1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【取材】「愛そのものが政治的になり得る」リナ・サワヤマがLGBTQ+の権利に声をあげ続けるワケ

【取材】「愛そのものが政治的になり得る」リナ・サワヤマがLGBTQ+の権利に声をあげ続けるワケ

  • 2023.4.21

リナ・サワヤマは4月22日(土)・4月23日(日)に代々木公園にて開催される「東京レインボープライド2023」のテーマソングである自身の楽曲「This Hell」で、LGBTQ+コミュニティから権利が奪われている世の中を「地獄」になぞらえ、「このまま自分らしくあり続けたら私は地獄行きみたい」と歌う。自らもバイセクシャルであることをカミングアウトしているリナが、LGBTQ+の権利のために声を上げ続ける理由とは? フロントロウ編集部とのインタビューで語ってくれた発言を振り返る。

LGBTQ+のために声をあげ続けてきたリナ・サワヤマ

「私はバイセクシャルで、私は本当に誇りに思っています」。リナ・サワヤマは自身初の日本でのパフォーマンスとなったサマーソニック2022のステージで、自身のセクシャリティについてバイセクシャルだと説明したときから、ここ日本でもLGBTQ+コミュニティのために声をあげ続けてきた。

画像: ©️SUMMER SONIC

「私がここで同性婚をしようとしたら、出来ないのです。なぜかというと、日本では禁止されています。G7の国の中でも唯一、そのプロテクション、LGBTQの差別禁止(を定める法律)がない国。同性婚のプロテクションがない国です。私は日本人であることを誇りに思っていますが、これはすごい恥ずかしいということです」とリナは続けて、サマーソニックのステージで同性同士が結婚する権利を訴えた。

2018年に「カミングアウト・ソング」と呼ぶファンの間でも人気の高い「Cherry」をリリースして世間にカミングアウトして以来、リナのLGBTQ+の権利に対する姿勢は一貫している。 新潟県に生まれ、2歳でイギリスに移住して以降も日本国籍を保有し続けているリナは、同曲もパフォーマンスされた2023年1月開催の初となるジャパンツアーの東京公演のステージで、次のようなスピーチを披露した。

「私の音楽のモットーは、ありのままの自分を受け入れるということ。でも、そんな私たちを受け入れてくれない人も時々います。私たちをバカにしたり、怒らせたり、気分を悪くしたり、悲しくなるようなことを言ってくる人もいます。時にはそういう人たちが私たちの家族であったりとか、信頼している人だったりもする。そして時にはそういう人たちが、政府や社会だったりもする。でもこの世界には、そのままのあなたを愛して、そのままの自分を受け入れてくれる人もいます。だから、諦めずに自分を貫いて生きていきましょう」

リナは表舞台に立つアーティストとして、常に自分が置かれているコミュニティを代表する立場を進んで買って出てきた。「私と同じような人たちで、自分に似たような人がいないために、自分が存在していないかのように感じてしまっている人たちの助けになればとも思っていました。世の中には、クィアと公言しているアジア人があまりいなくて、私たちのような存在を目にする機会がなかったので、もし私がカミングアウトしたら、そういう人たちが少しでも自分らしさを感じることができるかなって思ったんです」と、リナは昨年6月に応じてくれたフロントロウ編集部とのインタビューで「Cherry」をリリースした経緯について話してくれた。

リナ・サワヤマがLGBT差別禁止法や同性同士の結婚が法制化されていない日本にメッセージ

LGBTQ+の当事者にとって、権利が奪われている環境は、リナが「This Hell」で歌うように「地獄」だが、彼女はその地獄で当事者たちが繋がることのできる、コミュニティのような楽曲を生み出し続けてくれている。そのひとつが、彼自身もゲイと公表している、イギリスのレジェンドであるエルトン・ジョンを迎えた「Chosen Family」。

「繋がるために血縁は必要ない/遺伝子も苗字も共有する必要ない/あなたは私のチョーズン・ファミリー(※)」と歌う同曲は、同性同士の結婚が認められていないここ日本において、同性カップルたちのアンセムとなった。「孤独を感じていたり、周囲とは違うように感じたりしている人たちにとっては、それがオンラインであれオフラインであれ、繋がることができるコミュニティを見つけることが大切だと私は思っていて、それがこの曲を作ろうと思ったきっかけです。政治や社会が自分らしさを認めてくれないこの世の中で、誰かの人生を救えるかもしれないって思ったんです」とリナはフロントロウ編集部に話す。

※1 血縁の繋がっていない人たち同士が、自分たちで家族のような存在になることを選んだ家族のこと。

「特に、クィアとオープンにしている人たちがあまりいない田舎や、自分の存在を『邪魔者』扱いする法律が効力を発揮しているような環境では、コミュニティを形成する他に手段は残されていないのですから」と続けたリナ。「このような曲を書くこと自体が政治的だと言えますが、私はこの曲を通じて、愛についての曲を書いていても、その愛そのものが政治的になり得るということに気がつきました」

ここ日本においては、“同性同士の結婚を認めるか”という話すら、政治的な主張になってしまう現状がある。だからこそ、リナは声をあげ続けることを止めない。「私としては、1人1人の違いを憎むような風潮は、未だにあるはずだという不信感を持っています」と、リナは東京レインボープライド2023のテーマソングである「This Hell」についてフロントロウ編集部に語る。

「日本のLGBTQ+コミュニティのみなさん、今はまだLGBT差別禁止法は認められていないし、同性婚もできません。日本はG7の中で唯一、これを合法化していないです。これはとても恥ずかしいことで、まだ乗り越えなくてはいけないハードルがたくさんあります」とリナは東京レインボープライド2023に寄せたメッセージ動画で呼びかけている。

「でも、LGBTの人は同じ人間です。愛は愛。家族は家族です。いつの日か平等な社会になることを信じて一緒に戦かってください」

(フロントロウ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる