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女神降臨! 夢見るような花色&丈夫でコスパ最高のアイリスを育てよう

  • 2023.5.2
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ギリシャ神話に登場する天と地の架け橋となる虹の女神「アイリス」。5月は女神の名を冠した花、アイリスが咲き出す季節です。その花色は、虹の女神がまとうドレスのごとく高貴で美しく多彩。画家ゴッホもアイリスに魅入られ何枚もの作品を残し、イギリスの名園風景にも必ず登場する花です。夢見るような繊細な花色とは裏腹に、丈夫で何年も咲き続けてくれるコスパのよい宿根草。虹の女神をあなたの庭に降臨させてみませんか。

多彩な花色が虹にたとえられる美しい花「アイリス」

アイリス
Kylbabka, alfotokunst/Shutterstock.com

「アイリス」はギリシャ神話の虹の神イリスにその名を由来します(英名ではアイリス、仏名ではイリス)。ギリシャ神話では、イリスは虹を神格化した存在として七色に輝く衣をまとい、大きな翼を持つ美しい女神。天と地とを結ぶ使者としての役割をはたし、花言葉は「メッセージ」「吉報」「希望」などがあります。

アイリス
MaCross-Photography/Shutterstock.com

その花色は、青、紫、白、黄色、ピンク…。一つの花の中にいくつもの色がグラデーション状ににじんでいる様は、まさに虹の女神の衣のよう。花弁の縁が彩られるバイカラーやドラマティックなダークカラーまで多彩。花弁の縁がひるがえしたドレスの裾のようにヒラヒラと優雅なフリル状になっているのはジャーマンアイリスで、花形が大きく特に花色のバリエーションが豊富です。魅惑的な花色があふれるアイリスは画家ゴッホも心酔し、何枚もの作品を残しています。

アイリス
青が印象的なアイリス。Daniella Danilejko/Shutterstock.com
ゴッホが描いた「アイリス」
ゴッホが描いた「アイリス」1889年5月、油彩、ケディ・センター蔵

ゴッホはとりわけ紫と黄色の補色対比に惹かれ、弟のテオへの手紙の中にもその色彩について伝えています。

一枚の方は、真黄色のきんぽうげが一面に咲いた野原で、紫の花に緑の葉の菖蒲のある溝、背景に町、数本の灰色のねこ柳、青空の帯。1961年 岩波文庫 ヴィンセント・ファン・ゴッホ著、ボンゲル編、硲伊之助訳『ゴッホの手紙(中)テオドル宛』より
アイリス
ブルーの花の中に一輪黄色のアイリスを混ぜて花瓶に。ゴッホは花瓶に飾ったアイリスの作品も残している。Daykiney/Shutterstock.com
アイリス
魅惑的な黄色と紫とブラウンの入り混じるアイリス。Tootles, gardenia68/Shutterstock.com

アイリスにはまさしくゴッホが惹かれた紫と黄色の補色対比で構成されている花が多くあり、1輪でインパクトを残すユニークな花色も少なくありません。庭の中でもアイリスを用い、同様の色の組み合わせで花壇を構成する場合がしばしばあります。

黄色の花とアイリス
紫のアイリスの周りを黄色の花のアルケミラモリスやヘメロカリスで彩った補色対比の花壇。英国ヒドコート・マナー・ガーデン。

シャープなラインと優雅な花形で庭での映えも抜群!

石楠花とアイリス
淡い紫色のシャクナゲの花を背景に咲くアイリス。縦のシャープな線が背景と対照的で美しさが際立つ。

アイリスはその花色だけではなく、すっきりと縦に伸びる剣状の姿も美しいのが特徴です。花が終わった後にも細くシャープな葉はオーナメンタルグラスとして活躍してくれるでしょう。草丈は40〜70cmほどで、他の草花とも組み合わせやすい高さです。

アイリスとアリウム
青い縁取りの個性的なアイリスとアリウムの組み合わせ。John A. Anderson/Shutterstock.com
アイリスとバラ
バラの群生を背景に咲くダークパープルのアイリス。横浜イングリッシュガーデン。

アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ

アイリスは、アヤメ科アヤメ属の多年草。学名はIris。原産地は北半球の温帯地域です。日本では「アヤメ」というと「アイリス・サンギニア」を指しますが、広くアヤメ属(アイリス属)のカキツバタやハナショウブなども仲間です。

スラリとした粋な美人たちを「いずれ、アヤメかカキツバタ」と褒め称える言葉があります。どちらなのか見分けがたいのですが、花弁の付け根の模様で見分けることができます。

アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ
Mariia Romanyk, F_studio, Natalia van D/Shutterstock.com

付け根が網目状のものが「アヤメ①」、白い筋が「カキツバタ②」、黄色い筋が「ハナショウブ③」。また、生育環境の違いで大きく、陸生(アヤメ、ジャーマンアイリス、ダッチアイリス)水生(カキツバタ)、半乾湿地生(ハナショウブ)に分けられます。

