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再開したブールデル美術館、レストランのル・ロディアが大人気。

  • 2023.4.16

ブールデル美術館。ストリートサイド・ガーデンだけでなく、奥の中庭にも彫刻が展示されているのはリニューアル前と変わらず。photos:Mariko Omura

改修工事を終えて3月15日にブールデル美術館が再開した。企画展は有料だけれど、常設展は無料で見学ができる。“無料好き”のフランス人がこの朗報を見逃すわけはなく、この機会に新設されたカフェレストラン「Le Rhodia(ル・ロディア)」がおいしいと聞けば、“食べること大好き”なフランス人が“口”逃すわけはなく。彫刻鑑賞はせずダイレクトにここに向かう人もいるので、ル・ロディアは連日なかなかの混雑を呈している。

カフェレストラン Le Rhodia

黄色い壁、舷窓、古いストーブ、雲のようなランプ……和みの空間でおいしい時間を。photos:(左・中)Marielle Gaudry、(右)Mariko Omura

ロディアとは彫刻家アントワンヌ・ブールデル(1861~1929年)の娘の名前からの命名。高い窓は中庭に面し、テラス席からは前庭を見下ろせるレストランである。そのアールデコの空間はロディアと1947年に結婚したデコレーターのMichel Dufet(ミッシェル・デュフェ)による。1878年に建築されたブールデルのアトリエだった場所に、結婚したふたりが居を構えて改装を行なった際のものだ。アトリエだったので窓は高い場所にあって居住向きではない空間。それをデュフェは逆手にとって中2階に居住部分を設け、そしてメインフロアを船の内部のように整えたのだ。カフェレストランとなった空間の隅には、夫妻の暮らしの名残である旧式のストーブが残されている。

ル・ロディアの食と空間のコンセプトは、パリ9区に南米料理のレストラン「ISANA」を開いたジャン=ルネ・シャシニョルによるものだ。彼は室内建築をスタジオSAMEとコラボレーションし、50年代の椅子とSAMEがデザインした家具がミックスされた、自宅風の居心地よい雰囲気が漂うレストランを作り上げた。近郊の季節の素材ですべてが手作りという料理には、どこか素朴さが感じられる。健全な食事をうたうけれどベジタリアンやヴィーガンに限らず。ル・ロディアが提案するのはおいしさに幸福感が得られる料理といえばいいだろうか。

50年代の椅子、いまの時代のスツール、天井のランプ……ル・ロディアを経営するジャン=ルネ・シャシニョルのこだわりは料理に留まらず、インテリアにも。photos:(左)Mariko Omura、(中・右)Marielle Gaudr

朝10時にオープンしたら終了の18時まで、何かしら食事ができるシステムもありがたい。終日メニューがあり、それにプラスして11時30分~15時はランチのメニューが用意される。ポタージュやISANAでおなじみのエンパナダスは2個セット、あるいはそれにサラダをプラスして。これは営業時間中ずっとのお楽しみだ。ブールデルには大勢の弟子がいて、南米出身者も多かったそうで、ここでエンパナダスを味わえるのはそれに因んでいるそうだ。終日メニューはスイートとサレに分かれ、バラの香りのロディア・ブリオッシュにはオレンジの花のクリームが添えられる……などと書いてあるので、彫刻鑑賞の前に腹ごしらえ!と口実をつけて、すぐにル・ロディアに行きたくなる。南米の果物を使ったホームメイドジュースも忘れずに。

10時から18時まで、健全な食事がとれる。スイーツはオレンジの花のフランがおすすめ。ティータイムメニュー(15時〜18時)も用意されている。photos:Marielle Gaudry

左: エンパナダスは2個から。中: セヴィーチェのお皿にも野菜がいっぱい。右: 日替わり料理は肉料理(17ユーロ)と野菜料理(15ユーロ)の2種。ランチタイムのセットメニューは11ユーロ〜。photos:Mariko Omura

Le Rhodia営)10:00~18:00(ランチ11:30~15:00)、ブランチ10:30~15:00 ※土日限定休)月

ニューオープンしたブールデル美術館

1885から1929年までアントワーヌ・ブールデル(1861~1929年)が仕事をしたアトリエは彼の亡き後は妻が夫の聖地として守っていた。そして1949年にパリ市に寄贈され、ブールデルの生前のままの状態で美術館として開館されたのだ。美術館のベースとなっているのはブールデルの彫刻のアトリエで、その建築は1878年に遡る。大勢が訪問する前提ではない造りだったので、今回の工事でアトリエの床を強化。これに合わせて家具も作品も修復され、またこの機会に美術館全体の防水性や熱効率なども見直されることになった。最後の7カ月間は美術館をクローズし、合計2年にわたる大規模な改修が今回行われたのだ。

中庭に面したアトリエ。改装後、キリスト像がブールデルの生前の時同様の位置に戻り、また中2階のガラスケースに小さなサイズの彫刻を展示。photo:Pierre Antoine ©︎Paris Musées

彫刻のアトリエの展示作品も少し入れ替わり、またその隣には道具を展示し、映像で彫刻のテクニックを解説する部屋が新たに設けられた。所蔵品の展示コースも時間軸とテーマで見直され、制作の背景も紹介して作品の鑑賞の手がかりを与えている。最後の「継承」と題されたスペースは、弟子たちの作品を展示。彼には400名の弟子がいたそうで、彼らに「私は学校の先生、教師ではなく、あなた方とともに仕事をするアーティストです」とブールデルは語っていた。その中にはアルベルト・ジャコメッティも含まれる。この改装でジャコメッティの彫刻も展示されるようになった。

左: 等身大の『Centaure mourant(瀕死のケンタウロス)』(1914年)。photo:Stéphane Piéra/ Musée Bourdelle/ Paris Musées中: 『Pénélope』(1909年)。photo:Stéphane Piéra/ Musée Bourdelle/ Paris Musées右: 『la Guerre ou Trois Têtes hurlantes(戦争あるいは叫ぶ3つの顔)』(1870-1871. 1894-1899)。photo:©︎Eric Emo/ Musée Bourdelle /Paris Musées 

オーギュスト・ペレの設計で知られる、1913年に落成したモンテーニュ通りのシャンゼリゼ劇場。ブールデルも建築に参加し、ファサードには浅浮彫りを、劇場内には『狩人に追われて』と題したフレスコ画を制作した。左: 劇場のファサードのデッサン。習作の12作目にあたる。中: 『Danse, masque d’Isadora』。舞踏家イサドラ・ダンカンの石膏の頭部はファサードのレリーフのための習作。ブールデルは過去にイサドラ・ダンカンの舞台を見た際に、彼女の舞踏に衝撃を受けている。右: 『Danse, Les mains d’Isadora』。イサドラ・ダンカンの両手。これも劇場のためのレリーフの習作だ。©︎ Musée Bourdelle/ Paris Musées

Musée Bourdelle18, rue Antoine Bourdelle75015 Paris開)10:00~18:00休)月料:無料(企画展は有料)

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