1. トップ
  2. ヘア
  3. 「女は歳をとったら、ロングヘアにすべきではない」!? 女性はなぜ、歳を取ると髪を切るのか?

「女は歳をとったら、ロングヘアにすべきではない」!? 女性はなぜ、歳を取ると髪を切るのか?

  • 2023.5.3
  • 30150 views

40代に近づいたらロングヘアはやめるべきという社会規範が浸透している。この社会通念について、真相を専門家が解き明かす。

2023年3月21日にロサンゼルスで開催されたファッション・トラスト・アワード授賞式に出席したデミ・ムーア。photography: Axelle/Bauer-Griffin/Getty Images

「女は歳をとったらロングヘアにすべきではないと聞いたことがあります。でもそんなことを言い出したのは誰? 髪を伸ばせるなら、傷んでいないのなら、なぜロングにしてはいけないのでしょう?」 。 2022年7月、雑誌「ピープル」に掲載されたインタビューで、デミ・ムーアはこう問いかけ、根強い社会通念をめぐる議論に再び火をつけた。

新しい社会規範

『美容院の民俗学』(ファイヤール出版)の著者で社会学者のミシェル・メシュはこう語る。「女性の髪が短くなったのは、女性の社会活動が変化するにつれ、ヘアケアに割く時間が減ったため。社会が変化し、活動が増えた分、髪を手入れする時間が減りし、ゆえに女性たちは髪を短くするようになったというわけです」。構築的なヘアスタイルは、長い間、女性たちにとって、髪型にこだわり、髪の手入れに多くの時間をかけていた上流階級に属する目印だった、と専門家は言う。その傾向が顕著だったのがマリー=アントワネットの時代だ。

「17~18世紀には、高貴な身分やブルジョワ階級の女性たちの仕事は、主に美しく着飾って社交の場に出入りすることでしたから、彼女たちは凝ったヘアスタイルを実現するために多くの時間を費やしていました。だから、凝った髪型をするために髪を長く伸ばしていたのです。庶民階級の女性たちも髪を長く伸ばしていましたが、日常の邪魔にならないよう、三つ編みにしり、スカーフを巻いたりと、実用的なアレンジをしていました」

とはいえ彼女たちに共通点はあるのだろうか?「女性が髪を長く伸ばしていたのは、当時、長い髪が女性らしさの証とされていたからです。女性の美しさは特に長い髪という形をとって現れ、誘惑と緊密に結びついていました。長い髪は男性の欲望をそそると考えられていました」と専門家は続ける。

 

技術の進歩

その後、1960年代に美容産業における進歩(とりわけロレアルの世界初のヘアスプレー「エルネット」の発売とともに)が、女性のヘアスタイルに実用性と美しさの両立という新しい可能性をもたらす。「20世紀に入り、こうした技術的進歩のおかげで、短くても魅力的なヘアスタイルが可能になり、新たな社会における女性の活躍が促進されました。髪は活動の妨げにならず、同時に潜在的な誘惑の力を保つことができたのです」とメシュは説明する。

現在、美容界の立役者たちはこの方向で科学的な開発をさらに進め、「アンチエイジング」や育毛用の新たなヘアケア製品が数多く登場している。スーパーの商品棚や美容院、美容医療クリニックにはそうした商品がずらりと並び、サプリメントやメソテラピー、マイクロニードリングも大成功を収めている。

手入れが楽

とはいえショートヘアは、実用的で経済的な理由から、多くの女性に人気がある。「40~45歳までは背中の真ん中辺りまで届くロングヘアでした。でも、歳を重ねると、セットしていない髪は、すぐに投げやりな印象になってしまう」。こう語る59歳のクレモンティーヌも、ロングヘアだと「老けて見える」から、自分はもうロングにする「年齢ではない」と思っている。ただ、彼女にとってベリーショートは論外だ。「私には合わない。試したことはあるけれど、大失敗だった」。そう話す彼女はいまはボブにしている。

