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スープストックの「安易に謝罪しない」姿勢、ハーバード大教授も認める手法だった

  • 2023.5.2
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離乳食無料提供をめぐる騒動に対し、スープストックトーキョーが出した声明が話題を呼んでいる。炎上を受け止めつつも、安易に謝罪しないという対応を見せた。ハーバード・ビジネス・レビューで説明された、正しい企業の謝罪とは?(フロントロウ編集部)

※アイキャッチ写真はイメージです。

店舗での離乳食対応も、声明での対応も評価された、スープストックトーキョー

スープ専門店を展開するスープストックトーキョー(Soup Stock Tokyo)の騒動に対する姿勢が評価されている。事の発端は4月18日、スープストックトーキョー全店で離乳食の無料提供を開始すると発表したことだった。

Twitter上では画期的な試みを歓迎する声がある一方、一部からは、「一人客が利用しづらくなる」「うるさくて落ち着かない」「一部の客だけ優遇するな」と言った批判も相次いだ。ネット上ではこれらの批判に対する批判も飛び交い、炎上状態になった。

騒動を受け、スープストックトーキョーは4月26日に声明を発表。会社が推進している「Soup for all!」という食のバリアフリーの取り組みに触れたうえで、「私たちは、お客様を年齢や性別、お子さま連れかどうかで区別をし、ある特定のお客様だけを優遇するような考えはありません」とコメント。「皆さまからのご意見を受け止めつつ、これからも変わらずひとりひとりのお客様を大切にしていきます。世の中の環境の変化が激しい中、社会が抱える課題もさまざまです。それらを私たちがすべて解決できるとは思っていません。でも、小さくてもできることもあるとまじめに思っています」と付け加えた。

日本では炎上に対しては謝罪する文化があるが、この安易に謝罪しない姿勢には、各方面から評価の声が挙がっている。

スープストックトーキョー、米研究も認める対応だった

今回のスープストックトーキョーの対応は、ハーバード・ビジネス・パブリッシングが発行する経営誌ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された『The Elements of a Good Company Apology(意味:企業による正しい謝罪の要素)』という記事でも適切な手法とされている。

ハーバード・ビジネス・スクールで経営実務について教えるサンドラ・J・サッチャー教授と研究員のシャリーン・グプタによって書かれた記事では、正しい謝罪をするときに大前提として企業側がやるべきことは、“謝罪が必要なのか判断すること”だとされた。

記事では、南カリフォルニア大学のピーター・キム教授らの研究に触れて、謝罪が必要かどうか判断する場合には、能力の問題なのか誠実さの問題なのかを判断することが大事だとしている。能力に問題とは、製品やサービスが機能しなかったり、約束通りに動かなかったりすること。誠実さの問題とは、企業が関係者を公平に扱わなかったり、自らの行動の結果に対して責任を取らなかったりすること。研究によると、能力的な問題では謝罪が信頼回復に効果的であることが分かったが、誠実さに関しては、企業が本当に誠実な行動をとっていたならば謝罪しない方が良い戦略であるとされた。

今回のスープストックトーキョーの件は、食のバリアフリーの取り組みを推進しようとする企業理念に基づいたもので、批判を大きく上回る称賛の声が挙がっていることからも、誠実な取り組みであることが分かる。だからこそ、同社は謝罪しない手法は取ったのだろうが、これは米研究でも支持されている手法だったのだ。

効果的な謝罪をするための3つのポイント

サッチャー教授らは前述の記事にて、スタンフォード大学経営大学院の社会心理学者であるロデリック・クレイマーとオハイオ州立大学のロイ・レウィッキーの研究に触れて、効果的な謝罪は以下の3つのポイントを満たすと説明した。

1つめ、誠実に「真実」を話す

まずは何が起こったのか、それに対して会社が何をしているのかを細かく説明し、事実に基づいて話す必要がある。目指すべきは、利害関係者を納得させ、信頼を回復すること。説明を聞いてより疑問が増えたというタイプの説明はNG。

2007年にiPhoneを発売後2ヵ月で大幅値下げして初期購入者を怒らせたときに、スティーブ・ジョブズが値下げの根拠やその判断が正しかったと考える理由を細かく説明し、その件からの学びについても言及した行為は、正しいやり方だとされている。

2つめ、誰のために行動しているかを明確にする

信頼を取り戻すためには、被害を受けた人々に焦点を当てて謝罪すべき。「この偉大な会社でのキャリアで、これほど心が痛んだことはありません」のような言葉(ボーイング社CEOの2019年の謝罪より)は、自分が焦点になってしまっているから控えた方が良いそう。また、謝罪するならばなるべく早い方が良いという。

3つめ、将来の行動がもたらす利益を示す

世間は今後の立ち回りに目を光らせている。企業として、どの程度の賠償を提供するのか、そして、再発を防ぐために何をするのか。これらを明確に保証できなければ、謝罪は単なる飾りになってしまう。具体的な行動で謝罪を裏付けない企業を人々は許さない。

2015年にAirbnbのホストが人種プロファイリングを行なっていることが発覚したとき、謝罪のなかで、差別を受けたゲストへの住居保証を含む行動計画を組み込んだAirBnb側の対応は高評価されている。

(フロントロウ編集部)

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