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終わり方に満足している、ジェイミー・リー・カーティスが最終章『ハロウィン THE END』との別れを語る【インタビュー】

  • 2023.4.6
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1978年に映画界に登場して、ホラー界、女性像、そして一人の俳優の人生を変えた『ハロウィン』シリーズがついに最終章を迎える。4月14日(金)に劇場公開される映画『ハロウィン THE END』でシリーズを卒業するジェイミー・リー・カーティスが、アカデミー賞への道を築いたローリー・ストロードという役との別れをフロントロウ編集部に語った。

ホラーを、女性像を、俳優の人生を変えた『ハロウィン』シリーズ、ついに完結

映画『ハロウィン』がハリウッドに与えた変革を挙げだしたらキリがない。

マイケル・マイヤーズという冷酷無比な殺人鬼が次々と犠牲者を襲うスタイルは、その後の『エルム街の悪夢』や『13日の金曜日』など、多くのスラッシャー映画に受け継がれていくことに。特別な超能力を持たない生身の人間であるマイケル・マイヤーズという存在は、“現実に起こりうるかも”というリアリティで恐怖感を演出。劇中では、繰り返し流れるシンプルなテーマソング「ハロウィン・テーマ」が恐怖を増幅させ、ホラー映画のサウンドトラックに革新をもたらした。

次に、ローリー・ストロードという主人公。それまで、ホラー映画での女性の役割と言えば、悲鳴で恐怖を煽ること。犠牲者や男性に助けを求める役ばかりだった。しかしローリーは知性と冷静さを武器にマイケル・マイヤーズに勇敢に立ち向かい、最後まで生き延び、“ファイナル・ガール(※ホラー作品で最後まで生き残りその体験を語る女性キャラ)”というホラーあるあるの原型的存在に。70~80年代に映画界のステレオタイプを壊した、エレン・リプリー(『エイリアン』)やサラ・コナー(『ターミネーター』)と並ぶアイコニックな女性キャラとなった。

そして、そんなローリーを演じたジェイミー・リー・カーティス。特定のジャンルで独自の存在感や個性を発揮して、そのジャンルの作品に多く出演している俳優を“ジャンル俳優”と言うが、ジェイミーは映画デビュー作だった『ハロウィン』で、ホラー界を代表する女優に与えられる”スクリーム・クイーン”の称号を得て、ホラーのジャンル女優として大活躍。その後、ローリー役で見せた素晴らしい表現力を駆使し、コメディやSFなど幅広い演技にも挑戦し、『ハロウィン』での映画デビューから約45年、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でキャリア初のアカデミー賞を受賞。その受賞スピーチでも、ホラー・ジャンルのファンに感謝した。

そんなジェイミーは、映画『ハロウィン THE END』で、自身のキャリアを変えたローリー・ストロードという役とお別れする。自身の演技のルーツであり、幅広いジャンルで活躍するきっかけを与え、その後の華麗なキャリアを支える原動力となった役への思いをフロントロウ編集部に明かした。

画像: 新たな恐怖が連鎖し始める『ハロウィン THE END』。長年の因縁についに決着がつく!
新たな恐怖が連鎖し始める『ハロウィン THE END』。長年の因縁についに決着がつく!

『ハロウィン THE END』の撮影最終日は、どのようなお気持ちでしたか?

ジェイミー・リー・カーティス:映画の終わりというのは、難しいものです。ほとんどの人ともう二度と会うことはないでしょう。ものすごい肉体労働を一緒に行ない、一緒に血と汗と涙を流してきました。とんでもなくクレイジーな時間まで一緒に働いてきました。本当におかしな状況に身を置いてきました。だからその日は、始まりから終わりまでずっと泣いていましたね。一緒に映画を作った友達だけでなく、ローリー・ストロードにも別れを告げ、ローリー・ストロードに感謝の気持ちを伝えた日でした。ニューヨークでの映画のプロモーション中に、ファンがローリーと私にありがとうと言うビデオを見せられたんですが、私は耐えられなかったですね。あまりにも感動的でした。今でも感情的になってしまいます。(※オスカー像をチラリと見せて)私は前に進みましたが、でも、本心ではまだ進めていません。だって、まだ泣いていますから。すごく変な気分です。私にとってはとても感情的なことなんです。ローリーとの別れを思うと寂しくなります。ただ一方で、もう戻らないというすっきり感もある。複雑な心境ですね。

画像1: ホラーを、女性像を、俳優の人生を変えた『ハロウィン』シリーズ、ついに完結

『ハロウィン THE END』でローリーとマイケル・マイヤーズの因縁についに決着がつくわけですが、その終わりは、それぞれにとって数十年ある意味で生きる理由だったことの終わりでもあります。2人の手が触れるシーンでは、終焉への喜びと悲しみが感じられましたが、どのような思いであのシーンを演じられましたか?

ジェイミー・リー・カーティス:ローリーは、マイケルを殺すためには一瞬であっても彼にならなければいけないという、辛く悲しい現実に直面するのです。ある意味、マイケルがローリーをマイケルにしてしまうのです。45年という歳月を経て、(2人の決着シーンは)決して軽々しくできることではありませんでした。とても感情的な旅です。撮影の時も感情的な旅でした。(マイケル・マイヤーズ役の)ジェームズ・ジュード・コートニーと一緒に感情的になりましたね。作るのがとても難しい映画でしたが、私はすごく満足しています。この映画は、非常に力強い方法で、終わりについて語ったと思います。

画像2: ホラーを、女性像を、俳優の人生を変えた『ハロウィン』シリーズ、ついに完結

ローリー・ストロード主演の『ハロウィン』シリーズの最終章を作るにあたり、方向性などについて、クリエイターたちとはどのような話をされたのですか?

