化していたことを多くのメンバーが認めている。

画像: メヌードはリッキー・マーティン(左)を排出したグループとして有名。
メヌードはリッキー・マーティン(左)を排出したグループとして有名。

11歳でバンドに参加したアンジェロ・ガルシアは、ドキュメンタリー番組『Menudo: Forever Young』のなかで、ホテルの部屋でお酒を渡されたあとに記憶がなくなり、「起きたら裸で、出血していた。だから、挿入されたのだと分かった」と明かした。アンジェロは同番組のなかで、相手は明かさなかったものの、グループの関係者に複数回にわたってレイプされたと発言。また、番組に出演したほかのメンバーたちからも性的暴力の加害があったと証言が出た。

また、ロイ・ロセロはメヌードに所属中に、グループを作ったエドガルド・ディアズから性的暴行を受けたと、ドキュメンタリー番組『Menendez + Menudo: Boys Betrayed』で告発。ある時には、ディアズに連れられて、グループが契約していたレコード会社RCA Recordsの代表だったホセ・メネンデスの家に行き、ドラッグを服用させられてレイプされたと語った。ロイに告発されホセは、1989年に妻と一緒に射殺されて死亡。2人を射殺したのは夫妻の21歳と19歳(当時)の息子たちで、彼らは、父親から長年性的暴行を受けていたと裁判で明かした。

未成年の「無知」と「恐怖」につけこむ大人たち

業界の大人からの不適切な行為を告発した人の証言からは、加害者たちが、マッサージやレスリングといった行為で境界線を曖昧にする、業界ではこれが普通だと思わせるなど、まだ社会経験の浅い子どもたちの無知につけこんで犯行を行なっている様子が見えてくる。

例えば、タオル1枚を身に着けたパールマンからレスリングと称して下半身を見せられたことを明かしたTake 5のティム・クリストフォーは、「僕らは、『ルー、キモいよ』って感じでしたが、とはいえ、私は13歳だったのでよく分かっていませんでした」と、その状況の不適切さが当時は理解できていなかったと、2007年にVanity Fairに明かした。

ヨーロッパの音楽重役に性的行為を行なうようパールマンから勧められたというLFOのリッチ・クローニンは、「それが向こうでの(ビジネスの)やり方」と説明されたという。加えてティムも、パールマンに「腹筋を見せてみろ。Tシャツを脱いで」と言われたとき、「この業界では、これがメンター(※指導者)の役割なのかな。彼は僕の体型を気にかけてくれているんだろう」と思ったと、パールマンを題材にしたドキュメンタリー番組で明かした。

この“無知”を利用した搾取は、性的行為以外でも見られる。2021年にマネジメント会社による精神的虐待を告発したホワイ・ドント・ウィーは、非人道的な扱いが「『普通』であり、どのアーティストも通る道だと思わされていた」と声明で綴った。インシンクは、パールマンからギャラをまったく払われない異常な状態にありながらも、“これが業界では普通なんだ”と信じ込んでいたと、ドキュメンタリー番組で明かした。

加害を行なう大人たちは子どもや若者の無知を悪用しているわけだが、一度加害が始まると、報復やキャリアへのダメージという“恐怖”が沈黙の文化を生み出す。12歳の時からマネージャーや業界関係者たちから性的暴力を受け続けていたリッキー・ガルシアがその経験を他人に明かしたのは19歳になった2018年だったそうだが、それまで隠していた理由については、何か言ったらキャリアがダメになると思っていたからだと裁判で明かした。

マネージャーや事務所の社長は、ボーイズグループの誕生・発展・成功において重要な役割を果たす。彼らはグループのメンバーをスカウトするだけでなく、制作プロセスを監督し、グループのイメージ戦略やメディア・業界関係者との関係構築を管理し、メンバーたちのキャリアに大きな影響力を持つことになる。加えて、保護者的存在を必要とする未成年者たちは、キャリアだけでなく私生活でもマネージャーらに依存しやすく、搾取や虐待を受けやすい状態にある。そこにつけ込む加害者たちの存在を明るみに出し、被害を防ぐために、業界が、メディアが、社会が、それぞれ責任を果たす必要がある。

(フロントロウ編集部)

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