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ハリー・スタイルズが来日公演で示したソロとしての勝利宣言【ライブレポ】

  • 2023.4.14
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ハリー・スタイルズが約5年ぶりの来日公演を開催。開演前のSEでワン・ダイレクションの「Best Song Ever」が流れたときには大合唱が起きたが、ハリー・スタイルズにとって1Dとしての活動は、ソロとして世界的なポップスターになるまでのプロセスの最初のチャプターに過ぎなかった。彼が1Dという巨大すぎるグループを7年前に活動休止させたあとで、いかにここ日本においてソロでも愛される存在になったかということは、東京・有明アリーナにて開催された2日間にわたる公演を即完させたという事実が既に証明していたものの、ステージを観たら、ハリー・スタイルズというソロアーティストがスターたる理由は明らかだった。日本愛に満ちたMCも数多く披露された、3月24日に行なわれた1日目の模様をレポート。(フロントロウ編集部)

※写真は3月25日(土)のもの。

約5年ぶりに日本のステージに立ったハリー・スタイルズ

定刻を少し過ぎた頃、水色と黒のストライプ柄のセットアップという、彼だからこそ着こなせる衣装に身を包んだハリー・スタイルズがステージに登場した。観客の大歓声が鳴り止まないなか、1曲目に披露されたのは『ハリーズ・ハウス』のオープニングトラックである「Music for a Sushi Restaurant」。ポップな衣装に負けない存在感を放ちながら、ハリーは左右の観客席に手を振って、集まった観客を歓迎してみせる。

4年前に日本を訪れた際には6週間にわたって滞在していたこともあるハリーにとって、簡単な日本語はお手のもの。「ただいまー!」と日本語で挨拶して、5年ぶりに帰ってきたことを告げると、続けてセカンドアルバム『ファイン・ライン』から「Golden」を披露したときには、1曲目の“寿司レストラン”という曲名にちなんでか、「いらっしゃいませー!」とこちらも日本語で挨拶した。

パンデミックもあって『ファイン・ライン』での来日公演は実現しなかったため、同作の楽曲がここ日本で披露されるのも今回が初めて。「こんにちは、東京!元気ですか?」というこちらも日本語のMCを経て、3曲目には同作より「Adore You」が日本で初披露されたが、「君を愛することをさせて」という歌詞を観客が合唱し、ハリーが「オーケー」と返すという、海外の公演では当たり前の光景となっているこの曲での“定番のノリ”を、集まった多くの観客が分かっていたことも印象的だった。

「Adore You」を終えると、MCの時間に。ハリーはここでも流暢な日本語を披露して、なんと、WBCで優勝したばかりの野球日本代表を祝福してくれた。

ソロアーティストとしてのハリーの楽曲の魅力は、思わずうっとりしてしまうようなロマンチックな音楽と、歌詞にこそある。とりわけそういった歌詞の魅力がより一層際立つのが、よりスローな楽曲たち。MCを挟んで、「もう少しこのまま走らせていようか」と、ドライブデートについて歌う「Keep Driving」から、「僕がブルーバードなら 君の元へ飛んでいけるのに」と歌う「Daylight」と、『ハリーズ・ハウス』収録の2曲から、彼がジャンルレスに愛されていることを証明するかのごとく、ロックスターのようなセクシーな佇まいで披露された、「愛する君」という歌詞が繰り返されるセルフタイトルのデビューアルバム収録曲の「Woman」へと続いたこのセクションは、この日最もロマンチックだった時間の1つ。

このセクションを終えると、ハリーは「すみません、僕の日本語はまあまあです。ごめんなさい」と日本語で語ったあとで、「12年間サポートしてくれてありがとう」と、1D時代からのファンにも感謝を伝えた。

誰もが歌えたワン・ダイレクション「What Makes You Beautiful」

そして、ハリーと言えば、“人に優しく”をモットーに掲げている彼の優しさがこれでもかと伝わってくる、温かみのある歌詞が歌われる楽曲も魅力的だが、MCの後で披露された「Matilda」も、そんなハリーの優しさが詰まった1曲。ハリーはここで、ステージから花道のほうへと移動して、「手放していいよ/知り合い全員を招待してパーティーを開いたっていい/君に愛を示し続けてくれる人たちと家族をつくったっていい」と、自分に愛情を注いでくれない人たちのもとからは離れてもいいと歌うこの楽曲をアコースティックで優しく歌い上げて、ファンに寄り添った。

