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水資源も大切に! プライベートガーデンや家庭菜園で実践するSDGs

  • 2023.5.1

日々の暮らしの指針の一つとして、すっかり定着したSDGs(持続可能な開発目標)。その目標の一つには、水資源を守ることに関するものもあります。ガーデニングでは水がたくさん必要ですが、日々のちょっとした心がけが節水につながり、水道料金の節約にもなりますよ。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、日々の節水方法とガーデンのエピソードをご紹介します。

ガーデニングシーズンの到来!

初夏
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Mueringer, Christian

春になると、木々や低木、草花など、すべての緑が爆発的に成長を始めます。わずかな期間に驚くばかりの量の葉が展開し、まるで新入生の笑顔のように明るく輝く爽やかな新緑の葉は、周りの景色を生き生きとしたものに変えてくれます。どこを見ても冬の殺風景な光景から、さまざまなトーンの葉緑に変わり、ソフトピンクや濃いピンク、白、紫など道端は色とりどりの美しいツツジでどこまでも彩られています。公園のトレリスや民家の玄関前は、時折フジの花で彩られ、中には大きな木に絡みついているものもあります。

高速道路や一般道沿いの木々や低木の成長には、いつも驚かされます。生育の程度は環境にもよりますが、こうしたところで生き残れるのは生命力の強いもののみ。もっとも木陰を作ってくれる木があれば、少し弱い植物も、晴天が続いても頻繁な水やりを必要としません。こうした微気候や、道路沿いで植物を世話してくれる親切な人々が、公共空間の緑が育つ助けになるのでしょう。

先日、東京の道路で、大きなハサミを持って玄関前の公共スペースのグラスの剪定をしている、70代ほどの男性を見かけました。1㎡もないほんの小さなスペースですが、植物の生育や管理者にとっては確実に助けとなることでしょう。こうした手入れは、家の周辺をきれいに保つのにも役立ちます。彼の姿を見かけたのは早朝6時頃。朝のルーティンの一環なのでしょうか。このくらいの時間は、日々の水やりにもちょうどいい時間です。

ガーデニングで心がける節水術

水
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

全ての人や動物、植物にとって欠くことのできない資源、水。限りある水を分け合ったり、浪費や汚染を防ぐことは、未来の世界の為に重要な課題で、SDGsにもつながります。ガーデニングでは水やりが不可欠ですが、私の家の1カ月の水道料金は、一般的な家庭の水道料金の平均よりも低く抑えることができています。その理由は、家族全員で節水を意識していること。例えば日々の暮らしの中で簡単に実践できる節水術として、調理時に野菜を洗った水をバケツに集め、その水を水やりに利用しています。水をバケツに集めたり、そのバケツを持ってガーデンに水やりに行く一手間はかかりますが、この手間のお陰で一日に何度も外に出る理由が生まれ、じつは健康的でハッピーなブレイクタイムにもなっています。

また、家庭菜園から野菜を収穫する際は、小さな屋外用シンクで洗い、この水もウィンドウボックスや鉢植えの植物などの水やりに再利用します。こうすれば、水を節約できるだけでなく、収穫した野菜にまだ付いている土を、排水溝に流さずにガーデンに戻すことができます。米のとぎ汁も水やりに利用します。

水
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

水を再利用してみると、意識しなければどれほどの水が1回だけの利用で排水されているかがよく分かります。先日、旬のタケノコを調理するために大量の水を使いましたが、ゆで汁も冷ましてガーデニングに利用してしまいました。

また、ガーデンで水を節約する効果的な方法は、ローメンテナンスでも大丈夫な、乾燥に強い植物を選ぶこと。また、地面を覆って直射を遮ることでも乾燥を防ぎ、水の節約につながるので、グラウンドカバーやマルチを上手に活用するのもおすすめです。鉢植えで育てている場合は、水を貯める仕組みの付いた鉢を利用するのも一案です。

