古都の若者たちを通して、社会と個の関係を見つめ直す。

京都を舞台に開催される国際的な写真祭KYOTOGRAPHIE。初開催から11周年を迎えた今年のテーマは、BORDER＝境界線。今回の展覧会に出展した６人の女性アーティストにインタビュー、彼女たちが向き合う“境界線”とその表現に迫る。

Coco Capitán

さまざまなファッションブランドとのコラボレーションでも話題のスペイン人アーティスト、ココ・カピタン。日常的なシーンを独特なフレーミングで捉えた写真や、手書きで綴ったシンプルな言葉といった作品には、彼女の美しくデリケートな詩性が宿る。映像や油絵など幅広い表現手段を用いるが、その作品世界で共通するのは、社会的基盤や規律に縛られながらも自由や自我を求めて生きる無垢な人間性への興味だ。今回のKYOTOGRAPHIEでの展示は、京都の伝統的な家庭で育ったなど10代の姿にフォーカスしている。

無題。2022年 ©Coco Capitán

「昔から変わらない時間が流れているかのような京都ですが、現代の生活や人生は当時とはまったく異なるもの。そんな古都で生きる若者たちが何を考えているのか、どのように伝統や儀式を受け入れて暮らしているのかを知りたかったのです」

無題。2022年 ©Coco Capitán

昨秋、京都に2カ月滞在したココは、京都の街で出会った少年少女たちの姿をフィルムカメラで撮影し続けた。「写真は自然に発生する事象を切り取る日記的な表現手段」という彼女にとって、この撮影は彼らを観察する時間だった。

「可能な限り、私の存在が彼らの邪魔にならないようにともに過ごしました。目の前で流れているこの“映画”を、私という存在によって編集されることなく、観ていたいと思ったから」

刹那な時間の流れを感じさせる、ありのままの若者たちの姿。ココが捉えた一瞬一瞬の輝きが、社会や時代に翻弄されながら個を生きようと足掻き続ける私たち自身をも照らし出す。

ココ・カピタン1992年、スペイン・セビリア生まれ。ロンドンとマヨルカ島を行き来しながら制作活動を行う。2016年ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの写真分野の修士課程を修了。写真、絵画、インスタレーション、散文など多岐に渡り作品を手がける。

「Coco Capitán」With the support of LOEWE FOUNDATION and HEARST FujingahoASPHODEL大西清右衛門美術館東福寺塔頭 光明院詳しくは「KYOTOGRAPHIE」のHPにて

KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭 2023『BORDER』●開催中〜5/14www.kyotographie.jp

＊「フィガロジャポン」2023年6月号より抜粋