【柏木由紀】31歳、職業アイドル。AKB48歴16年のゆきりんが現役を続ける理由は？

現役アイドル柏木由紀の16年目のアイドル論

3年前、「30歳までは卒業しません」と宣言し、話題になった“ゆきりん”こと、柏木由紀さんも今年31歳。「メンバーとのジェネレーションギャップを感じる」としつつも、今のグループでもう一度ドームツアーをまわりたい」と未来への意欲を見せています。AKB48史上最高齢となった柏木由紀さんが今の想いを告白！

神7が卒業したのは平均24.5歳。引き際は大事だけれど、長くいるからこそ見れる風景もある

──アイドルの“定年問題”を吹き飛ばし、新しい道を切り開いた柏木さんですが、「30代初のAKB48」として今、思うことは？

柏木由紀さん（以下敬称略）「アイドルは、“25歳定年”とか“30代の壁”とか、いろいろと年齢と辞めどきについて言われます。実際に辞めどきを見極めることは大事だと思うけれど、世間的な“アイドル適齢期”の雰囲気に飲まれてやめてしまうというのは残念だな、と。30歳になる前にアイドルとは違う次の展開を考えて生きる道を変えるという人もいますし、実際に、わたしも“30歳の壁”について考えなかったワケではないので、気持ちはよくわかります。ですが最近、アイドルの年齢問題に対する風向きが少し変わってきている気がしていて。アイドルが多様化して40代の方もいれば、子持ちの方もいる。そんな時代の後押しもあって、30歳になったときに、もっとやり続けたいと思っているアイドルをやめるのは今ではないかなと思いました。

最近、SNSのコメントにはAKB48ファンとはちょっと違う層……おそらく一般の女性から、『アイドル界に新しい道を切り開いてください』とか『30代になっても続けてくれてありがとう』『勇気をもらいました』というような声がたくさん届いています。わたしがアイドルを続けることが、誰かの役に立っているのであれば、それはすごくうれしいですね」

──「30代アイドル」という「柏木由紀の新しいカタチ」は、年齢の壁を見事プラスの力に変えたという印象が。ですが、そこに至るまでには、厳しい声などもあったのでは？

柏木「正直なところ、めっちゃくちゃ厳しい意見がたくさんありました。『早くやめろ』とか『もう出て行け』とか『柏木が上にいるから、下の子が上がってこられない』とか……。ほかの子を推しているファンからすれば、年齢を重ねても居続けるわたしの存在が気になったのかもしれませんね。ですが、わたしは、というと、どれだけキツイ言葉を投げかけられようとも、AKB48まだやりたいんだよな～って思っちゃって（笑）。だって、少なからず応援してくれるファンがいるのだから、そちらに目を向けるようにしました」

お風呂嫌いを公表できたのもファンとの信頼関係があってこそ

──昔はできなかったけれど、大人になった今だからこそできることは？

柏木「アイドル歴16年にして、ありのままの自分をさらけ出せるようになりました。そのきっかけになったのがYouTube。自分のチャンネルを開設したことは、アイドル人生の中でもっとも大きなターニングポイントになったかもしれません。AKB48としてテレビに出るときは歌うことが多く、一人で何十分もトークする様子を披露する機会はこれまで一度たりともなくて。そうなると、印象に残るのは見た目だけですよね。だから、ずっと『ぶりっこ』とか『おとなしそう』とか言われてきたけれど、自分の中ではすごいギャップが……。『わたし、そんなキャラじゃないのに！』というもどかしい部分をYouTubeがすべて解決してくれました。YouTubeでは、自分の好きなことをやり、周囲に気を使うことなく思ったことを口にできるから、素の柏木由紀をやっとみなさんに知ってもらえてうれしい。世の中のイメージとの温度差がなくなったのもすごく生きやすくなりました（笑）」

──「ありのままの姿」といえば、お風呂嫌いを告白して大きな話題に。その反響は？

柏木「風呂嫌いへの反響は想像以上でした！ 世の中にこんなに風呂嫌い仲間がいたのか、というくらい『わたしもお風呂嫌い！』『仲間！』というようなコメントでインスタのDMが埋まりましたから（笑）。

わたしのお風呂嫌いは隠していたというより、YouTubeをやっていなかったから、そんなことを発表する場がなかっただけ……。結果として風呂嫌いネタを“温存”することになり、満を持してアイドル15年目の発表となりました（笑）。ですが、人生なにがあるかわからないもので、女性のファンが増えたり、握手会に来てくれる人もいたりしたので、風呂嫌いを公表してよかった〜（笑）！

