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「今日契約すれば3割引にしますよ」世にあふれるぼったくりに簡単にカモられてしまう残念な人の特徴

  • 2023.4.1

世には魅力的な商品やサービスがあふれている。しかし不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは「売り手の思惑を想像できない人は、詐欺やぼったくりに簡単にカモられる。うまい話にだまされやすい人には“残念な特徴”がある」という――。

※本稿は、午堂登紀雄『人生の正解をつくるお金のセンス 17歳までに知っておきたい「使う」「貯める」「稼ぐ」「守る」「増やす」の考え方』(技術評論社)の一部を再編集したものです。

ノートパソコンの前で財布から複数の一万円札を取り出す人の手元
※写真はイメージです


・登場人物
【慶太】しっかり者の17歳、現在高校2年生。バスケ部と弁論部をかけもちしている二刀流。高1の頃はパパの真似をしてアプリを開発・販売していたこともあり、将来は起業を目指している。

【和泉】慶太の妹、13歳の中学1年生。社交的でコミュ力が高く、クラスの中でも人気者。だけど周囲の目を気にしている、思春期まっしぐら。

【パパ】慶太のパパにして、会社経営者。家計はすべてパパが握っている。将来は慶太も和泉も起業してほしいと考え、お金の面で困らないよう、いろいろ伝授に余念がない。

【ママ】自営業。おっちょこちょいで天然だけど、家庭の雰囲気を盛り上げている。家事が苦手で部屋も散らかすので、慶太や和泉にも叱られている。

「限定」や「激安」に弱い人はだまされやすい

【慶太】和泉、おまえ「限定」とか「激安」とかあるとすぐ欲しくなるよな。それでずいぶん無駄遣いしてきただろ?

【和泉】だって、欲しいものは欲しいんだもん!

【慶太】でもそれって、大人の手のひらで踊らされてるってことじゃんか。商品もサービスも、全部大人が考えて、大人が売ってるだろ? 大人の思惑にまんまとはまってるってことだよ。

【和泉】なにそれ? どういうこと?

【慶太】父さんの受け売りだけど、企業活動とは会社が儲けるためのもので、企業は常にどうすれば客に財布を開いてもらえるかを一生懸命考えてるって。頭がいい人たちが必死で考えた商品やサービスだから、オレたちもよくよく考えて買い物をしないと、かんたんにカモられる。化粧品だって洋服だってそうだろ? 芸能人がテレビCMとかに出てるけど、あの人たち絶対使ってないぞ。単なるイメージだけだと思うよ。

宣伝のようなうまい話はありえない

【パパ】企業は儲けるのが宿命だからね。

【慶太】記憶力が良くなるサプリとか、成績が上がる速読術とか宣伝してるけど、そんなうまい話ありえないよね。予備校だって、それぞれの学校がうたってる合格率を足すと100%を超えるんだから、盛ってる数字だってすぐわかるよ。

【パパ】コラーゲン配合ドリンクとかもそうだよね。

【ママ】えっ、コラーゲンって効果ないの? コラーゲン配合の美肌サプリ飲んでるんだけど。

【パパ】いやそういうわけじゃない。美肌になるかどうかわからないってこと。慶太はわかるか?

【慶太】コラーゲンはタンパク質の一種だよね。学校で習ったけど、タンパク質は分解されていったんすべてアミノ酸になるから、全部混ざっちゃうわけだよね? だから、摂取したコラーゲンが再びコラーゲンとなって皮膚になるかはわからないってことでは?

