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「私の居場所はありません」ノンバイナリー俳優リヴ・ヒューソン、エミー賞不参加を表明

  • 2023.5.2

昨年のエミー賞で作品賞や主演女優賞など7部門にノミネートされた『イエロージャケッツ』。出演する俳優のリヴ・ヒューソンが、2023年エミー賞に参加しないと表明した。理由は、アワードでの男女の区別にあるという。(フロントロウ編集部)

リヴ・ヒューソン、エミー賞の性別カテゴリーに複雑な思い

飛行機の墜落事故で遭難した女子サッカーチームの生き残りを賭けたサバイバルを描く、サスペンスドラマ『イエロージャケッツ』。その狂気に満ちたシナリオは視聴者や評論家から高く評価されている。米テレビ界のアカデミー賞と呼び声の高いエミー賞でも、2022年の主演女優賞にメラニー・リンスキー、助演女優賞にクリスティーナ・リッチがノミノートされた。

画像: 『イエロージャケッツ』シーズン1がU-Nextにて配信中。© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved
『イエロージャケッツ』シーズン1がU-Nextにて配信中。© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved

2023年3月からはシーズン2の米配信が始まり、2023年9月に開催される第75回エミー賞授賞式でも『イエロージャケッツ』キャストのノミネートが有力視されている。ところが、メインキャストの一人であるノンバイナリー俳優のリヴ・ヒューソンがエミー賞への不参加を表明した。

米メディアVarietyのインタビューでリヴ本人が明かしたところによると、リヴは制作会社のショータイムと話し合って、ノミネート選考辞退を決めたという。理由として、エミー賞では性別によってカテゴライズされてしまうことを挙げた。女性・男性のどちらかという二元の枠組みに当てはまらないノンバイナリーであるリヴは、「演技部門に私の居場所はありません」と訴える。「女優として応募するのは不正確でしょう。男子と一緒にされるのも納得できません」と葛藤を語り、「私のための場所がないので、応募することができません」と話した。

画像: リヴ・ヒューソンはヴァン役を演じている。© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved
リヴ・ヒューソンはヴァン役を演じている。© Showtime Networks Inc. All Rights Reserved

エミー賞を主催するテレビアカデミーは2022年から「俳優」「女優」のほかに、「パフォーマー」という名称を使用しても良いとルールに明記した。ただし、受賞カテゴリーは依然として性別で分けられたまま。応募時にはどちらかを選ばなければならず、どちらにも居場所がないと感じたリヴは選考に参加することを断念したということのよう。

画像: リヴ・ヒューソンは16歳の時のノンバイナリーであるとカミングアウトした。
リヴ・ヒューソンは16歳の時のノンバイナリーであるとカミングアウトした。

アワードがジェンダーニュートラルに移行することにはマイナスも

ショービズ界には、演技部門など性別差が関係ない賞がなぜ男女別になっているのかという疑問が長年あった。ジェンダーで区別しない平等な舞台にするため、さらに、ノンバイナリーの人など多様なジェンダー・アイデンティティの人にインクルーシブな舞台にするため、近年、エンターテインメントの主要な賞で性別カテゴライズをなくす動きが活発になっている。

2017年にはMTVビデオ・ミュージック・アワードが先駆けて、男女別のカテゴリーをなくしてジェンダーニュートラルにシフトした。2021年からはゴッサム・インディペンデント映画賞(ゴッサム賞)が男女別のカテゴリーをなくした。これらの動きにより、ノンバイナリーの演者たちも葛藤なく応募できるようになった。

一方、性別カテゴリーをなくすことには弊害もある。例えば、アカデミー賞監督賞は昔から性別で分けられていないが、95年の歴史で女性監督がノミネートされた数はたったの7回。男女が一緒のカテゴリーは、ジェンダーバイアスなどのせいで、結果的に男性優位になる傾向がある。実際に、イギリスの音楽の祭典ブリット・アワードでは、2022年から最高賞をジェンダーニュートラルにして「今年の音楽家賞」としたところ、候補者が男性のみになって物議を醸した。

アカデミー賞受賞俳優のジェイミー・リー・カーティスも、「カテゴリーからジェンダーをなくすということについては、多くの女性から機会を奪ってしまうのではないかということも懸念しています」と、アワードをジェンダーインクルーシブにすることと女性の機会を奪わないことの両立の難しさを語った。一方、リヴのような俳優が存在するのも事実。議論と検証を続けながら、最もフェアでインクルーシブなアワードの在り方の模索は続く。(フロントロウ編集部)

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