2023年1月10日にビバリーヒルズで開催されたアカデミー賞授賞式に出席した女優ミシェル・ヨー。photograpy: Matt Winkelmeyer/FilmMagic/Getty Images

ケアの習慣

48歳のロレンスは、10年近く保っている褐色のつやつやロングヘアを維持するために、徹底したケア習慣を取り入れている。シャンプーは2度洗いを週間に2回。続いてケラチンマスクは欠かさない。そしてブラッシングの前に毛先に少量のセラムをプラス。1年に1度、ヘアボトックスのケアも受ける。去年は初めて根元のカラーリングに挑戦し、髪全体にグロスカラーを入れた。ロングヘアを維持するために注いだ努力のかいあって、多くの人から褒め言葉をもらうようになった。それまでにはなかったことだ。

「以前、ショートヘアだったときは、髪を褒められることはほどんどありませんでした。いまはカールでもストレートでも評判がいい」と嬉しそうに話す彼女は、ロングヘアは自分の人格の一部になったとも言う。「ロングじゃないと、自分らしくない。40代になったばかりの頃、デミ・ムーアのヘアスタイルが頭にありました。ストレートの豊かなロングヘアにまっすぐ揃えた前髪を合わせていた頃のです。あのスタイルに憧れていました。だからやってみたのです!腰まであるロングヘアは若くないと似合わない、そんな自分のばかばかしい思考から自分を解放できたのは彼女のおかげです」と彼女は打ち明ける。

2022年12月13日にパリで行われた映画『無限の広がり』上映会フォトコールに登場したペネロペ・クルス。photograpy: Stephane Cardinale-Corbis/Getty Images

ロレンスはいまこの選択に胸を張っているが、彼女が過去に教えられたことはそれとは正反対だった。「私の母はいつも40歳になったら髪を切るべきと言っていました。その年齢が近づいた時、この社会通念に屈することは私にとっては問題外でした。髪の長さは年齢ではなく手入れの問題です。髪が美しく、健康的で、手入れが行き届いていれば、なぜ年齢を理由にロングヘアを諦めなければならないのかわかりません」と彼女は投げ返す。

いつかまたショートヘアに戻ることも考えている? 「絶対にありません!そのうち、ここまでの長いロングはやめるかもしれませんが、肩にかかるくらいの長さは維持したい。髪が健康で美しい間は」

髪の老化

多くの女性にとっては、髪を伸ばしたくても、素材がなくてでできないのが実情だ。「40~50歳以上の女性は誰でも、ジゼル・ブンチェンやエル・マクファーソンのようなロングヘアにしたいと思っています。ただし誰もが彼女たちと同じくらい長く伸ばせるほどの量や髪質を保っているとは限りません」と、『私の年齢は私が望む年齢』(ル デュック出版)の著書があるナターシャ・ドジコウスキーは強調する。「幸福な年齢のために闘う活動家」を自認する50代の彼女によると、ショートカットが一定の年齢に達した女性たちの間で広く受け入れられたのは、「毛の量が少なくてもボリューム感が出せるから」。「年齢を重ねて、髪が細くなり、ハリがなくなり、毛の量も減ってくると、ショートはいいアイデア」と、自身も経験者である彼女は言う。

実際、私たちそれぞれが持って生まれた「髪資本」は年月とともに目減りし、そのことが毛並みに影響を与える。「髪が老化し、ハリが失われることを受け入れなければなりません。肌と同じ。髪は時とともに変化し、そのライフサイクルは7年ごとに一新します。時には変化が急激に起こることもあります」。そう説明するのはパリのヘアサロンLe 14の創業者でヘアスタイリストのオヴィグ・エトワイヤンだ。遺伝によるところが大きいとはいえ、「それまで髪をどう扱ってきたかも影響を与えます。老化をできるだけ送らせるため、日常のケアや生活スタイルの面で努力できることもあります。それでも時とともに、髪はやがて弱く、細くなり、生え変わる速度も徐々に遅くなります」。それゆえショートカットにすることになる。「ロングだと目に付くこうした印象を軽減するために」とドジコウスキーは言い添える。