画像: 3月24日の公演より。 ©️Lloyd Wakefield
3月24日の公演より。

そのまま花道に留まり、続けて披露されたのは「Little Freak」。ハリーはこれが「東京のホテルで書いた曲」であることを報告して、「ただ君について考えている」と繰り返し歌う、好きな人にひたすら思いを馳せるこの曲を歌い上げた。

しっとりと2曲を歌い終えてステージのほうへと戻り、「お水お願いします」と律儀に日本語を話して水休憩を挟んだハリーは、ここから再びギアを上げる。続けて披露されたのは、「僕はぐるぐる回る 衛星/ここで回転しながら 君が引き寄せてくれるのを待ってる」と歌う「Satellite」で、歌詞に合わせるように飛び跳ねながら、文字通り衛星のように四方の観客に手を振った。

観客たちとの交流を挟み、「Cinema」のパフォーマンスで「みんな、手をあげて」と促して会場を踊らせたハリーは、自身のモットー“人に優しく”がタイトルについた「Treat People With Kindness」を続けて披露。ちなみに、フロントロウ編集部は2日目となる25日のほうの公演も観賞したのだが、2日目でこの曲を披露した際には、すべての人への優しさを体現するように、観客から受け取ったレインボーフラッグを手に持って花道からステージへと駆け回り、LGBTQ+の人々を祝福してみせた。

「Treat People With Kindness」で会場をピースフルな空間へと変えた後で、「歌詞を知っていたら、一緒に歌って」と間髪入れずに披露されたのは、楽曲紹介など不要な、誰もが知るワン・ダイレクションとしてのデビュー曲「What Makes You Beautiful」。2010年代の洋楽シーンを代表するアンセムであるこの曲では、当然のようにこの日一番の大合唱が起きて、ワン・ダイレクションというグループがいかにここ日本で愛されてきたかを実感することとなった。

ハリー・スタイルズが来日公演で証明したこと

ソロアーティストとして、ポップミュージックのシーンにおいて特にここ数年で収めた巨大な成功を考えれば、ハリーはとっくに、“ワン・ダイレクションのメンバーである〜”という枕詞が不要と言える地位を築き上げている。そんな今のハリーのライブにおいては、会場に集まった誰もが歌うことのできる「What Makes You Beautiful」ですら、数あるハイライトの1つに過ぎない。

画像: 3月25日の公演より。 ©️Harry Styles/Instagram
3月25日の公演より。

続けて披露された「Late Night Talking」も、彼にワン・ダイレクションのメンバーとして初めて初めてのグラミー賞をもたらした「Watermelon Sugar」も、同じように大歓声に迎えられたことが、ハリーがいかにソロでも名曲を生み出し続けてきたかを証明していた。本編を締めくくったのは「Love of My Life」で、これはアルバム『ハリーズ・ハウス』のラスト曲でもある。「Watermelon Sugar」とはまたテイストの違う1曲だが、すぐにモードを切り替えられるのもハリーのすごいところ。ハリーは「ごちそうさまでした」というユニークな日本語でお別れの挨拶をして、ステージを後にした。

ここからショーはクライマックスへ。ステージへと戻ってきたハリーがアンコールの1曲目に選んだのは、ソロとしてのデビューシングル「Sign of the Times」。当然、アンコールの2曲目に披露された2022年の音楽シーンを代表する大ヒット曲「As It Was」はイントロから会場が大きく沸いたが、ライブを締め括ったのは、こちらもデビュー作からの「Kiwi」だった。

画像: ハリー・スタイルズが来日公演で証明したこと

いかに大ヒットしたかという点で選べば、「As It Was」をラストの曲に持っていくのが自然だろう。けれど、ハリーが選んだのは、ソロとしてツアーを回り始めたときからずっとライブのハイライトを生み出し続けてきた「Kiwi」。そう、ここまでずっと自分の好きな音楽を信じ、それを探究し続けてきたのがハリーであり、世界的な大ヒットはあくまでその結果でしかないなのだ。

日本への愛に満ちたMCで、これまで生み出してきた名曲間を彩りながら、“人に優しく”をモットーに掲げてポップで温かい空間を創り出してみせたハリー。ソロとしてデビューして以来、シアター規模の会場からコツコツと歩み続けてきたハリーが、チケット即完で集めた約1万4,000人のオーディエンスの前で披露した「Kiwi」は、約5年ぶりとなる来日公演のフィナーレにふさわしい、ソロアーティストとしての勝利宣言のようだった。

この日のセットリストはSpotifyにてプレイリストとして公開されているので、チェックしてみて。

(フロントロウ編集部)

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