各種サプリメントやハーブ
※写真はイメージです
考えない人はカモられる

【パパ】ご名答。そのコラーゲンがアミノ酸となって再び合成されるとき、筋肉になるかもしれないし、脂肪になるかもしれないし、顔の皮膚じゃなくて手足や胴体の皮膚になるかもしれない。たしかにタンパク質は身体をつくる必須栄養素だから意味のあることだけれど、コラーゲン配合サプリを飲んだからといって肌がスベスベ・ツヤツヤになるかどうかはわからないってこと。

【慶太】髪の毛を食べたら髪の毛が生えるわけじゃないのと同じだね。

【ママ】うまい話はないってことね。

【慶太】スマホの料金プランを思い出したよ。昔は複雑でわかりにくかったから、結局店員のおススメどおりに契約しちゃうってやつ。

【ママ】アハ! ママだ。

【パパ】考えない人はカモられる、ってことだね……。

儲け話には裏がある

【ママ】ママ友から儲かる話を聞いたんだけど、出資した金額の5%が配当として毎月もらえるんだって。毎月よ、毎月! それでまた別の友達を誘ってその人が出資すると、ボーナスがもらえるんだって。

【慶太】それ、絶対詐欺だよ!

【パパ】まったくだよ……。まあ詐欺かネズミ講かはわからないけど、手を出しちゃいけない類いの1つだよ。そもそも何でママに? そんなに仲がいい人?

【ママ】そうでもないけど……。

薄暗い部屋で大金の取引
※写真はイメージです
本当に儲かるなら他人に教えない

【パパ】本当に儲かるなら、自分だけでやるか、身内を誘うよ。わざわざ他人に教えるようなことはしないだろ。そういうのは、その会や組織の代表者になったつもりで考えるんだ。

【ママ】どういうこと?

【パパ】かつて近未来通信という会社があって、「利回り40%」という高利回りを謳っていたことがあったんだ。そのとき知人から、それに投資しても大丈夫だろうかと相談があって、こう答えたんだよ。


くわしいことはよくわかりませんが、もし私がその会社の社長なら、銀行からお金を借りて自分で投資しますけどね。銀行借り入れのほうが金利は低いわけで、確実に儲かりますからね。あえて資金を集めて顧客管理もして、さらに40%もの配当を出すなんて、バカバカしいじゃないですか。

なぜ、わざわざ他人様に情報開示や説明義務を負って、高配当を分配して、配当の振り込み手続きをする、なんて手間をかける必要があるんでしょうか。銀行から借りれば利益でウハウハなのに。

【パパ】その後、その人が投資したかはどうかわからないけど、ほどなく近未来通信は破綻したんだよ。

【ママ】破綻……。

高利回り商品の落とし穴

【パパ】ほかにも、大手証券会社から利回り17%の外債投資の営業を受けているって相談があったとき、こんなふうに答えたんだ」


大手証券会社なら、金利1%以下で借入ができるでしょう。それなら、差し引き17%-1%=16%も利回りがとれるので、銀行から1億を借りて投資すれば、年間1600万円の利益。10年運用すれば、1億6000万。そうなってから元本を返しても、元本以上の利益が手元に残ります。わざわざ投資家を募らなくても、それだけで会社を運営できるじゃないですか。

でも、私がその証券会社の社長ならやりません。なぜなら、利回り17%がずっと続くわけではないと思うからです。いまはたしかに17%かもしれませんが、利下げがあるかもしれません。為替変動リスクや債券価格下落リスクを考えると、むしろ17%じゃ低いと思いますよ。

それなら販売に徹して、手数料をいただいておしまい、というビジネスモデルのほうが安心だと考えます。

【パパ】その後、その人が投資したかどうかはわからないけど、たとえばトルコリラ債なんてすごいよ。2015年初頭には1トルコリラ46円前後だったけど、2018年には一時6円台まで暴落したんだ。3年で価値が7分の1になれば、どんなに高利回りでも追いつかないよね。

【ママ】ひええ、おそろしー!

