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「なぜ天皇陛下や愛子さまではなく秋篠宮ご夫妻なのか」イギリス国王戴冠式参列に反発が強い根本的理由

  • 2023.4.18
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5月6日に行われるイギリスの新国王戴冠式に、秋篠宮ご夫妻が参列されることになった。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「天皇・皇后両陛下や敬宮としのみや(愛子内親王)殿下ではなく、秋篠宮・同妃両殿下が参列されることへの反発が強まっている。これは、国民の気持ちと制度の間に大きなギャップがあることの表れではないか」という――。

天皇誕生日の一般参賀で手を振られる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま、秋篠宮ご夫妻と次女佳子さま=2023年2月23日、皇居
天皇誕生日の一般参賀で手を振られる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま、秋篠宮ご夫妻と次女佳子さま=2023年2月23日、皇居
「秋篠宮ご夫妻ご参列」に予想以上の逆風

英国の新国王、チャールズ3世の戴冠式が5月6日に予定されている。わが国からは秋篠宮・同妃両殿下が参列されることが、去る4月11日に閣議了解という形で正式に決まった。

しかし、両殿下が戴冠式に参列されることに対しては、予想以上に反発が強いようだ。すでに3月13日に、宮内庁が戴冠式へのご参列は天皇・皇后両陛下ではなく、両殿下になる予定であることを発表した当時から、強い違和感や批判的な意見が表明されていた。そうした逆風は、この度、正式決定を見ても一向におさまる様子がない。むしろ、さらに強まっている気配すらある。

これは一体、どうしたことか。大切な英国王の戴冠式を間近にひかえ、宮内庁も内閣も事態の思わぬ展開に戸惑っているのではないだろうか。

秋篠宮家については、ご長女、眞子さまと小室圭氏とのご結婚をめぐる経緯が、極めて残念かつ異例なものとなってしまって以来、さまざまな揣摩しま臆測が語られ、それがしばしばバッシングにつながるという現象が、これまで見られる。

しかし今回の場合は、それを上回る広がりを感じさせる。その背景は何か。私なりの見通しを示しておこう。

宮内庁が挙げた2つの理由

まず、英国側からは戴冠式への参列について、国家元首かその代理としてふさわしい人物という招待がなされている。わが国において事実上、国家元首の地位にあられるのは、もちろん天皇陛下だ。ならば、天皇・皇后両陛下がお出ましになるのが当たり前と受け止められるだろう。

しかし、宮内庁は両陛下ではなく、秋篠宮・同妃両殿下がお出ましになる旨を、早々と公表した。その理由について、宮内庁は以下の2点を挙げている。


①外国王室の戴冠式には従来から皇太子クラスが参列し、天皇陛下ご本人が出席された例はない。
②天皇・皇后両陛下は生前のエリザベス女王から国賓として招待を受けておられたが、コロナ禍のために延期されているという事情があり、そちらを早期に実現する方向である。

おそらく宮内庁としては、これら2点の理由を説明すれば、比較的スムーズに国民の理解を得られると見込んでいたのではないだろうか。

「わざと園遊会を5月にぶつけた」説まで

ところが、事態はなかなか沈静化の兆しを見せない。

コロナ禍に配慮して平成30年(2018年)秋の開催以来、実施を見送ってきた園遊会が、令和になって初めて5月11日に開催されることが発表されると、天皇陛下の戴冠式へのご参列を邪魔するために、例年、4月に行われてきた園遊会を宮内庁があえて5月にぶつけた、という陰謀論まがいの言説まで飛び交う始末だ。

しかし、これまで園遊会が5月に開催された例もあるし、今回は新型コロナウイルス感染症の分類が「5類」に引き下げられる5月8日以降に設定されたにすぎず、そもそも戴冠式と園遊会の日程は重なっていないので、上記のような臆測は何ら根拠を持たない。

しかし、こうした反発が生じている事実それ自体については、軽視できない。

宮内庁の説明の説得力

そこで、改めて宮内庁が挙げた2点について見ると、理由の①は残念ながら十分な説得力を持たない。なぜなら、天皇陛下が先頃、エリザベス女王の国葬に参列されたこと自体が、異例の出来事だったからだ。

皇室では、外国王室や元首の葬儀に天皇は参列されないのが、慣例だ。しかし、上皇陛下が天皇であられた当時、ベルギーのボードワン国王の葬儀に上皇后陛下とご一緒に参列されている。これは上皇陛下の強いお気持ちによるものとされている。今回も天皇陛下のご熱意によって、国葬への異例なご参列を果たされた。

日本の皇室と英国の王室、天皇陛下とエリザベス女王やチャールズ現国王とのつながりは、前例や慣例だけで単純に割り切ることはできない。そのことを多くの国民は敏感に感じ取っている。

しかも今回は、招待する側の英国王室自身が、「戴冠式には皇太子クラスを招く」というこれまでの慣例を打ち破ろうとされているようだ。ならば、宮内庁の説明はますます説得力を失う。

では、理由②はどうか。

こちらは①よりは説得力を持つだろう。天皇陛下はすでに昨年、エリザベス女王の国葬のために英国を訪れておられる。今後、そう遠くない将来に、英国を国賓として訪れられるのであれば、「天皇」という重い地位に照らして、また諸外国からも天皇陛下のご訪問への要望があることを考慮すると、英国だけに対して短期間に頻繁にお出ましになることは、バランスを欠くことになるからだ。