こういったちょっとダメな部分を見せてもいいやと思えるのも30代になり、キャリアを積んだからできることなのかもしれないですね。ファンとの信頼関係があって、わたしをよく知ってくれている人はそんな“汚キャラ”をバラしたところで離れたりしないっていう自信みたいなものがあるから堂々と言えた部分はあるかも！」

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イヤなことを言うファンは野放しにはしません。愛のムチでバシッとリターン！

──ファンにイヤだったことをきちんと伝えるという動画も斬新でした。それも「ありのままの姿」を見せられるようになった部分なのでしょうか？

柏木「『ありのまま』でもあり、わたしが今、目指している理想のアイドル像でもありますね。これも30代になり、変わったと思う部分なのですが、イヤなこととか、それっておかしい！と思ったことを口にするようになりました。わざわざ『年をとった』とか『老けた』と言ってくるファンがいるので、『そういうこと言わないでください！ ちゃんと傷つきますから』と伝えています。正直、わたしはなにを言われてもいいけれど、このまま放置していたら、後輩たちにもその被害が及ぶじゃないですか。そういうふうに人が巻き込まれることについてはなおさら許せない気持ちになりますね。勝手な正義感ですけど……。

驚くことに、アイドルはどんなことを言ってもニコニコ受け入れて、『そんなことないですよー（笑）！』っていうやさしいリアクションが本心だと思っている人が少なくないのです。悪気がない分、そういう人はこの先も推しの子を無意識で傷つけていってしまうという心配もあります。だからこそ自分のファンであれば、そういう失敗をしてほしくないという気持ちもあってきちんと言葉を返すようにしています。『今の言葉、職場の人にもいいますか？』って真剣な顔で返したりすると気づいてくれる人もいますし、SNSに『全然気づいてなかった。教えてくれてありがとう』というメッセージが届くことがあります。こうやってわたしがイヤだと感じたことを発信することで、人を無意識に傷つけることも、無駄に傷つけられることもない世の中になればいいなと思っています」

──現役メンバーとジェネレーションギャップを感じることはありますか？

柏木「年齢差を感じる瞬間、めっちゃあります！ 曲の歌詞とかダンスの振り付けをおぼえにくくなっているので、メンバーについていくのが大変。10代のときは振り付けなんて即日おぼえられたのに……。みんなの足手まといにならないように予習してちょっとだけおぼえていったりしています（笑）。そんな頼りないわたしをやさしい後輩が助けてくれるので、本当に助かっています。かつての“AKB48”は、“総選挙”の影響もあり、ライバルであるメンバーに弱みを見せにくいところがありました。ですが、今は、グループをよくするための一致団結感がすごい！ わからないことも聞きやすい雰囲気です。31歳だけれど、もっときちんとしなくては、という気負いがないのはとてもラクですね。

メンバーの中には、年齢が半分以下の子もいたりして。年が離れすぎているので相談される内容が高校の進路相談だったりします（笑）。中学生と31歳……親子にもなれるくらいの年の差があるのだから、相手に気を使われてしまうことも。きっかけさえあれば、たくさん話してくれる子なら話しかけますが、私と話すと気を使いすぎてしんどそうな子はそっとしておきますね。一人一人に合わせてなんとなく対応するようにしていて……同じグループのメンバーですけど、年の功だけ感じる力も増している気がします（笑）」

──ダンスがおぼえにくい、体力の衰えも感じる……それでもアイドルを続ける理由は？

柏木「アイドルを続ける理由はたったひとつ、ファンが大切だから。本当にそれだけですね。ファンがいなかったらすぐやめているというくらいファンがあってこその『柏木由紀』なのです。ファンがよろこんでくれることが私のモチベーションの起爆剤になっています。

どうしたらファンがよろこんでくれるか、考えることはそればかり。日常の中でも、仕事や学校でイヤなことがあり、重い気持ちをなんとかしたいときにテレビやYouTubeで柏木由紀を見たら元気をもらえる、そんな存在になれたらと思っています……ということでまだまだ現役を続けます！」

PROFILE

柏木由紀（かしわぎゆき）
女性アイドルグループAKB48の第3期生メンバー。グループ在籍日数が歴代一位で、今もなお現役で活躍している。アイドルグループやAKB48の公演をプロデュースするプロデューサーとしても活躍。YouTubeの個人チャンネルではありのままをさらけ出したメイク動画や鋭い切り口のコメント返し動画が大人気。ゆきりんの愛称で親しまれる。2023年4月には自身初のプロデュースコスメブランド『upink』がデビュー。

Instagram：＠yukikashiwagi_official
Twitter：@Yukiriiiin__K
YouTube：＠ゆきりんワールド

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撮影／岡本俊 モデル／柏木由紀（AKB48） ヘアメイク／福岡玲衣（TRON） スタイリング／加藤理奈 取材・文／金子優子 構成／剱持百香