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【上野】国立西洋美術館「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」展を旅するように楽しんで

  • 2023.4.18

国立西洋美術館では、2023年3月18日から6月11日までの会期で、「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」展が開催されています。ブルターニュ関連の作品が国内の所蔵先から約160点(海外2館も含む)も集結する機会はなかなかありません。画家旧蔵の絵葉書や当時のガイドブック、トランクなども展示され、旅する気分で楽しめます♪

出典:リビング東京Web
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クロード・モネ《ポール=ドモアの洞窟》1886年油彩/カンヴァス 茨城県近代美術館

フランスの内なる異郷ブルターニュ

断崖の連なる海岸線に代表される雄大な地形や深い森などの豊かな自然、各地に残された古代の巨石遺構、人々の素朴で信心深い生活様式など、フランスにおいても特異な文化圏を形成していた美しき異郷ブルターニュ地方は、ロマン主義時代より芸術家たちの注目を集め、多様な画家たちを惹きつけてきたようです。

出典:リビング東京Web
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「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」展の見どころは、海外2館からの作品も加えて、国内30ヶ所を超える所蔵先から集められたブルターニュの風景・風俗・歴史をモティーフとした作品が一堂に展覧できる、またとない機会であること。約160点の絵画、素描、版画、ポスター作品ほかガイドブックやトランクなども展示されています。

画家たちのまなざしとともに旅するように辿ってみましょう。

画家たちは何を求め、何を見出したのか?

【第1章】見出されたブルターニュ:異郷への旅

出典:リビング東京Web

左)クロード・モネ《嵐のベリール》1886年油彩/カンヴァス オルセー美術館オルセー美術館(パリ)©︎RMN-GRAND Palais(musee d' Orsey)/Adrien Didierjean/distributed by AMF、右)クロード・モネ《ポール・ドモアの洞窟》1886年油彩/カンヴァス 茨城近代美術館

旅のスタートは、ブルターニュ地方が画家たちを惹きつけた19世紀初めの「ピクチャレスク・ツアー(絵になる風景を探す旅)」背景の作品から。交通網が発達したことにより、旅が身近なものとなった19世紀の後半、クロード・モネが描いた2作品の対比が印象的でした。

南部の島ベリールで激しい嵐の中、カンバスをくくりつけて描いたのでは?とも思える《嵐のベリール》と、穏やかな海と断崖をリズミカルで穏やかな表情で描いた《ポール・ドモアの洞窟》は、天候の変化に伴い刻々と変わる風景の中で、それぞれに全く異なるストロークやタッチが刻み込まれているようでした。

出典:リビング東京Web
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左)アルフォンス・ミュシャ《岸壁エリカの死》1902年 カラー・リトグラフ OGATAコレクション、右)アルフォンス・ミュシャ《砂丘のあざみ》1902年 カラー・リトグラフ OGATAコレクション

【第2章】風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神

出典:リビング東京Web

ポール・ゴーガン《海辺に立つブルターニュの少女たち》1889年油彩/カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション

パリから逃れてブルターニュ地方南西部の村ポン=タヴェンに滞在した(1886年〜1894年)ゴーガンは画家仲間たちとの交流もしながら「野生的なもの、原始的なものへの思索」を深めていったようです。ゴーガンの度重なるブルターニュ滞在中に作成した作品12点が集結しています。彼を取り巻くポン・タヴェン派のエミール・ベルナールやポール・セリュジエの作品も合わせて鑑賞できます。

出典:リビング東京Web

ポール・セリュジエセリュジエ《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》1922年油彩/カンヴァス ヤマザキマザック美術館(※展示は5月7日まで)

【第3章】土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち

出典:リビング東京Web

左)アンリ・リヴィエール連作「ブルターニュ風景」より《ロネイ湾(ロギヴィ)》1891年多色木版 国立西洋美術館、右)アンリ・リヴィエール連作「ブルターニュ風景」より《ギャルド=ゲランから眺めたデコレ岬(サン・ブリアック)》1891年多色木版 国立西洋美術館 19世紀末〜20世紀初頭にかけて保養地としても注目されてきたブルターニュ。画家たちの滞在期間も長くなっていたようです。パリや近郊の都市とこの地の往来ののち、別荘を構えた版画家 アンリ・リヴィエールの牧歌的な作品の中には、彼が夢見たであろうもう一つの異郷である日本の浮世絵の影響が感じられます。

