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若手の中でもひときわ輝く【女優・伊藤沙莉さん】「自分は王道のヒロインタイプではないと思っていた」

  • 2023.4.30

若手実力派女優のなかでも今、ひときわ輝いてみえるこの人。一筋縄ではいかない役どころを軽妙かつリアルに演じ、映画やドラマはもちろん、CM、声の出演まで引っ張りだこ。〝時代に求められる人〟の素顔をたっぷり見せてもらいました!

お芝居に関しては、家族が一番辛口

出典: 美人百花.com

――演技のうまさには以前から定評がある。どんな役もナチュラルで深みがあり、「この人が出るなら見てみたい」と思わせる力がある人だ。さらに、バラエティーなどで見せる明るく飾らないキャラクターも伊藤沙莉さんの魅力。今回の取材でも、1つ1つの質問に対して、身振り手振りを交えながらフルスイングで答えてくれた。そんな伊藤さんが出演する映画『宇宙人のあいつ』は、異色のエイリアン・コメディー。主人公の訳アリな宇宙人を演じた中村倫也さんを筆頭に、伊藤さん、バナナマンの日村勇紀さん、柄本時生さんが4兄妹を演じるというだけで期待が高まるが、「自分よりも大切な家族」のために奮闘する4人の姿はコミカルに描かれつつ切なさもある。伊藤さんが特に好きなキャラクターは弟妹たちの親代わり、日村さん演じる真田家長男・夢二だそう。

「常に熱くて、一生懸命生きていて、だけど気の抜けたところもあって、そのあんばいが人間らしくてすごく好き。途中から愛があふれすぎて、たぶん2シーンぐらい勝手にハグしてるんですよ。最終的にはみんなが愛おしくて、兄妹全員巻き込んでハグしてました。この兄妹でいられて幸せでした」

出典: 美人百花.com

――ロケ地・高知での思い出に残るエピソードは?と聞くと、やはり〝お兄ちゃん〟の話に。

「毎晩のように行われる〝日村さんに台詞を叩きこむ時間〟がありました。これは倫也さん発信で、『口に出したほうが早いから、みんなでごはんを食べながらやろうよ』と。映画でも食事をしながらしゃべるシーンが多かったので、それがリハーサルにもなったんです。それで、たまに写真を撮って、監督に送って〝やってます〟アピールをして(笑)。もともと仲の良い人たちですが、そこでの時間でもっと絆が深まった感じもありますね」

――さて本作には、食事中に兄妹の誰かが「真田サミットを始めます!」と開催を宣言し、隠し事を打ち明ける重要なシーンがある。実は伊藤家でも、毎晩サミットが開かれていたのだとか。

「伊藤家はもっと強引で、宣言なしでサミットが始まります。今でも家族が集まると、私や姉は、今日こんなことがあった、こんなことをしちゃったと何でも話しますし、兄(お笑いコンビ・オズワルドの伊藤俊介さん)は食卓を『すべらない話』のネタ見せの場にすることが結構あります。それでうちらが笑うと、『よしよし(ガッツポーズ)』みたいな。基本的にうるさい家族で、ひたすらしゃべっているんです。でも、口に出すことによってお互いを理解できるから、それがうちの家族が仲のいい理由の1つかなと思います。お芝居に関しては、家族が一番辛口。『また同じような芝居してるね』とか普通に言われるので、悔しいと思えばもっとできることはないか探し、逆にほめられれば舞い上がります。家族にモチベーションを上げてもらっているなと感じるんです」

自分は王道のヒロインタイプではないと思っていた

出典: 美人百花.com

――もはや誰もが女優としての才能を認める伊藤さんだが、彼女にも苦しい時代はあった。

「これまでヒロインオーディションはたくさん受けました! でも、同時にコンプレックスがあった。自分は王道のヒロインタイプではないと思っていたからです。『私なんて……』と思っているから、どんな顔をして審査員の前に立てばいいのかわからなくて。なので、オーディションで堂々と立っているために、心の中ではあえて『私が受けるのは友達役だ』という意識でいました。それで、何かほかの役に引っかかったらいいなあと思いながら受けていたんです」