2023年1月15日にロサンゼルスで開催された放送映画批評家協会賞授賞式に出席したジュリア・ロバーツ。photography: Steve Granitz/FilmMagic/Getty Images

一線を越える。

女性たちにとって、この現実を受け入れることは必ずしも簡単ではない。「ショートカットへの移行をできるだけ遅らせたいというクライアントもいます。一度この線を越えてしまったら、“妙齢の”女性というありがたくないカテゴリーに分類されてしまうような気がするからです。そうなったらもう二度と後戻りできないと。まさに思考のブロックです」とエトワイヤンは言う。「自分の30歳の時の写真を持参して、この頃と同じ髪型にしてほしいという女性もいます。彼女たちも心の底では、まったく同じにはできないとわかっています。でも美容師の口からそれを聞く必要があるのです」

ドジコウスキー自身も折り合いをつけたことを認めている。「美しくカールした、ボリュームがたっぷりある豊かな髪にずっと憧れていました。もちろん、私の髪はその対極です。細くてぺったんこ。肩まで伸ばすことももうできません。ブリーチのせいで髪があまりに疲弊して、脆くなって、毛先も切れやすくなっています。かといってベリーショートにするつもりもありません。好きではないから」と彼女は語る。その結果、「うなじまでの長さの構築的なグラデーションカットにしています。ある程度の長さもあるし、ボリュームも演出できます。いくつかの点で現実的な妥協をした結果です。自分にできることとできないことは自分でよくわかっています。いつかジゼルみたいなヘアにしたくなったら、ウィッグを買う! でもこのままで十分気に入っています。お互いに慣れていますから」

結論に入ろう。なぜならこれは年齢だけの問題ではないからだ。「髪次第という部分もあります。手を加えようにも素材がなければどうしようもない。それを受け入れるしかありません」とエトワイヤンは強調する。そしてこう付け加える。「目指すべきは、50代でティーンのような見た目であることではなく、いまの自分自身に合わせること、自分の年齢と調和することです」

【写真】50歳以上の女性たちのお似合いのカット22選。

ソフィー・マルソー(56歳)とカーテンバング photography: Abaca

ジュリア・ロバーツ(55歳)とセンターパート photography: Abaca

アンディ・マクダウェル(64歳)とカールのグレイヘア photography: Abaca

ケイト・ブランシェット(53歳)とラフなウェーブのロングボブ photography: Abaca

ジェニファー・ロペス(53歳)と高い位置でまとめたポニーテール photography: Abaca

ジェニファー・アニストン(53歳)とセンターパート photography: Abaca

シャルロット・ゲンズブール(51歳)とカーテンバング photography: Abaca

ナオミ・ワッツ(54歳)とシンメトリックなストレートボブ photography: Abaca

ジュリアン・ムーア(62歳)とタイトシニョン photography: Abaca

ジュリエット・ビノシュ(58歳)とウェービーボブ&センターパート photography: Abaca

モニカ・ベルッチ(58歳)とストレートロング photography: Abaca

シャロン・ストーン(64歳)とシャギーショート photography: Abaca

グウィネス・パルトロー(50歳)とセンターパート photography: Abaca

ジェーン・フォンダ(85歳)とショートのグレイヘア photography: Abaca

サラ・ジェシカ・パーカー(57歳)とタイトシニョン photography: Abaca

ハル・ベリー(56歳)とウェーブバング photography: Abaca

マリナ・フォワ(53歳)とショート photography: Abaca

カーラ・ブルーニ(55歳)とカーテンバング photography: Abaca

ジリアン・アンダーソン(54歳)とエアリーなまとめ髪 photography: Abaca

ヴァネッサ・パラディ(50歳)とナチュラルなウェーブヘア photography: Abaca

ティルダ・スウィントン(62歳)とベリーショート photography: Abaca

メイ・マスク(74歳)とロックなショートカットのグレイヘア photography: Abaca

元記事で読む
の記事をもっとみる