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ナビ派の創設メンバーであるモーリス・ドニは、ペロス・ギレックの海岸沿いの高台に別荘を購入し、家族とともに夏を毎年そこで過ごしたのだそう。その家族の姿を宗教的な文脈のうちに描いた作品の中には日本的モチーフも。

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「バンド・ノワール(黒の一団)」と呼ばれたシャルル・コッテやリュシアン・シモンらは、風俗や自然を独自のレアリズムで表現。作品のサイズ感も圧巻なシャルル・コッテ《悲嘆、海の犠牲者》は遭難事故の多い土地の悲劇的な側面を描写。引きずり込まれそうな重い空気感を感じました。その情景は、キリストの死を嘆く場面の伝統的な図像とも重なるそうで、聖なる死そのものを際立たせているかのようでした。

【第4章】日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし

出典:リビング東京Web

展示風景 西洋だけでなく、日本の近代画家たちが捉えたフランスの内なる異郷「ブルターニュ」にも光をあてるという、今までにない試みも今回の展覧会の見どころの一つです。19世紀末から20世紀初め(明治後期から大正期)に日本でも突出した画家が増え、パリへ留学した際にフランスの辺境の地ブルターニュへも足を延ばしていたそうです。

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黒田清輝《プレハの少女》1891年油彩/カンヴァス石橋財団アーティゾン美術館

のちに東京美術学校で教壇に立つこととなった黒田清輝や久米桂一郎、そして藤田嗣治らが描いたブルターニュの風景や風俗をたどりながら、これまであまり注目されなかった彼らのブルターニュ滞在に光をあてる新たな試みを体感できます。画家とともに実際に旅した年季の入ったトランクなども視界に入れつつ、その思いに迫ってみては?

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ジュニア・パスポートを手にブルターニュの魅力を探ってみよう

この展覧会を子ども達も旅するように楽しめる「ジュニア・パスポート」が用意されています(鉛筆は受付で借りることも)。作品を鑑賞しながら、多くの画家たちを惹きつけたブルターニュの秘密を探るクイズなど、大人も楽しみながら展覧会の記念になる小冊子を手にとってみてくださいね。

出典:リビング東京Web
グッズも充実!オリジナルイラストの文具がかわいい

作品約160点の詳細解説ほか、作家の滞在地がわかるブルターニュ地方の地図など、旅するように楽しめる「憧憬の地 ブルターニュ 図録」(3,000円)は充実の一冊。展覧会の作品をモチーフにしたオリジナルイラストの一筆箋(660円)やポストカードなどを購入しました。

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筆者の購入品

クッションカバー(2,420円)やハンカチ(1,540円)など、作品を転写した雑貨も素敵。塩バターキャラメルやガレットなどもパッケージがおしゃれで手土産に良さそうでした。

出典:リビング東京Web
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時を同じくしてSONPO美術館では「ブルターニュの光と風」展が開催中で、カンペール美術館の作品を中心に、約70点が紹介されているそうです。双方を見比べてみると、さらにブルターニュに魅せられた画家たちの思いに近付けそうな気がします。美術展帰りに新緑の上野公園を散歩してみるのも良さそうですよ。

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※全て許可をいただいて撮影したものです。会期中に一部作品の展示替えを行うそうです。

「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」展 会場:国立西洋美術館(東京・上野公園) 東京都台東区上野公園7-7 アクセス:JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分 · 京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分 · 東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分 開館時間:9:30〜17:30(毎週金・土曜日は20:00まで) ※5月1日(月)、2日(火)、3日(水・祝)、4日(木・祝)は20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで 休館日:月曜日 ※3月27日(月)と5月1日(月)を除く 問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル) 公式URL:https://bretagne2023.jp

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