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ハリウッド制作陣に浸透する日本アニメ文化、『聖闘士星矢 The Beginning』監督&主演インタビュー

  • 2023.5.2
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「アニメを観て育った世代が映画を作る世代になっています」。4月28日(金)に劇場公開される映画『聖闘士星矢 The Beginning』のトメック・バギンスキー監督は、ハリウッドに浸透するジャパニメーションの影響をそう語る。本作がハリウッド初主演となる新田真剣佑氏と共に、フロントロウ編集部のインタビューに登場。

社会現象になった『聖闘士星矢』が実写化

『ドラゴンボール』や『北斗の拳』などが連載されていた1980年代の週刊少年ジャンプ黄金期に掲載スタートした『聖闘士星矢』は、バトル漫画でありながら、ギリシア神話をストーリーやモチーフに使い、強い女性キャラクター像を提唱するという異色の作品づくりで大ヒット。フィギュアや玩具は全国的に大ヒットし、88の星座にインスパイアされた鎧はコスプレ文化の発展に貢献するなど、まさに社会現象と呼べるブームとなった。

そして『聖闘士星矢』は世界にも進出。ヨーロッパをはじめ80の国と地域で放送され、実写版『聖闘士星矢 The Beginning』のトメック・バギンスキー監督も、「私と『聖闘士星矢』の出会いは90年代後半です。ポーランドで『セーラームーン』などと一緒にテレビ放送されていました」と、10代の頃に当時の熱狂に触れていたことをフロントロウ編集部に明かした。とくにラテンアメリカでは『聖闘士星矢』が社会現象に。これまで、2人のファンがギネス世界記録に“世界最大数の『聖闘士星矢』グッズのコレクション”を持つ人として登録されたが、両方ともラテンアメリカ人だったことからも、その驚異的な人気が分かる。

画像: 星矢役 新田真剣佑
星矢役 新田真剣佑

そんな『聖闘士星矢』が、『聖闘士星矢 The Beginning』として実写化。主人公の星矢を新田真剣佑が演じ、監督にはポーランド出身のトメック・バギンスキー、アメリカやイギリスからも俳優が集まり、国際的なクルーで、地球を舞台にした女神や聖闘士(セイント)たちの闘いを映像化する。

ジャパニメーションが持つ「哲学」と「技術」を反映したい

画像: アルマン・キド役ショーン・ビーン
アルマン・キド役ショーン・ビーン
画像: グラード役ファムケ・ヤンセン
グラード役ファムケ・ヤンセン

「ハリウッドにおける、日本のアニメや漫画作品の実写化のドアは今や開け放たれています」とフロントロウ編集部に語る、バギンスキー監督。「そのうえで最大のチャレンジは、それを正しく作れる人材を見つけることです。アニメを知っていて、理解していて、アニメが好きで、何が求められているか分かっている人材。欧米では、アニメを観て育った世代が映画を作る世代になっています。彼らはアニメに関する知見があるため、今後はもっともっと良作が出てくると思います」と付け加えた。

“今の制作陣がアニメ世代”というその言葉通り、近年、ハリウッドにはアニメ好きなクリエイターたちの作品において、アニメの影響があちこちに見える。例えば、『ロッキー』フランチャイズの最新作『クリード 過去の逆襲』のファイトシーンひとつにも、『NARUTO -ナルト-』や『はじめの一歩』などの影響があるというが、これは、本作の主演でありプロデューサーでもあるマイケル・B・ジョーダンがアニメを観て育ったアニメ好きであることが背景にある。

そして、バギンスキー監督自身も、アニメの影響を受けて育ったクリエイターのひとり。ビデオゲーム『ウィッチャー』のNetflix実写版の製作総指揮を務めたバギンスキー監督は、「私はアニメと育ったので、20~25年前に短編アニメを作っていた時も日本のアニメのスタイルに影響を受けていました」と振り返る。