水やりの道具や水の使い方も点検を

水
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

節水のためには頑丈で実用的な水栓を使い、ホースにつなげた部分から、水が漏れていないかもよく確認しましょう。先日我が家でも水漏れが発生しましたが、原因は小さなプラスチックのシーリングリングが一部欠けていたことでした。問題の部品を交換した後は、水漏れすることなく使えています。ホースも重要で、素材が傷まないよう直射日光の当たらない日陰の場所に置き、もし穴があいていたら、修理するか交換しましょう。また、ドイツでは、ガーデンに雨水タンクを設置して水を貯め、水やりに利用することも一般的です。

水
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

このように日々節水に勤しんでいるのですが、先日見かけた市民農園での出来事で、水やりの「常識とは何か」を改めて考えさせられました。

私が利用している60区画ほどの市民農園には井戸があり、利用者は誰でもこの贅沢を享受することができます。この4月に20人ほど新しい利用者の方が増えたのですが、こうした初心者さんはまだ経験が浅く、無駄遣いをせずに手動の井戸を使うコツがまだ呑み込めていないようです。井戸から水を汲む際に半分ほどもこぼしてしまったり、黒マルチを敷いたジャガイモ畑に水やりする時はマルチの上から全体に水をかけ、マルチに遮られて地面にあまり届いていない様子だったり…。横目にもったいないなあと眺めてしまいました。こうした人がどのように家で水を使っているかは少し気になりますが、井戸の水汲みなどを通して、水を浪費しない使い方を学んでいってくれるといいなと思います。

水やりから生まれるコミュニティ

水やり
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

水やりの時間は、ご近所の方とお近づきになる絶好の機会でもあります。たくさんの人が通り過ぎ、挨拶をしてくれる方や、興味ありげに見ている人、中にはガーデンについて尋ねてくる人もいます。こうしたちょっとした会話は、ガーデンに関する情報交換の場にもなりますし、単に気持ちのよい一日のスタートとしても楽しいものです。こうした時間を通して、私と同じくガーデニングや植物などに興味を持っている人や、アウトドアを楽しんでいる人、何年もお互いを知らずに近くに住んでいる人とつながるきっかけになることもあります。

先日、10年来の素敵なご近所さんから、大きく育ちすぎて抜けなくなった鉢植えの植え替えを手伝ってほしいとお願いされました。年配の方にとっては、大きくなりすぎた植物の植え替えはそれなりの重労働です。どうにか取り出したらとても感謝され、その話の中で夏野菜の話題になりました。私がちょうど野菜苗を購入中だと言うと、よければ彼女の大きな庭の一部に植える分も一緒に購入する代わりに、収穫をシェアしませんかと提案を受けました。苗や培養土、肥料などは重いですし、一番近いガーデンショップでも2km以上離れた場所にあるため、自転車や車などの移動手段がなければこうしたガーデニング用品を購入するのは簡単ではないのです。

定植と水やりが済めば、日々の手入れは彼女がするので、収穫の楽しみは半分ずつにしましょうとのこと。庭の一角を使わせてもらえることは一般的ではないので、とても嬉しい提案でした。

家庭菜園
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

このように苗の購入や植え付け作業の代わりに、植物を育てるための庭の一角を提供してくれる寛大な庭主さんがもっと増えたら、どんなに素敵でしょう。近所の雰囲気もより明るくなるに違いありません。自家栽培の野菜や、ミツバチが喜び、花束にもなる花がもっと増えることでしょう。

ガーデンの手入れに手が回りきらない庭主と、植物を育てたいけれどスペースが無い人の両方の希望を叶え、一緒に交流することができます。年配の方も、庭でやることができればより屋外に出るモチベーションになることでしょう。若い家族にとっても、いろいろな年代の方と交流する機会になるのではないでしょうか。

一カ所で地植えにすれば、水の使用量も少なくて済みます。庭がない家でも、子どもたちは植物を育てる楽しさに触れることができますし、たくさんの収穫があれば、家族や友達とシェアすることもできます。誰にとっても嬉しいこんな仕組み、皆さんはどう思いますか?

写真/Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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