だが、天皇陛下の国賓としての英国ご訪問は、具体的にいつ頃になるのか。漠然と「早期に実現する方向」というだけで、そのスケジュール感が国民にまったく伝わらない状態では、やはり説得力に欠けると言わざるをえない。

宮内庁にとっては不本意かもしれないが、「まず慣例ありき」で“後出しジャンケン”的な言い訳を急ごしらえで準備した――という印象を与えてしまう。

ウェストミンスター寺院礼拝堂、ヘンリー7世のお墓があるレディチャペル
※写真はイメージです
なぜこれほどに反発が強いのか

しかし、英国新国王の戴冠式という重大な儀式に、わが国の皇室を代表して秋篠宮・同妃両殿下が参列されるにあたり、必ずしも広範な国民的共感を背負われた状態になっていない、ということは深刻な事態だ。

その理由・背景とは何か。

おそらく、以下の3つの事情が組み合わさってのことではあるまいか。

まず第一に、天皇・皇后両陛下への国民の敬愛の気持ちが強いことが挙げられる。そのために、わが国の皇室とゆかり深い英国王室の重大な儀式には、天皇・皇后両陛下が参列されることこそが最もふさわしい、というストレートな思いがある。

周知の通り、天皇・皇后両陛下にはまことに申し訳ないことながら、平成時代には理不尽なバッシングなどにより、おつらい時期が長く続いた。それを両陛下および敬宮としのみや(愛子内親王)殿下がご忍耐の上、乗り越えてこられた(ただし皇后陛下のご療養は今も続いているが)。その事実は多くの国民の共感を呼び、両陛下への尊敬の気持ちをいっそう深めさせている。

先頃、両陛下と敬宮殿下がおそろいで、約4年ぶりの地方でのご静養のために栃木県にある御料牧場にお出ましのさい、カメラの前で思わず両陛下がお互いの頭を軽くぶつけられるというハプニングがあった。その時も、お三方の自然なご反応ぶりから、普段はうかがえないお人柄とご家族の仲睦まじさが伝わり、かえって人々の敬愛の気持ちが高まった。

そのような天皇・皇后両陛下こそ……という素直な国民の気持ちがある。

愛子さまが代理を務められない理由

次に第二には、天皇・皇后両陛下がもしお出ましになれないのであれば、天皇陛下のご長子(第1子)でいらっしゃる敬宮殿下こそ、代理にふさわしいはずだ、という多くの国民の思いがある。

エリザベス女王の戴冠式の時(1952年)には、昭和天皇の代理として同じく“天皇のご長子”でいらした上皇陛下が「皇太子」として参列されている。上皇陛下は当時、19歳。皇太子の成年は18歳なので(皇室典範第22条)、ご独身ながらご立派に天皇の代理を務められた。

その前例を思い浮かべると、敬宮殿下も同じ天皇のご長子であられ、しかも21歳の成年皇族でいらっしゃる。その点で代理に何の不足もないはずだし、ご成年を迎えられた時の記者会見でのご様子や、一般参賀でのお姿などから、むしろ天皇陛下の代理に最もふさわしい、と多くの国民が考えるのも、無理はない。

識者の中にも“一案”として敬宮殿下のご出席を提案された方もおられる。

しかし、残念ながら現在の制度を前提とする限り、そのような選択肢はないだろう。なぜなら、今の皇室典範では女性に皇位継承資格を認めておらず、敬宮殿下は天皇のご長子なのに「皇太子」でないばかりか、皇位継承のラインから完全に外されているからだ。つまり「皇太子“クラス”」に当てはまらないことになる。

「皇太子不在」という皇室の現状

したがって、内閣や宮内庁の立場としては、少なくとも今の制度の下では、天皇陛下がお出ましになれない場合は、順番として現在、「皇太子」ではないが皇位継承順位が第1位(皇嗣)とされている秋篠宮殿下に代理を務めていただく、という結論に落ち着く。

ところが、第三として秋篠宮家への一般的なイメージが、残念ながらいまだ十分に改善されていないという事情がある。

しかも、秋篠宮殿下のご年齢からして、不測の出来事でもない限り、実際に即位される可能性は低いと見られる。そのようなお立場の方が、皇室を代表して戴冠式に臨まれることへの違和感もあるだろう。

「国民の気持ち」と「制度」のギャップ

これらの事情が複合されて、天皇・皇后両陛下や敬宮殿下ではなく、秋篠宮・同妃両殿下がチャールズ英国王の戴冠式に参列されることに対して、内閣や宮内庁が予想しなかった逆風に直面する事態になったと考えられる。

端的にいえば、天皇・皇后両陛下のお出ましがご無理だったとしても、国民の敬愛を集めるご長女の敬宮殿下という、代理に最もふさわしい方がおられる。にもかかわらず、ただ「女性だから」というだけの理由で皇位継承資格を一切認めず、天皇陛下のご長子なのに「皇太子」になれないという、旧時代的なルールが今も維持されている。そのために、国民の気持ちと制度との間に大きなギャップが存在する。この現実こそ今回の事態を招いた最大の原因だろう。

こうした制度上のねじれが残っている限り、皇室にとって憂慮すべきことであるが、同じような事態が繰り返されるおそれがある。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」

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