なお、5月5日端午の節句に飾られる「ショウブ」はアヤメ科ではなく、サトイモ科です。ややこしいですが、それだけ魅力があり、古くから多くの園芸種も作出されています。

「ほととぎす 鳴くやさつきの あやめぐさ あやめも知らぬ 恋もするかな」

古今集には、読み人知らず(作者不明)としてこんな和歌が詠まれています。恋をしてあやめぐさの模様のように、どうにもならない思いの乱れに悩んでいる、といった意味でしょうか。素敵ですね。

ジャーマンアイリスの育て方

アイリス属の植物はいずれも、寒さにも暑さにも強く、丈夫で育てやすいです。その中でも陸生でガーデンに気軽に取り入れやすく、様々な園芸品種があり、多彩な花色を楽しめるジャーマンアイリスの育て方をご紹介します。

花期と植え付け時期

開花は5月半ばから7月半ば。五月晴れの蒼天の下、また梅雨の雨の日にも鮮やかな花を咲かせてくれます。草丈は40〜70cm。

ジャーマンアイリスの球根(塊状の根)は春と秋の2回販売されます。植え付けは3月と9月下旬が適期。

植え付け場所
ジャーマンアイリスの植え付け

ジャーマンアイリスは、日当たりと風通しが良くて、水のたまらない場所を好みます。酸性土を嫌うので、植え付け前に苦土石灰をまいておきます。また、腐葉土を入れておくと水はけがよくなって、根張りにいい影響を与えます。

ジャーマンアイリスは何より土が加湿になることを嫌うので、20〜30cm土を高く盛り、そこに40〜50cmくらい株間をあけ、芽を上に向けて、球根を土に軽く押しつけ、球根の半分が土の上に出るようにして植え付けます。

鉢植えの場合は24cmの素焼き鉢に1球を植えます。植え付け後は土が湿っていれば水やりは不要です。

ジャーマンアイリスの植え付け
半分球根を土表面へ出して植える。
肥料

植え付け後1年間は肥料を与えません。肥料を多く与えると病気が発生する原因になります。2年目以降、窒素分の少ない液肥を生育期間に3回ほど与えます。緩効性肥料を株間に与えてもいいでしょう。

病虫害

病気で注意するのは、株元が腐り、葉が枯死する軟腐病。株元に雑草が茂ると日当たりや風通しが悪く病気の発生原因になるので、雑草をはやさないように清潔な環境を保つようにします。

増やし方

ジャーマンアイリスは植えっぱなしでよく増えますので、2〜3年に1度株分けをかねて植え替えをします。株が元気になり、花付きもよくなります。

植え替え適期は9〜10月。清潔なナイフやハサミで、一つの株に芽が1〜3個付くように株元を切り分けます。分けた株は葉を半分くらい切り落とします。それぞれの球根を土から背中が半分くらい出るように浅く植えつけてください。

ジャーマンアイリス
Maya Kruchankova/Shutteestock.com
品種

ジャーマンアイリスは1800年代にドイツやフランスで品種改良が進み、現在ではアメリカで様々な品種が作り出されています。

ひらひらした透き通る花弁が魅力的で、色も多彩。アイリスは立ち上がる上弁、垂れ下がる下弁で構成されていて、上弁と下弁が違う複色種、また上弁と下弁が同じの単色種、花弁を異なる色で縁取る覆輪種などがあります。

春と秋に開花が楽しめる二期咲き種、甘い上品な香りを漂わせる芳香種などもあり、よりどりみどり迷うほどの豊富なラインアップの中から好みの花が選べます。

カキツバタ、ハナショウブの楽しみ方

菖蒲園
pianoman555/Shutterstock.com

カキツバタは水生植物ですから、根元が水の中にひたっていなければなりません。鉢に植えたカキツバタを水鉢に入れることで、簡単に育てることができます。メダカなどを飼っているビオトープに入れても楽しめます。

一方、ハナショウブは水生植物ではありません。乾燥しすぎないところであれば、どんな場所でも育てられます。ただし、つぼみを持ち開花するころは十分な水やりが必要です。乾燥すると花がきれいに開かずしぼんでしまいます。鉢植えでは鉢受けにたっぷり水を張っておきましょう。

5月下旬から6月にかけて各地の「花菖蒲園」でハナショウブが開花を迎えます。

明治神宮御苑内の花菖蒲田(150種、1500本)、東京都葛飾区の堀切菖蒲園(200種、1500本)などが有名ですが、日本各地にもっと規模の大きい花菖蒲園があります。お住まいの近くの花菖蒲園に、ぜひおでかけになってください。ハナショウブの美しさと同時に伝統的な日本庭園の趣きをも味わえることでしょう。

Credit
文&イラスト / 二方満里子

ふたかた・まりこ/早稲田大学文学部国文科卒業。CM制作会社勤務、専業主婦を経て、現在は日本語学校教師。主に東南アジアや中国からの語学研修生に日本語を教えている。趣味はガーデニング、植物観察、フィギュアスケート観戦。

写真/3and garden(記載外)

写真(表記以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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