画像: シエナ役マディソン・アイズマン
シエナ役マディソン・アイズマン
画像: マリン役ケイトリン・ハットソン
マリン役ケイトリン・ハットソン

そんなバギンスキー監督がアニメを実写化するうえで大切にしたのが、ジャパニメーションが持つ「哲学」と「技術」だという。「両方とも非常に重要なことです。まず、哲学的なことは、感情面の描写です。日本のアニメの多くは成長物語です。大人の階段を上るなかで、どういう責任を負い、犠牲を払うのかという哲学的なところがある。一方、ビジュアル面については、アニメでは会話のシーンは静的なのに、アクションシーンは非常にオーバーだという傾向がある。実写ではアニメ特有のこの対称性を意識したかったです」とバギンスキー監督。

ちなみにバギンスキー監督としては、アニメのスタイルに影響を受けたという点で史上最高の作品は、1999年の『マトリックス』だという。そのため、『聖闘士星矢 The Beginning』の制作においては、「多くを参考にさせてもらった」と語る。

新田真剣佑氏の起用を決めた、運命のオーディション

主人公の星矢は日本を代表するアイコニックなキャラクターなだけに、日本人がキャスティングされることは当然だったそうだが、そんなバギンスキー監督が選んだのが、今作がハリウッド主演デビュー作となる新田真剣佑。決め手は、バギンスキー監督と新田氏のあいだで交わされたオーディション。「真剣佑のことはいくつかの作品で知っていましたが、どれも暗くシリアスな役ばかりだった。一方、オーディションで会った彼はニコニコしていて、リラックスしていて、楽しい人で、このエネルギーこそ私が欲しているものだと思ったのです。彼が私に与えた印象と同じものを観客が持ってくれたら、観客はきっとこのキャラクターを愛してくれるだろうと思いました」と監督は振り返る。

一方、新田氏は、「あのオーディションは強く記憶に残っています。自分にとっては非常に重大なオーディションだった。最後のオーディションでしたからね」と、当時の緊張がよみがえるように語った。

画像1: 新田真剣佑氏の起用を決めた、運命のオーディション

そして舞台裏でも、日本からの才能が参加した。プロデューサーとして東映アニメーションの池澤良幸氏などが名を連ねたほか、日本から多数のクリエイターたちが参加。音楽も池瀬広氏が担当した。

「カメラのうしろには、アジア系の人がたくさんいました」と語る監督は、「カメラの裏側の多様性は、スクリーンにポジティブな影響を与えると思います。才能のある人はロサンゼルスだけでなく世界中にいて、彼らだって、このような大作映画で働く機会を得られるべきです。私自身、ポーランド出身ですが、国際的な撮影現場で働くことを好みます。なぜなら、多様な文化背景を持つ人々が参加することで、彼らの繊細なセンスや視点が作品にプラスをもたらすからです。同じ人ばかりで作っていると、似通った作品ばかりになってくる。そういう意味でも、カメラの後ろの多様性は作品づくりにおいてプラスになりますし、今後もこのような映画作りをしていきたいと思っています」と、自身の経験から多様な人々が作品作りに参加することの利点を語り、「この点を忘れがちですが、レプリゼンテーションとはカメラの前だけでなく後ろにもあるべきことなのです。責任者レベルだけでなく、それぞれのスタッフの間でね」と付け加えた。

そして、「大作であること、ハリウッド主演だということで、けっこう色んなことを心配していたんです」と語った新田氏は、バギンスキー監督に見守られながら、星矢というアイコニックなキャラクターになることができたという。

「監督に相談に行くと、毎回、『大丈夫だ』しか返ってこないんです。最初は不安だらけだったのですが、監督を信じて、自分が画にどう映っているとかも気にせず、思うままに演じてみたうえで、監督にOKかOKでないか確認して、全部監督に任せて、監督の大きな船に乗って、精一杯がんばりました」とフロントロウ編集部に振り返った新田氏。

画像2: 新田真剣佑氏の起用を決めた、運命のオーディション

トメック・バギンスキー監督と新田真剣佑氏による『聖闘士星矢 The Beginning』は、4月28日より劇場公開される。(フロントロウ編集部)

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