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イラストレーター・カナイフユキがもう一度見たい映画と、その理由『CURE』

  • 2023.5.3
イラストレーター・カナイフユキがもう一度見たい映画と、その理由『CURE』

恐怖心から湧いてくる想像力を、掻き立てられるから

ホラー映画が好きだったわけじゃないのですが、2年ほど前に偶然ネットで観てハマってしまった作品。
全体的にすごく怖いんですが、怖いだけじゃなくて美しい。暗い地下道、古い病院、交番など、いい寂れ具合の味のある建物が登場するんですが、よくそんな場所探したなという、すべてのシーンに貫かれた美意識にまずは圧倒されてしまいました。

印象的だったのは、冒頭で男が殺人を犯すシーン。暗くて不穏な映像とは対照的に、妙に明るくリズミカルなピアノの音が流れる。

終始そんな感じで、単に驚かせたり、気持ち悪い映像で恐怖を煽るのではなく、すごく不思議な感覚が残る映画でした。なので観賞後、頭の中にたくさんの疑問が湧いてきて。考察サイトを調べたり、黒沢監督のほかの作品を観たりして、少し情報を入れてから観直しました。

何回目かになると、最初はドキドキして見えてこなかった部分が浮かび上がる。別シーンや別作品とのつながりを発見したり、この人が闇堕ちしたのはここだったのか、とか気づいてさらに背筋が凍ったりという。

恐怖を喚起する仕掛けの奥深さ、そして恐怖という感情の底知れなさを感じて、自分でもホラーを描いてみたいと思いました。

Information

『CURE』

胸元を「X」の形に切り裂くという手法の別々の犯人による連続殺人事件を追う刑事・高部(役所広司)と謎の男・間宮(萩原聖人)をめぐるサイコスリラー。終始不穏な映像で心の闇を描いている。'97日/監督:黒沢清。

profile

イラストレーター・カナイフユキ

カナイフユキ(イラストレーター)

1988年長野県生まれ。イラストレーター、コミック作家として活動しつつ、エッセイなどのテキスト作品の創作や、それらをまとめたZINEの発行を行う。

Twitter:@f_k_offi
Instagram:@fuyuki_kanai

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