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仲野太賀さん、クドカン脚本の舞台に初出演 「セリフを早く口に出したくてワクワク」

  • 2023.4.1

大人計画に所属する脚本家の宮藤官九郎さんが「その時々で最もやりたいことをやる場所」として作・演出を手掛けてきた「ウーマンリブ」シリーズ。最新作は2020年、新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされ、無観客で収録し、WOWOWオリジナル作品として放送された「もうがまんできない」です。今回の舞台化にあたり、新たなキャストを迎えた本作。4月14日から東京、5月18日から大阪で上演されます。メジャーになれない解散寸前のお笑いコンビのツッコミ役を演じる仲野太賀さんに、作品の魅力や今、楽しみにしていることなどについて伺いました。

一番笑った大人計画の「七年ぶりの恋人」

――大人計画の作品は今回が初出演。今まで「ウーマンリブ」シリーズの作品をご覧になったことはありますか。

仲野太賀さん(以下、仲野): 最初に見たのは、2015年に上演の「七年ぶりの恋人」だと思います。かなりエッジの効いたネタが満載で、自分史上、一番笑った作品でした。その時僕は補助席で見ていたのですが、笑い転げて座席から落ちるんじゃないかというくらい。

――舞台で、それだけ人を笑わせられるってすごいことだと思います。仲野さん的な「笑いのツボ」はどんなところにあったのでしょう。

仲野: 下ネタも満載だし、「そんなことやっちゃダメでしょう!」みたいなことを平気でやっていて(笑)。ぶっ飛んだところがたまらなく好きだと感じたし、普段生活をしている中で、ちょっとタブーとされているものに触れていたり、見て見ぬふりをしていたものをピックアップして表現として触れていたり。そういうものを「笑い」に昇華しているお芝居を見て、すごく感動しました。

朝日新聞telling,(テリング)

観客として触れていた世界に出演で興奮

――「七年ぶりの恋人」を観客として見ていた時、「自分もいつかは同じ舞台に!」と思っていましたか?

仲野: 「出たいな」とずっと憧れていた劇団ですから、当時もそんな風に思いながら見ていましたけど、あまりにも皆さんが突き抜け、はじけているので、そのすごさに圧倒されましたね。「この人たちの中に自分が入ったら一体、どうなっちゃうんだろう」という想像を何度もしていました。

――どんなことに一番ワクワクしていますか?

仲野: 宮藤さんの脚本作品に出させていただくことはこれまでも何回かありましたが、大人計画の舞台に出るのは初めて。幼い頃から観客として触れていた世界にいざ自分が出演できると決まった今は、とにかく興奮しています。

僕が演じるのは、売れないお笑いコンビ「ずっと待ってるズ」のツッコミ役。「こんなセリフを言えるんだ!」って、早く口に出したくてワクワクしています。

――ドラマ「コントが始まる」など、これまでも芸人役を演じることがありました。

仲野: ツッコミってすごく難しいんですよ。根がボケなので、本当はツッこんでほしいんですけど(笑)。今回は永山絢斗さんが演じる相方にイライラする場面も出てくると思いますが、2人のコンビネーションがすごく大事になってくる。そこも意識しつつ、ツッコミの切れ味にもこだわりたいです。

――宮藤さんの脚本については、どんな印象ですか?

仲野: 素晴らしさは僕が言うまでもないですが、柔軟性も感じます。例えば、「こういう時代だから」と状況によって、どんどん脚本を変えられていて。宮藤さんの味はそのままに社会性も込めていて、笑いの中にすごく根太いメッセージが含まれているんですよ。時代と共にアップデートされているところもすてきだなと思います。

キャラクターも魅力的ですね。「あまちゃん」(NHK連続テレビ小説・2013)など、大人数が出てくるような作品でも、それぞれにちゃんと個性があるし、演じてみて分かるのは、そのキャラクターにものすごく誇りがあるということ。どんなに社会から虐げられていたり、馬鹿にされたりしていても「俺はこうなんだ!」という強い誇りを感じるんです。

朝日新聞telling,(テリング)

この舞台で自分が成長できる!

――今回用に台本を書き直されているとのこと、出演者の方にも完成した脚本はまだ手元にないそうですね(取材は2月)。

仲野: 元々宮藤さんが2020年に予定していた公演のために書かれていた脚本なので、その頃に流行していた言葉や時事ネタを、23年バージョンに書き直してブラッシュアップされるようです。

――今の時点で、演じる役をどう捉えて、どんなところに面白みを感じてらっしゃいますか。

仲野: 僕が演じる沢井も、売れない芸人だけど、すごく誇りを持っているんです。でも、その誇りによって自分で自分の足を引っ張ってしまうし、いいところで出てくるキャラクターでもある。その辺りが彼の魅力かなと思っています。

大人計画の舞台らしく「これ、何の話してんの?」みたいシーンもあるんですけど(笑)、最後の方で全部回収されて、すべてが最高の流れで終わっていく。これはやっぱり、宮藤さんの作品のすごいところですよね。どこまでが計算で、どこまでを感性でやっていらっしゃるのか分からないですが、最終的にどんな仕上がりになるのか僕も楽しみです。

――公式サイトのコメントで、大人計画の方々のことを「演劇怪獣」と仰っていましたね。

仲野: なんて形容していいかわからなくて、そういう表現になってしまったんですけど、人知を超えている感じ(笑)。言い方を変えれば「天才集団」。もちろん尊敬の気持ちがあって、「どうやったら、こんなお芝居できるんだろう」と思うことばかりなので、成長できる気がします。

朝日新聞telling,(テリング)

実際の舞台は想像がつかないけど…

――今回の出演者の中には、これまで映像作品で共演したことがある方もいらっしゃいます。「怪獣エピソード」はありますか?

仲野: 阿部(サダヲ)さんも皆川(猿時)さんも荒川(良々)さんも、すでに初動の段階で完全に役を自分のものにされている。「どうやったらそうなれるんだ?」っていつも思うんです。それに、稽古場で悩んでいる姿を1度も見たことがないんですよ。

僕はめちゃくちゃスロースターターなので、読み合わせや最初のテイクで、みなさんを不安にさせていることもあると思うんですよね。初めからあまり色をつけたくないというのもありますが、どうしても最初からは上手くできなくて。 稽古場でもまれながら自分で色々試して、ちょっとずつ人様に見てもらえるような形にしていくという流れが、僕のリズムなのかなと思います。

――稽古場もかなり楽しそうですね!

仲野: 超楽しみですね。“ああいう風になって行く”過程を見られるのが本当に嬉しいです。
実際の舞台は想像がつかないんですけど、皆さんにもまれながらとにかく必死についていって、たくさんのことを吸収したいです。

――では最後に、舞台を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

仲野: 前回はコロナ禍の影響でお客さんの前で上演できなかった舞台ですが、時代も変わり、さらにパワーアップした脚本になっていると思います。僕は今回からの参加ですが、出演者の方々や宮藤さんの「もうがまんできない!」が溢れに溢れていると思うので、そのパワーに乗っかって僕も一生懸命楽しんでやりたい。劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■品田裕美のプロフィール
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。

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