――今となっては信じがたい話だが、もともと自己肯定感が低く、ヒロインを演じることに居心地の悪さを感じていたという。それが、来春からはNHKの朝ドラでついにヒロインを務める。しかもオーディションなしの抜擢だ。

「本当に、まさか、まさかの! うれしさを実感したのは、やはり家族に伝えたとき。母は『浮わついてちゃダメ。こういうときこそ気を引き締めないと』なんて現実的なことを言っていましたが、心から喜んでくれたのはわかりました。あとは、エゴサをしすぎないよう注意されました(笑)」

自分を満足させられる人は人生を楽しめる

出典: 美人百花.com

――印象的だったのは、「立場は変わっても、お芝居をすることは変わらない」という力強い言葉。トップに名を連ねる作品が増え、担うものが大きくなるにつれて、堂々と真ん中に立てる自分に変化してきたのかもしれない。現在28歳。10年後の自分がどうなっていたいか、聞いてみた。

「もう少し心に余白を持っていたいですね。今はまだ何かあるといっぱいいっぱいになってしまう。そうなると悪循環で、部屋は散らかるわ、普段できているはずの人へのやさしさのレベルは下がるわ、てんてこ舞いになるんです。でも、先輩の女優さんたちを見ていると、気持ちの切り替えや割り切りがすごくうまい。それでいてドライではなく、それってカッコいいな、職人だなと。自分も心に余白を持って、何が起きても動じない、何なら笑って流せるぐらいの状態で立っていたい。まだできていないからこそ、10年後の目標にしたいなと思います」

――最後に、伊藤さんにとっての「美人」について聞くと、「何がそんなに楽しいのかわからないけど、楽しそうな人」という答えが返ってきた。

「実はこれ、兄が私にずっと言い続けてきた『好きなタイプ』なんです。たぶん完全に母なんですけど(笑)。造形の美しさも目にみえてわかりやすくありますが、それより自分の機嫌の取り方を知っていたり、自分で自分を満足させられる人は人生も楽しめるし、笑顔が増えて、出るオーラも変わり、総じて美しい人になるのではないかと私も思います」

――ちなみに、伊藤さんが自分の機嫌を取るために欠かせないものは、「お酒♡」だそう。

「どんなに大変な撮影でも、これが終わったらビールが待ってる♪と思うだけで機嫌がよくなるんです!」

チュールドレス¥132,000、イヤーカフ¥30,800/ともにMARGE(EICHI Inc.) トップス¥19,800/HAKUJI(ブランドニュース) デニム¥41,800/RYU KAGA サンダル¥39,600/LAURENCE(THE GRAND Inc.) その他/スタイリスト私物

Profile

伊藤沙莉(いとうさいり)

1994年生まれ、千葉県出身。2003年にドラマデビュー。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)で注目を集め、ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、ブルーリボン賞助演女優賞、山路ふみ子女優賞、文化庁芸術祭放送個人賞など受賞歴も多い。近年の主な出演作に映画『ちょっと思い出しただけ(』2022)、ドラマ『ミステリと言う勿れ』(2022)『、拾われた男Lost man Found(』2022)、『ももさんと7人のパパゲーノ』(2022)、舞台『首切り王子と愚かな女』(2021)、『世界は笑う』(2022)、『パラサイト』(2023)など。主演を務める映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(2023)の公開が控えている。

Information

映画「宇宙人のあいつ」

出典: 美人百花.com

家族になりすまして23年。人間の生態を調査しに土星から来た宇宙人は、真田家の4兄妹の次男・日出男として暮らしていた。そんな彼に地球を離れる日が訪れ、限られた時間のなかでやり残したことをしようとするが、兄妹弟にさまざまな問題が降りかかる。

監督・脚本:飯塚健 出演:中村倫也、伊藤沙莉、日村勇紀(バナナマン)、柄本時生ほか

2023年5月19日(金)より全国ロードショー

掲載:美人百花2023年5月号「幸福美女図鑑」

撮影/中村和孝 スタイリング/吉田あかね ヘアメイク/岡澤愛子 取材・文/みやじまなおみ 再構成/美人百花.com編集部

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