ジェイミー・リー・カーティス:監督と脚本を担当したデヴィッド・ゴードン・グリーンは、この映画の舞台を前作『ハロウィン KILLS』から4年後にすることで、ローリーに癒しの時間を与えたいと話していました。『ハロウィン KILLS』はとても激しく、狂ったオペラのようでした。暴力的で、血なまぐさい、信じられないほど苦痛にあふれたオペラです。そのような作品の後、どのように3作目を作るのか? 一度、温度を下げる必要があります。すべてを落ち着かせなければなりません。少し時間を置く必要がある。製作陣はそうしました。そうすることで、1978年のハロウィンの1作目と同じように、映画の新しいリズムを確立することができました。序盤では少しゆっくり、時間をかけて、何層にも及ぶ深いストーリーを構築しています。そして、それがデヴィッドの賢いところだと思います。だって、『ハロウィン KILLS』のような作品の後、どうやって別の映画を始めることができるのでしょうか?戦いの真っ最中に始めるようなものです。とても激しいものになります。私は、テーマ面にも、感情面でも、そしてもちろん監督面でも、デヴィッドのやり方に非常に満足しています。

『ハロウィン THE END』では「日本の桜」に何度も触れられていますが、あれはどのような意味があるのでしょう? また、ジェイミーさんは実際に日本で桜を見たことはありますか?

ジェイミー・リー・カーティス:まだ日本で桜を見たことがないので、ぜひ見たいと思っています。私は、デヴィッドが“hope springs eternal(希望は永遠に花咲く)”という言葉を選んだことがとても気に入りました。桜の開花は、毎年行われるイベントであり、新しい命、新しい成長のしるし、つまり再生なのです。そして、それはとても美しい比喩だと思います。何か花が咲くといえば、まず日本の桜を挙げる人は多いでしょう。生命、希望、永遠というメタファー(比喩)を見事に表現していると思います。とても素敵な表現ですよね。

日本と言えば、ジェイミーさんはアニメ好きですよね?

ジェイミー・リー・カーティス:娘がアニメファンなので私もファン、という感じです。自分ひとりで観ることはないですが、娘と一緒にけっこう観ていますよ。『ONE PIECE』はけっこうたくさん観ていて、お気に入りは『黒執事』ですね。シエル・ファントムハイヴとか、ダークなテーマとか、すごく好きです。

画像3: ホラーを、女性像を、俳優の人生を変えた『ハロウィン』シリーズ、ついに完結

『ハロウィン』で映画デビューしてから約45年経ち、キャリア初のアカデミー賞を受賞したわけですが、オスカー受賞に『ハロウィン』という作品はどう関係しているのでしょう?

ジェイミー・リー・カーティス:(アカデミー賞授賞式で受賞者として名前を呼ばれて)ショックと感無量な気持ちのなか、自分のこれまでを振り返りました。自分の家族、自分のファン、私に映画のキャリアをくれた人々。ローリー・ストロードを応援することに人生を捧げ、私に45年ものあいだ職を与えてくれた人々。彼らの存在をあそこで認識することが重要でした。私がひとりで成し遂げたことだとは一瞬たりとも思っていません。これは、映画を愛して私を支えてくれたファンが成し遂げたことなのです。だからあの瞬間、彼らの存在に触れたかった。これが私の正直な気持ちです。

『ハロウィン THE END』のプロデューサーを務めるブラムハウスのジェイソン・ブラムさんと以前お話した時、彼はホラーは「他のジャンルにはない、直感的な感情移入ができる」ジャンルだとおっしゃっていました。ジェイミーさんにとってホラーとは何ですか?

ジェイミー・リー・カーティス:私にとってホラーとは…、苦手なジャンルです。だって、怖いんですもん(笑)。ただ、ホラーの本質とは「善と悪」だと思っています。最も古い神話にも登場する物語です。どの文化にもあります。あらゆる文化の壁を越えていく。宇宙の隅々まで行き渡る。『スター・ウォーズ』だって、善 VS悪ですよね。対立するストーリーテリングの古典的な図式です。観客が好意を持つ善いものを作り、観客の好きな存在を傷つけようとする悪いものを導入し、それらを互いに衝突させ、そして観客が善を応援し、悪を倒してほしいと思うようにする。それは、ルーク・スカイウォーカーとダース・ベイダーかもしれない。ローリー・ストロードとマイケル・マイヤーズかもしれない。登場人物が誰であろうと、それが、このジャンルで通用する型なのです。私はホラーというジャンルの専門家ではありません。シネフィルでもない。このジャンルの映画をたくさん観てきたわけでもない。でも、人間として直感的に、それが彼らの心を動かすのだと理解しています。

映画界、女性像、そしてジェイミーのキャリアを変えたスラッシャー映画の金字塔『ハロウィン』。その最終章となる、『ハロウィン THE END』は4月14日(金)に全国公開される。

ちなみにジェイミーは取材中にオスカー像を見せてくれたのだが、そちらのやり取りは「オスカー像も『エブエブ』仕様!受賞ホヤホヤのジェイミー・リー・カーティスがオスカー像を見せてくれた」で確認して。(フロントロウ編集部)

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