営業活動の思惑を想像してみる

【パパ】営業活動も同じだよね。パパは不動産投資の仕事をしてるからわかるけど、本当に優良物件なら、既存顧客にメールを送るだけですぐに売れてしまうんだ。わざわざインターネットに掲載したり、電話をかけたりDMを送ったりってセールス活動はまったくいらない。つまりそれらは結局、「営業しなければ売れない程度の商品」であることが多いわけなんだ。

ノートパソコンで不動産サイトを閲覧中の女性
※写真はイメージです

【ママ】なるほどね……。

【パパ】いずれにせよ、うまい儲け話があったら、まず「この人はなぜ、自分にこんなセールスをするのだろう?」「自分がその会社の社長なら、どうやるのが最も儲かるだろうか?」を想像してみることだよ。

高額なサービスは「相見積もり」が鉄則

【ママ】ねえパパ、今日リフォーム会社の人が来て、無料でマイホーム診断をやってくれるっていうからやってもらったら、壁がひび割れていたんだって。「今日契約すれば3割引きにしますよ」っていうから契約しちゃった。

【パパ】ええ⁈ そういうの相談してからにしてよ……。どれどれ、その契約書見せて。

【ママ】これ。

【パパ】あ~、これぼったくり業者だよ。そもそもの値段が高過ぎて、値引きして安く見せかけているだけで、それでも高い。唯一無二の価値があるものならともかく、高額な商品・サービスは、複数の業者から同じ条件で見積もりを取る「相見積もり」をとって比較し、必要に応じて価格交渉をするのが基本だ。それに、リフォームなんて定価はあってないようなものだし。

【ママ】ええ~! でも、安いかなって……。

見積の提案をする手元
※写真はイメージです
相場を理解せずに買ってはいけない
午堂登紀雄『人生の正解をつくるお金のセンス 17歳までに知っておきたい「使う」「貯める」「稼ぐ」「守る」「増やす」の考え方』(技術評論社)
午堂登紀雄『人生の正解をつくるお金のセンス 17歳までに知っておきたい「使う」「貯める」「稼ぐ」「守る」「増やす」の考え方』(技術評論社)

【パパ】リフォームの費用の相場なんて知らないだろ? 情報が少ない段階では即決しないことだよ。「検討してあとで返事する」と、冷静な状態に自分を持っていくことだ。特に対面や電話でセールストークを受けているときは冷静に検討する精神的な余裕がないから、セールスマンはそこを突いて即決を迫ってくるんだよ。

「いま決めてくれたらコレをサービスします」
「いま契約してくれたらこれだけ値引きします」

とかね。

【ママ】うん、そう言われた。

【パパ】むろん即決したほうがいい場合もあるけれど、それは自分が相場感覚を持っていて、「明らかにここで決めたほうがトクだ」と理論的に納得できる場面に限ったほうがいい。基本的に、訪問でやってくるような業者、電話をかけてくるような業者は、割高だと思ってまちがいない。そうやって、高齢者や無知な人を食い物にしてるんだ。

消費者を保護するクーリング・オフ制度

【ママ】どうしよう、契約してハンコ押しちゃった……。

署名捺印する人の手元
※写真はイメージです

【パパ】そういう「しまった」「軽い気持ちで契約しちゃった」というミスから救ってくれるのがクーリング・オフ制度だ。ふつうは、いったん成立した契約は一方的に解除できないけど、訪問販売や電話勧誘販売などの不意打ち性の高い取引では、消費者が頭を冷やして考えることができるように、契約後一定の期間内であれば、無条件で契約が解除できるって、特定商取引法で制度を設けているんだ。それがクーリング・オフ制度。

【ママ】どうすればいいの?

通販はクーリングオフ適用外

【パパ】訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスの場合、契約書面を受け取って8日以内に、相手方に書面で通知すればいいんだ。受取記録がわかるように、郵便局から特定記録郵便か簡易書留で出せばいい。

【ママ】よかった~。

【パパ】ただ、街頭で勧誘されて居酒屋に入ったとか、現金取引で3000円未満とか、葬儀などの役務の提供とかは、クーリングオフができないからね。通販にはもともとクーリングオフが適用されないし。まあ、手紙は僕が出しておくよ。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビ二エンスストアチェーン本部を経て、戦略系経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして勤務。現在は起業家兼個人投資家としての活動に加え、講演や執筆活動もおこなっている。『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『いい人をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)など著書多数。

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