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青春の"その後"には、何があって何がないのか。又吉直樹、10年ぶりのエッセイ集

  • 2023.3.31
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2023年3月24日、芸人・又吉直樹さんの10年ぶりとなるエッセイ集『月と散文』(KADOKAWA)が発売される。

『月と散文』は、エッセイ集としては『東京百景』(2013)以来、著書(文庫・共著を除く)としても小説『人間』(2019)以来となる作品。又吉さんが青春や青春の残滓が濃く残る作品の執筆に一旦区切りをつけて、新たな一歩を踏み出した最初の作品でもある。

そんな『月と散文』に収録される66話のほとんどは、又吉直樹が40歳を迎えた2020年以降に書かれたもの。そこにはコロナ禍での日々の暮らしが描かれると同時に、それまでと一変した世界の中で向き合った孤独や上京以前の出来事、遠く離れた家族との記憶が述べられている。過去から現在に連なる、悲しさ、痛み、憤り、ささやかな幸福が、センチメンタルかつナイーブに、時に感情を抑制することない激しさで表現される。

私小説的であり、エッセイ的でもあり、詩的でもありと、作家としても成熟を感じさせる今作は、笑いに彩られながら、あらゆる感情を呼び起こすであろう圧巻の出来栄えだ。

青春の続きを生きている人、いまその只中にいる人、家族を想う人、楽しい気分になりたい人、満たされぬ日々を送っている人、孤独に苦しむ人......、世代や性別を問わず、多くの人々の感情に寄り添う一冊となっている。

カバー、表紙、口絵を手掛けるのは、人気漫画家・松本大洋さん。奇跡とも思えるコラボは、「身に覚えのある温もりと痛みと哀愁みたいなものが強く伝わってきて、僕には『人間そのもの』に見える」と、以前から松本さんの作品を敬愛する又吉さんのオファーによって実現したという。構成や文章と深く響き合う装丁にも注目だ。

「紙の本のカッコよさ」を追求した特装版も数量限定発売!

紙の本を読者としても深く愛し、古書に関する造詣も深い又吉さん。そんな彼が「昔の本のカッコよさ」をビジュアルだけでなく技術的にも蘇らせ、こだわり抜いて作った特装版も同時に発売される。題箋貼り、小口アンカット、活版印刷......。持っているだけで嬉しくなる。それだけでなく、本の歴史を未来に受け継ぐ、そんな意義も持つ書籍となっている。

■又吉直樹さんプロフィール
またよし・なおき/1980年大阪府寝屋川市生まれ。芸人。99年に上京し吉本興業の養成所に入り、2000年デビュー。03年に綾部祐二と「ピース」を結成。現在、執筆活動にくわえ、テレビやラジオ出演、YouTubeチャンネル『渦』での動画配信など多岐にわたって活躍中。またオフィシャルコミュニティ『月と散文』(https://www.tsukitosanbun.com)では書き下ろしの作品を週3回配信している。著書に、小説作品として『火花』『劇場』『人間』が、エッセイ集として『第2図書係補佐』『東京百景』などがある。

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