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北朝鮮のベストセラー文学が日本で発売。テレビではわからない暮らしの風景がそこに

  • 2023.4.3

書店へ行くと、アメリカやヨーロッパの国々、中国、韓国など、さまざまな国の小説が並んでいる。しかし、北朝鮮の文学作品を目にすることは珍しい。

北朝鮮の人々は、どんな物語を書き、読んでいるのだろうか? それをうかがい知ることができる本が発売された。1988年刊行の北朝鮮文学の日本語版、『友』(小学館)。著者は、1949年生まれの小説家ペク・ナムリョンさんだ。

物語の主人公は、人民裁判所で判事を務める男、チョン・ジヌ。ある日彼のもとに、一人の女性が離婚請求を持ち込んできた。彼女は歌手のチェ・スニ。スニは泣きながら、寡黙すぎる夫とあまりに性格が合わず、これ以上一緒に暮らしていけないと訴える。チェ夫婦の問題を調査していくジヌだったが、彼自身も、妻との間に問題を抱えていた。

この作品は北朝鮮国内でベストセラーになったのち、韓国で出版、そしてフランス、アメリカでも翻訳出版された。2020年には、アメリカのライブラリー・ジャーナル誌の「Best Books」翻訳文学部門の10冊に選ばれた。

「北朝鮮の人が読む北朝鮮の文学とは何か?
1988年に出版されたペク・ナムリョンの小説『友』は、"北朝鮮"という言葉から思い浮かべるロケット弾や軍事パレードではなく、日常を呈している。〈中略〉
小説は、投機的なニュースよりも恒久的な事実を提供するかもしれない」
――― New York Times Book Reviewより

北朝鮮の市井の暮らし、そして愛と結婚・離婚のかたちが、感情豊かに描かれた作品。映像には映らない一面を、文学から垣間見ることができる。

■ペク・ナムリョンさんプロフィール
1949年咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)市生まれ。工場労働者を経て金日成総合大学で文学について学ぶ。1987年から4.15文学創作団に召喚されて以降、『東海千里』(1996)、『復興』(2020)など最高指導者一族の業績を描いた実話長編小説を発表。『友』と同時期の作品として、北朝鮮の工場労働者の世代間の葛藤を主題とした『60年後』(1985)がある。『友』や『60年後』はフランスやアメリカで翻訳され、分断後出生した北朝鮮の作家では初めて単行本として刊行された。

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